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- 中国経済の見通し-長期化する不動産不況で政策依存の景気が続く。外需下振れのリスクも
2024年08月26日
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1.中国経済の概況
中国の2024年4~6月期の実質GDP成長率は、前年同期比+4.7%と、前期(24年1~3月期)の+5.3%から伸びが減速した(図表-1)。季節調整後の前期比も+0.7%と、前期(同+1.5%)から減速している。1~6月累計では前年同期比+5.0%となり、上半期の時点では今年の成長率目標である「+5%前後」に対して、まだ目標の達成圏内にある。
もっとも、成長の中身をみると、政策支援の効果や外需によるところが依然として大きく、7月までの指標を踏まえてもその傾向に概ね変わりはない。政策の恩恵を受けている製造業セクターなどでは堅調が続く一方、その他の指標は弱含みが続いている。例えば、設備投資は高水準での伸びを続けており(図表-2)、投資の下支えに貢献していることがうかがえる。もっとも、足もとではピークアウトの兆しもみられる。他方、消費者の雇用・所得に関するマインドは悪化しており(図表-3)、消費の重石となっている。また、長期化する不動産不況にも目立った変化がみられない。不動産販売面積は依然として前年割れとなっており、22年と23年に続き、前年割れとなる可能性が極めて高い。
物価の動向を見ると(図表-4)、工業生産者出荷価格(PPI)の前年同月比伸び率は7月にかけて22カ月連続でマイナスとなっている。マイナス幅は足元で縮小傾向にあるが、持続性には疑問が残る。消費者物価(CPI)は、7月に前年同月比+0.5%上昇と、前月から伸びは小幅に高まったものの、依然低水準にある。食品・エネルギーを除くと、前年同月比+0.4%と、前月の同+0.6%から低下しており、経済の勢いが弱まっていることがうかがえる。
もっとも、成長の中身をみると、政策支援の効果や外需によるところが依然として大きく、7月までの指標を踏まえてもその傾向に概ね変わりはない。政策の恩恵を受けている製造業セクターなどでは堅調が続く一方、その他の指標は弱含みが続いている。例えば、設備投資は高水準での伸びを続けており(図表-2)、投資の下支えに貢献していることがうかがえる。もっとも、足もとではピークアウトの兆しもみられる。他方、消費者の雇用・所得に関するマインドは悪化しており(図表-3)、消費の重石となっている。また、長期化する不動産不況にも目立った変化がみられない。不動産販売面積は依然として前年割れとなっており、22年と23年に続き、前年割れとなる可能性が極めて高い。
物価の動向を見ると(図表-4)、工業生産者出荷価格(PPI)の前年同月比伸び率は7月にかけて22カ月連続でマイナスとなっている。マイナス幅は足元で縮小傾向にあるが、持続性には疑問が残る。消費者物価(CPI)は、7月に前年同月比+0.5%上昇と、前月から伸びは小幅に高まったものの、依然低水準にある。食品・エネルギーを除くと、前年同月比+0.4%と、前月の同+0.6%から低下しており、経済の勢いが弱まっていることがうかがえる。
2.需要の動向
4~6月期の実質GDP成長率における最終消費(個人消費+政府消費)の寄与度は、+2.2%PTと、前期の+3.9%PTから低下した(図表-5)。小売売上高の伸び率(名目前年同期比、以下同)は、6月から7月にかけて小幅に改善したが、それでも+2%台と低水準にとどまっている(図表-6)。内訳をみても、財消費は改善した一方、23年のゼロコロナ終了後に好調が続いてきた外食サービスは、その反動増が一服し、足もとでは財消費並みの水準となっている。政府消費も低調なままだ。
総資本形成(=総固定資本形成+在庫変動)の寄与度は、+1.9%PTと、前期の+0.6%PTから高まった(図表-5)。固定資産投資の伸び率の推移を見ると(図表-7)、6月から7月にかけて低下した。製造業投資は相対的に高い水準を維持してはいるものの、伸びは前月から低下した。加えて、不動産開発投資の減少幅も小幅に拡大しており、これらが押し下げに寄与した。他方、5月まで低下傾向にあったインフラ投資の伸びは、5月を底に、6月から7月にかけて改善している。
純輸出の寄与度は、+0.6%PTと、前期の+0.8%PTからプラス幅が小幅に縮小した(図表-5)。7月単月では、輸出の伸びが6月から低下している(図表-8)。輸出価格の下落が続いているとみられる。輸出を国・地域別にみると、ASEAN向けの伸びが5月をピークに低下傾向にあるほか、米国・欧州向けも、伸びは高まっているものの勢いが弱まりつつある。
総資本形成(=総固定資本形成+在庫変動)の寄与度は、+1.9%PTと、前期の+0.6%PTから高まった(図表-5)。固定資産投資の伸び率の推移を見ると(図表-7)、6月から7月にかけて低下した。製造業投資は相対的に高い水準を維持してはいるものの、伸びは前月から低下した。加えて、不動産開発投資の減少幅も小幅に拡大しており、これらが押し下げに寄与した。他方、5月まで低下傾向にあったインフラ投資の伸びは、5月を底に、6月から7月にかけて改善している。
純輸出の寄与度は、+0.6%PTと、前期の+0.8%PTからプラス幅が小幅に縮小した(図表-5)。7月単月では、輸出の伸びが6月から低下している(図表-8)。輸出価格の下落が続いているとみられる。輸出を国・地域別にみると、ASEAN向けの伸びが5月をピークに低下傾向にあるほか、米国・欧州向けも、伸びは高まっているものの勢いが弱まりつつある。
3.産業の動向
4~6月期の産業動向を概観すると(図表-9、10)、第1次産業は前年同期比+3.6%と前期(同+3.3%)から加速した。第2次産業は同+5.6%で前期(同+6.0%)から減速した。その内訳をみると、「製造業」が同+6.2%と、前期(同+6.4%)から減速したものの小幅にとどまっている。一方、「建築業」は同+4.3%と、前期(同+5.8%)から大きく減速した。第3次産業は同+4.2%と、前期(同+5.0%)から減速した。その内訳を見ると、「不動産業」が5四半期連続でマイナス成長となっているほか、「卸小売業」・「宿泊飲食業」、「金融業」など、主な業種で軒並み減速している。不動産不況の長期化や個人消費の弱さ、金融緩和に伴う利ざやの縮小など、前期と構図は変わらない。引き続き、「製造業」主導の景気となっていることがうかがえる。
関連する月次指標の推移を見ると(図表-11、12)、鉱工業生産は、4月をピークに、7月にかけて緩やかな減速傾向にあり、前期比でも一進一退の状況が続いている。ハイテク製造業の生産の伸びは依然として高く、産業高度化政策や海外需要の改善によるものとみられる。他方、サービス業生産は、5月から7月にかけて+4%台後半の水準での推移を続けている。
関連する月次指標の推移を見ると(図表-11、12)、鉱工業生産は、4月をピークに、7月にかけて緩やかな減速傾向にあり、前期比でも一進一退の状況が続いている。ハイテク製造業の生産の伸びは依然として高く、産業高度化政策や海外需要の改善によるものとみられる。他方、サービス業生産は、5月から7月にかけて+4%台後半の水準での推移を続けている。
(2024年08月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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