コラム
2024年06月10日

新NISAからの投信買付、底打ちか?~2024年5月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式ファンドがよく売れた

2024年5月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式ファンドに1兆1,500億円の資金流入があり、4月の9,500億円からさらに2,000億円も増え、販売は4月以上に好調であった【図表1】。
 
一般販売されている外国株式ファンドをタイプ別にみると、インデックス型に7,800億円、アクティブ型に3,500億円の資金流入があり、ともに4月の6,600億円、2,900億円から増加した。特にインデックス型の外国株式ファンドは久々の流入増であった。
【図表1】 2024年5月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

NISAからの買付がついに増加に転じた?

そもそも一般販売されているインデックス型の外国株式ファンドは2024年1月に買付(青棒)が倍増し流入(線グラフ)も急増したが、2月以降は買付が減少するとともに流入が細っていた【図表2】。これは、新NISAではつみたて投資枠だけでなく成長投資枠でもインデックス型の外国株式ファンドが中心商品となっており、成長投資枠からの買付が2月以降に減少したためだと推察される。
【図表2】 一般販売されているインデックス型の外国株式ファンドの資金動向
実際に証券会社10社(大手5社・ネット5社)のNISA口座からの買付状況をみると、成長投資枠からの買付は1月に1兆6,700億円、そのうち投信が6,900億円程度あった【図表3】。それが4月は7,500億円、投信に限ると3,000億円と半分以下に減少している。特に2月、3月に買付の減少が顕著であり、既に1月、2月で成長投資枠を使い切った投資家が多いことがうかがえる。

それが5月はインデックス型の外国株式ファンドへの流入が1,200億円も増加しており、新NISAからの買付の減少が一服、もしくは増加に転じたのかもしれない。ただし、インデックス型の外国株式ファンドは2023年12月から解約(【図表2】赤棒)もそれ以前から倍増しており、5月は解約が一巡して結果的に純流入が増加したことも考えられる。いずれにしても、引き続き今後の新NISAの動向と合わせてインデックス型の外国株式ファンドと販売動向も注目したい。
【図表3】 証券会社10社のNISA口座からの買付額

アクティブ型はインド株式ファンドが売れた

また、アクティブ型の外国株式ファンドは2024年に入って資金流入の増加基調となっており、5月も増加額こそインデックス型より少なかったが増加し、2024年最大となった。毎月分配型の2本(赤太字)などが引き続き売れていたが、それに加えてインド株式ファンドも売れた【図表4】。「HSBC インド・インフラ株式オープン」(黄太字)を中心にインド株式ファンドに1,600億円の資金流入があり、4月の900億円から増加し、販売をけん引した。
 
元々、1年前くらいから人気を集めているインド株式ファンドであるが、6月4日のインド総選挙をにらんで買付が膨らんだのかもしれない。ただ、ネット販売が中心と思われるインデックス型のインド株式ファンドへの資金流入は5月が200億円程度と4月からほぼ横ばいであった。そのため、アクティブ型のインド株式ファンドが売れたのは5月に販売会社が推した面も大きそうである。
【図表4】 2024年5月の推計純流入ランキング

外国株式ファンド以外は概ね低調

外国株式ファンド以外だとバランス型ファンドに900億円の資金流入があり4月の600億円から300億円増加したが、増加は「あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2024-04」(【図表4】緑太字)によるところが大きかった。また、外国債券ファンドは一般販売されているものに限ると5月に資金流入に転じた。しかし、新設された「三井住友DS ワールド・ボンド・フォーカス2024-05(限定追加型)」(【図表4】青太字)を除外すると引き続き資金流出していた。
 
その他、国内株式ファンドは一般販売されているものに1,000億円の資金流入があったが、4月の3,800億円と比べると2,800億円も減少した。4月は国内株式の急落に伴ってタイミング投資によりインデックス型中心に膨らんでいたが、5月は国内株式が小幅な値動きになる中、4月のように買いが入らなかった。さらに、外国REITファンド、国内REITファンド、国内債券ファンドにいたっては一般販売されているものに限ると4月から引き続き流出超過だった。特に内外REITファンドは4月以上に売却が膨らんだ様子である。

それもあって5月はファンド全体でみると1兆4,600億円の資金流入があったが、2024年最大だった4月の1兆5,300億円からは700億円減少した。

ハイテク系のテーマ型株式ファンドの一部が好パフォーマンス

5月は半導体関連などハイテク系のテーマ型株式ファンドの一部(赤太字)が高パフォーマンスだった【図表5】。
【図表5】 2024年5月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありませんん。

(2024年06月10日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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