2024年08月09日

東京オフィス市場は賃料の底打ちが明確に。物流市場は空室率高止まり-不動産クォータリー・レビュー2024年第2四半期

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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3.不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
三鬼商事によると、2024年6月の東京都心5区の空室率は5.15%(前月比▲0.33%)、平均募集賃料(月坪)は19,979円(前月比+0.2%)となり5カ月連続で上昇した。他の主要都市の空室率をみると、札幌が3%台、大阪が4%台、名古屋・福岡が5%台で安定して推移する一方、横浜(8.58%)と仙台(6.34%)は新規供給の増加を受けて前期に続き高い水準にある3。また、2024年は大阪と福岡で大型の供給が控えており今後の動向を注視したい(図表-9)。
図表-9 主要都市のオフィス空室率
三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2024年第2四半期の東京都心部Aクラスビル賃料(月坪)は26,791円(前期比+5.6%)と3期連続で上昇し、空室率は5.7%(前期比+0.1%)となった(図表-10)。三幸エステートは、「まとまった面積の空室を抱えて竣工した新築ビルがあった一方、本社移転や新規開設等により空室消化が進んでおり、オフィス需要は拡大傾向が続いている」としている。

また、日経不動産マーケット情報(2024年8月号)によると、東京ビジネス地区のオフィス成約賃料は22エリア中15エリアで賃料の上限または下限が上昇した4。このように、東京オフィス市場では賃料の底打ちが明確になっているものの、来年にオフィスの大量供給を控えるなか需要拡大の持続性が試されることになる。
図表-10 東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
 
3 いずれの都市も賃料は前年比プラスとなっている。2024年6月時点の平均募集賃料は、札幌(前年同月比+5.1%)・仙台(+1.4%)・横浜(+2.2%)・名古屋(+2.0%)・大阪・(+2.1%)・福岡(+1.9%)となっている。
4 上昇幅が最も大きかったエリアは「渋谷駅周辺」で、3か月前と比べて下限が2,000円、上限が3,000円上昇し、成約水準は3.0万円~3.8万円となった。
(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は、全ての住居タイプが前年比でプラスとなった。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2024年第1四半期はシングルタイプが+4.7%、コンパクトタイプが+4.4%、ファミリータイプが+0.6%となった(図表-11)。

総務省によると、2024年1-6月累計の東京23区の転入超過数は+55,136人(2019年同期比+3%)となりコロナ禍前の水準を上回った。都市部への人口流入に伴う需要の高まりを背景に賃料が上昇している。
図表-11 東京23区のマンション賃料
(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、インバウンド消費の好調な伸びを受けて施設売上が増加している。商業動態統計などによると、2024年4-6月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が+12.1%、スーパーが+1.7%、コンビニエンスストアが+0.9%となった。6月単月では、百貨店+13.8%(28カ月連続プラス)、スーパー+3.9%(21カ月連続プラス)、コンビニ+1.1%(7カ月連続プラス)となっている(図表-12)。
図表-12 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存店、前年比)
ホテル市場は、日本人の宿泊需要に頭打ち感がみられるもののインバウンド需要が牽引し宿泊者数はコロナ禍前の水準を上回って推移している。宿泊旅行統計調査によると、2024年4-6月累計の延べ宿泊者数は2019年対比で+6%増加し、このうち日本人が▲2%、外国人が+35%となった(図表-13)。また、STR社によると、6月のホテルRevPARは2019年対比で全国が+27%、東京が+48%、大阪が+12%と上昇が続いている。
図表-13 延べ宿泊者数の推移(2019年同月比、2020年1月~2024年6月)
物流賃貸市場は、首都圏では新規供給の影響を受けて空室率が高止まりしている。シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2024年6月末)は9.7%と前期から横ばいとなった(図表-14)。今後の見通しについては、約3年続いた空室率の上昇傾向は今期で頭打ちとなるものの、首都圏全体の空室面積が64.2万坪と過去最高水準にあるため、空室率低下のペースは緩やかとのことである。一方、近畿圏の空室率は既存物件で空室消化が進んだことから3.7%(前期比▲1.6%)に低下した。

また、一五不動産情報サービスによると、2024年4月の東京圏の募集賃料は4,860円/月坪(前期比+5.2%)となり、3四半期連続で上昇した。
図表-14 大型マルチテナント型物流施設の空室率

(2024年08月09日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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