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- 中国経済の見通し-長期化する不動産不況で政策依存の景気が続く。外需下振れのリスクも
2024年08月26日
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4.経済政策
財政政策に関して、インフラ投資は相対的に高い伸びを維持しているものの、浮き沈みがみられる。24年に入って以降、5月にかけて伸びが低下傾向にあったが、6月から7月にかけて持ち直した(図表-13)。社会融資総量のうち、政府債券の伸び率は、4月を底に改善傾向にあり(図表-14)、主に国債発行による財源の手当てが進んでいる可能性がある。
金融政策に関しては、3月以降動きがなかったが、7月には短期、中期の政策金利をともに引き下げ、LPRが1年、5年とも低下するなど、追加緩和が実施された(図表-15)。需要不足の継続や実質金利の高止まりなどを背景に、社会融資総量伸びは2023年以来低下を続けてきたが、7月には前月から横ばいとなっている(図表-16)。
注目点としては、7月30日に開催された中央政治局会議後の経済政策の動向が挙げられる。同会議では、「マクロコントロールの度合いを強め(中略)今年の経済・社会発展目標を確固として達成する」とし、「+5%前後」の経済成長率の達成を目指す考えを強調した。そのうえで、今後の財政・金融政策について「追加的な政策措置をできるだけ早く準備し、速やかに発表する」とした。また、「消費の振興を重点として国内需要を拡大し、経済政策の重点を民生や消費促進へとより移していく」とし、これまで劣後してきた家計消費の支援に注力する考えを示している。不動産政策に関しては、5月に発表された在庫住宅の買い取り及び保障性住宅への転用と、22年から実施されている未完成住宅の竣工及び引き渡しの支援(「保交房」)の2つが挙げられ、新たな政策は発表されなかった。
金融政策に関しては、3月以降動きがなかったが、7月には短期、中期の政策金利をともに引き下げ、LPRが1年、5年とも低下するなど、追加緩和が実施された(図表-15)。需要不足の継続や実質金利の高止まりなどを背景に、社会融資総量伸びは2023年以来低下を続けてきたが、7月には前月から横ばいとなっている(図表-16)。
注目点としては、7月30日に開催された中央政治局会議後の経済政策の動向が挙げられる。同会議では、「マクロコントロールの度合いを強め(中略)今年の経済・社会発展目標を確固として達成する」とし、「+5%前後」の経済成長率の達成を目指す考えを強調した。そのうえで、今後の財政・金融政策について「追加的な政策措置をできるだけ早く準備し、速やかに発表する」とした。また、「消費の振興を重点として国内需要を拡大し、経済政策の重点を民生や消費促進へとより移していく」とし、これまで劣後してきた家計消費の支援に注力する考えを示している。不動産政策に関しては、5月に発表された在庫住宅の買い取り及び保障性住宅への転用と、22年から実施されている未完成住宅の竣工及び引き渡しの支援(「保交房」)の2つが挙げられ、新たな政策は発表されなかった。
5.中国経済の見通し
1|メインシナリオ
今後について、2024年7月までの実績を踏まえ、24年の実質GDP成長率は前年比+4.7%、25年は同+4.2%と予想する(図表-17)。25年にかけて個人消費の弱含みが続くとみられ、政策の下支えによる成長になると想定している。
今後について、2024年7月までの実績を踏まえ、24年の実質GDP成長率は前年比+4.7%、25年は同+4.2%と予想する(図表-17)。25年にかけて個人消費の弱含みが続くとみられ、政策の下支えによる成長になると想定している。

25年に入ると、不動産市場の低迷に出口がみえてくるが、正常化には至らないだろう。不動産販売面積や不動産開発投資などは幾分改善するものの引き続き前年割れとなり、経済の下押し圧力となることが予想される。また、設備投資や公共投資は下支えに寄与するものの、需要不足の長期化や地方政府債務問題を背景に24年から減速するだろう。
2|リスク要因
主なリスクとしては、国内では(1)不動産市場の悪化や、(2)地方政府財政の悪化、国外では(3)地政学リスクが引き続き挙げられる。(1)・(2)は、足もとで小康状態にあるが、依然予断を許さない状況にある。(3)は、中国指導部が懸念を強めつつある。米国やEU等による既存の対中追加関税だけであれば、経済への影響は限定的だろう。駆け込み輸出が一時的な押し上げとなる可能性もある。11月の米国大統領選挙でトランプ氏が再選し、対中輸入全額に対して追加関税が課されれば、下押し圧力は強まる見込みだ。影響がGDP比で約1%になるとの試算もある1。その場合、経済の下支え強化により、景気への影響はある程度相殺できるとみられるが、その分デレバレッジ等の構造改革が再び後退する恐れがある。もっとも中国にとっては、総合的にみれば、トランプ政権とハリス政権のシナリオそれぞれに利弊があると考えられ、米大統領選後の米中関係を巡る動向には引き続き注視が必要だ。
1 熊谷 聡・早川 和伸・後閑 利隆・磯野 生茂・ケオラ・スックニラン・坪田 建明・久保 裕也(2024)「『もしトラ』のシミュレーション分析 ──米60%関税の世界経済への影響」(アジア経済研究所『アジ研ポリシー・ブリーフ』No.189)
主なリスクとしては、国内では(1)不動産市場の悪化や、(2)地方政府財政の悪化、国外では(3)地政学リスクが引き続き挙げられる。(1)・(2)は、足もとで小康状態にあるが、依然予断を許さない状況にある。(3)は、中国指導部が懸念を強めつつある。米国やEU等による既存の対中追加関税だけであれば、経済への影響は限定的だろう。駆け込み輸出が一時的な押し上げとなる可能性もある。11月の米国大統領選挙でトランプ氏が再選し、対中輸入全額に対して追加関税が課されれば、下押し圧力は強まる見込みだ。影響がGDP比で約1%になるとの試算もある1。その場合、経済の下支え強化により、景気への影響はある程度相殺できるとみられるが、その分デレバレッジ等の構造改革が再び後退する恐れがある。もっとも中国にとっては、総合的にみれば、トランプ政権とハリス政権のシナリオそれぞれに利弊があると考えられ、米大統領選後の米中関係を巡る動向には引き続き注視が必要だ。
1 熊谷 聡・早川 和伸・後閑 利隆・磯野 生茂・ケオラ・スックニラン・坪田 建明・久保 裕也(2024)「『もしトラ』のシミュレーション分析 ──米60%関税の世界経済への影響」(アジア経済研究所『アジ研ポリシー・ブリーフ』No.189)
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年08月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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