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2024年06月17日
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※本レポートにおける「オタク」とは、昨今使用されている「広義」としてのオタクを指している。特定コンテンツにおける熱心な消費者層や1980年代に使われていた差別意識を含む識別としての呼称としてのオタクではなく、その言葉の大衆化に伴い、好きなモノ・好きなコンテンツがあることを自称する目的や、アイデンティティとして使われる「オタク」や、熱心に消費するという「消費性」、趣味としての側面に焦点を当てているという点を留意したい。また、「推し」という言葉も同様に、大衆的に使われている「贔屓にしているモノ・コト」という意味を指している。
1――推し活にはお金がかかる!!
オタ活・推し活にはお金がかかる。新作グッズの購入、コンサートやイベントへの参加費や交通費、スパチャを始めとした投げ銭など、「消費すること」が自身を満たすことに繋がるが故に、自身の推しに対する依存性高まるほど「消費すること」そのものに熱心になっていく。
文化放送がZ世代のリスナー669人を対象に行った「推し活の消費金額」調査をみると、毎月の「推し活」消費金額は、5,000円~10,000円未満、10,000円~30,000円未満が同率で1位であった。アンケートに回答したZ世代の半数以上が「推し活」に、月に5,000円~30,000円お金をかけていることになる1(図1)。
他の調査も見てみよう。推し活メディア「Oshimoa」の「推し活女子の消費に関するアンケート調査2」によると18歳以下(高校生以下)は平均8,296円、18歳~24歳(高校生除く)は平均20,894円、25歳~34歳は平均22,759円であったという。中でも18歳~24歳を詳しく見ると、「5,000円以下」が12.3%、「~10,000円」が33.5%、「~30,000円」が35.8%、「~50,000円」が12.3%、「50,000円~」が6.1%と、半数が10,000円以上使っている。
文化放送がZ世代のリスナー669人を対象に行った「推し活の消費金額」調査をみると、毎月の「推し活」消費金額は、5,000円~10,000円未満、10,000円~30,000円未満が同率で1位であった。アンケートに回答したZ世代の半数以上が「推し活」に、月に5,000円~30,000円お金をかけていることになる1(図1)。
他の調査も見てみよう。推し活メディア「Oshimoa」の「推し活女子の消費に関するアンケート調査2」によると18歳以下(高校生以下)は平均8,296円、18歳~24歳(高校生除く)は平均20,894円、25歳~34歳は平均22,759円であったという。中でも18歳~24歳を詳しく見ると、「5,000円以下」が12.3%、「~10,000円」が33.5%、「~30,000円」が35.8%、「~50,000円」が12.3%、「50,000円~」が6.1%と、半数が10,000円以上使っている。
同社が算出している手取り17万円でのモデルケースをみると、推し活費用が含まれる娯楽交際費は25000円相当となっている4(表2)。しかしこれは、自由に使えるお金を推し活に全て振り分けた場合であり、実際は洋服や化粧品などの美容費や、交際費、外食、日々のコンビニでのちょっとした散財など、それだけで自由に使える費用の大半が無くなってしまうのが現実だろう。だとすれば、経済的に余裕があって、無理なく消費している人はわずかであって、推し活の費用を工面することが負担となっている層の方が多いと思われる。
株式会社エイチームフィナジーの「推し活にかけるお金と節約に関する意識調査」5では、推し活による出費の負担感」を聞いているが「非常に負担に感じている」と回答した人が12%、「どちらかというと負担に感じている」と回答した人が28.9%と、約4割が推し活による出費を負担と感じている。また、株式会社ロイヤリティマーケティングの「推し活消費に関する調査」によれば、推し活をすることで、生活費に「大きな影響がある」と12.6%が、「少し影響がある」と38.1%が回答しており、半数以上が生活費への影響を感じているようだ6(図2)。
株式会社エイチームフィナジーの「推し活にかけるお金と節約に関する意識調査」5では、推し活による出費の負担感」を聞いているが「非常に負担に感じている」と回答した人が12%、「どちらかというと負担に感じている」と回答した人が28.9%と、約4割が推し活による出費を負担と感じている。また、株式会社ロイヤリティマーケティングの「推し活消費に関する調査」によれば、推し活をすることで、生活費に「大きな影響がある」と12.6%が、「少し影響がある」と38.1%が回答しており、半数以上が生活費への影響を感じているようだ6(図2)。
とあるラジオで「推し活のために食事を抜きます!」と意気揚々とZ世代のパーソナリティーが話していたが、auじぶん銀行株式会社の「推し活に関する調査」においても、推し活費用の捻出のために6割近くが「食費の節約(57.1%)」と回答し、「推し活以外の趣味にかかる費用の節約(42.9%)」、「交通費の節約(32.0%)」と続くなど、節約した分を推し活に充てている人が多いことがうかがえる。自身の生活において推し活が高いプライオリティとなっているとも言えるだろう。
1 株式会社文化放送「《文化放送 リスナーアンケート結果》若年層に人気のエンタメバラエティ『レコメン!』リスナーに聞いた!「Z世代の推し活と消費行動に関する調査」」2023/06/23 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000185.000007381.html
2 株式会社minor role「推し活にいくら使ってる?推し活女子の世代別の金額内訳と消費行動を調査!(oshimoa)」 2023/07/04 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000122459.html
3 株式会社クレディセゾン「日本人の手取りの平均はいくら?年齢・業種・都道府県別に紹介」2021/03/22 https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/lifestyle/article056.html
4 株式会社クレディセゾン「手取り17万円の生活水準はどれくらい?知っておきたい生活の基礎知識を解説」2021/03/22 https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/lifestyle/article061.html
5 株式会社エイチームフィナジー「「推し活にかけるお金と節約に関する意識調査」を実施!~7割以上が推し活に使うお金が「月5,000円未満」という回答に~」2023/02/17 https://www.navinavi-hoken.com/articles/oshikatsu
6 株式会社ロイヤリティマーケティング「推し活消費に関する調査」2023/12/13 https://biz.loyalty.co.jp/report/102/
1 株式会社文化放送「《文化放送 リスナーアンケート結果》若年層に人気のエンタメバラエティ『レコメン!』リスナーに聞いた!「Z世代の推し活と消費行動に関する調査」」2023/06/23 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000185.000007381.html
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3 株式会社クレディセゾン「日本人の手取りの平均はいくら?年齢・業種・都道府県別に紹介」2021/03/22 https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/lifestyle/article056.html
4 株式会社クレディセゾン「手取り17万円の生活水準はどれくらい?知っておきたい生活の基礎知識を解説」2021/03/22 https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/lifestyle/article061.html
5 株式会社エイチームフィナジー「「推し活にかけるお金と節約に関する意識調査」を実施!~7割以上が推し活に使うお金が「月5,000円未満」という回答に~」2023/02/17 https://www.navinavi-hoken.com/articles/oshikatsu
6 株式会社ロイヤリティマーケティング「推し活消費に関する調査」2023/12/13 https://biz.loyalty.co.jp/report/102/
2――なぜ、無理してまで推し活をするのか
ここまで読んで、「そんなに無理して消費しなきゃいいのに」と思われた読者もいると思うが、働くこと・勉強すること(延いては生活すること)に対するプライオリティやモチベーションが低下したことにより、自分自身の優先度が高くなり、「自分の好きなことをしている時間」と「したくない労働をしている時間」との、二極化が進み、推し活を始めとした自身を満たす消費が、やりたくない作業(仕事)をやるためのモチベーションとなっていると筆者は考える。
楽天インサイト株式会社の「推し活に関する調査」では「推し活」で人生が変わったか、聞いているが「良い方向に変わった」と回答した人は63.7%、「悪い方向に変わった」はわずか2.0%であったという7(図3)。具体的には、「気持ちが前向きになった」と回答した人が57.8%で最も多く、次いで「やるべきことへの活力を持つことができた」(34.4%)、「ストレスを感じることが減った」(31.9%)と推し活がポジティブ経験に繋がっていることが伺える(図4)。他にも株式会社キャリアデザインセンターが運営する「女の転職type」の「推し活について」のアンケートをみると、推し活によって「仕事のモチベーションが上がる」という回答が5割を超えている8。
楽天インサイト株式会社の「推し活に関する調査」では「推し活」で人生が変わったか、聞いているが「良い方向に変わった」と回答した人は63.7%、「悪い方向に変わった」はわずか2.0%であったという7(図3)。具体的には、「気持ちが前向きになった」と回答した人が57.8%で最も多く、次いで「やるべきことへの活力を持つことができた」(34.4%)、「ストレスを感じることが減った」(31.9%)と推し活がポジティブ経験に繋がっていることが伺える(図4)。他にも株式会社キャリアデザインセンターが運営する「女の転職type」の「推し活について」のアンケートをみると、推し活によって「仕事のモチベーションが上がる」という回答が5割を超えている8。
実際、消費者にとって推し活は、生活の潤いや、精神的満足感、やらなくてはならないタスクに対するモチベーションに繋がっているわけだが、言い換えれば自分を満たす、労う対象があるから渋々仕事ができる訳で、ご褒美なしでは生きていけない、という現在志向が強い消費者の傾向として現れているともいえるのかもしれない。冒頭で述べた通り、「消費すること」が自身を満たすことに繋がるが故に自身の推しに対して依存性を見出せば見出すほど「消費すること」そのものに対しても熱心になっていくのである。
さらに、コミュニティの存在が消費に拍車をかけているともいえる。現代社会で推し活をしていく上で、コミュニティ(他のオタクとの交流)に身を置くことは避けられない。いくら他のオタクと距離をとりたくとも情報収集をする上では、SNSを利用する必要があるからである。ライブには定員があり、サイン入りアイテムや握手券などの有形物も需要が供給を上回ることが多く、日用品のようにすべての消費者の手に渡るほど供給がされない。そのため、ファンはその限られたパイをコミュニティの中で他のファンと奪い合うことが普通である9。
さらに、コミュニティの存在が消費に拍車をかけているともいえる。現代社会で推し活をしていく上で、コミュニティ(他のオタクとの交流)に身を置くことは避けられない。いくら他のオタクと距離をとりたくとも情報収集をする上では、SNSを利用する必要があるからである。ライブには定員があり、サイン入りアイテムや握手券などの有形物も需要が供給を上回ることが多く、日用品のようにすべての消費者の手に渡るほど供給がされない。そのため、ファンはその限られたパイをコミュニティの中で他のファンと奪い合うことが普通である9。
彼らの目的は、消費による自己満足の追求であり、自身の購買機会を他人に譲る事や自分が入手できなかったものを持っている他のオタクを称賛することはできない。経済力があるのに売り切れ等で購入できない時、その感情は妬みになるからである。彼らが他のオタクとの交流において、平静を保つことが出来るのは、自身の経済的・時間的制約の中で購買欲求を充足出来る時であり、言い換えれば“買う事が出来る欲しいと思ったもの”を買えてはじめて、他のオタクと親交を深めることができるのである。そのため、オタクにとって他のオタクは情報源であり、時には帰属欲求や共感欲求を満たす同志としての側面を有しているのは確かではあるが、自身の消費機会を守る上でも、また、自身のコンテンツ愛を示す上でも競い合いを避けては通れない存在である。それ故、自身の経験やグッズなどを見せびらかし、他のオタクに優位性を示す「マウンティング」や、コミュニティ内の新参者やにわかファンを排除したいと思ったり、自分と同じ人物を応援(担当)しているオタクとの交流を拒む「同担拒否」などが行われるわけである10。
7 楽天インサイト株式会社「『「推し活」していることを周囲に共有している人は74.2%!「推し活」で人生が「良い方向に変わった」人は6割以上』推し活に関する調査」 2023/11/22 https://insight.rakuten.co.jp/report/20231122/
8 女の転職Type「第75回 推し活してる?推し活について聞いてみました。」2023/10/03
https://woman-type.jp/academia/discover-career/data/vol-75/
9 もちろん、オタクではない一般消費者がそれを消費するコトも当然ある。
10 推し活やオタ活で消費されるコンテンツそのものの性質から見ても、ライブなどのイベントは「その時・その場所」という限定性を擁する水物である。グッズなども数量限定で販売されることが多く、消費しない事で生まれる損を回避するために消費が行われてしまう事も大きな要因であることを留意したい。
7 楽天インサイト株式会社「『「推し活」していることを周囲に共有している人は74.2%!「推し活」で人生が「良い方向に変わった」人は6割以上』推し活に関する調査」 2023/11/22 https://insight.rakuten.co.jp/report/20231122/
8 女の転職Type「第75回 推し活してる?推し活について聞いてみました。」2023/10/03
https://woman-type.jp/academia/discover-career/data/vol-75/
9 もちろん、オタクではない一般消費者がそれを消費するコトも当然ある。
10 推し活やオタ活で消費されるコンテンツそのものの性質から見ても、ライブなどのイベントは「その時・その場所」という限定性を擁する水物である。グッズなども数量限定で販売されることが多く、消費しない事で生まれる損を回避するために消費が行われてしまう事も大きな要因であることを留意したい。
(2024年06月17日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
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