コラム
2024年05月15日

国内株式の逆張り投資は健在~2024年4月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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2024年に入って最大の資金流入

2024年4月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、4月はファンド全体に1兆5,400億円の資金流入があった。3月の1兆3,100億円から2,000億円以上増加し、2月の1兆4,000億円も超え2024年最大となった。
 
4月は国内株式ファンドに3,200億円の資金流入があり、3月の1,100億円から2,100億円増えた。国内株式ファンドへの流入額が3,000億円を超えたのは2023年10月以来半年ぶりである。SMA専用ファンドから600億円ほど資金流出していたが、一般販売されているものに3,800億円の資金流入があり、2月の1,200億円から3倍以上に急増した。
【図表1】 2024年4月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

日経平均株価のきりよい水準を意識

一般販売されている国内株式ファンドの中では、インデックス型に2,600億円、バランス型に1,200億円の資金流入があり、ともに3月の600億円、700億円から増加した。4月はTOPIXの下落率が月間で1%程度であったが、個人投資家に注目されている日経平均株価は月初からの下落幅が一時3,000円を超える場面もあった。下落したタイミングで「日経225ノーロードオープン」(【図表2】黄太字)など日経平均株価に連動するインデックス型ファンドを中心に買付があり、インデックス型が流入額、3月からの増加額ともに大きかった。
【図表2】 2024年4月の推計純流入ランキング
実際に国内株式ファンドの日次の資金流出入からそのことが確認できる【図表3】。日経平均株価が4万円割れした翌営業日の2日、3万9,000円割れした翌営業日の8日、3万8,500円を下回った翌営業日の17日、さらには3万 7,000 円目前まで下落した翌営業日の22日には、インデックス型(黄棒)に300億円を超える資金流入があった。その一方でアクティブ型(緑棒)はインデックス型ほど明確な傾向はなかったが、22日以降に資金流入がやや増えていた。
【図表3】 一般販売されている国内株式ファンドの推計純流出入
さらに4月は【図表1】などで「その他」に分類しているレバレッジ型の国内株式ファンド(青棒)にも「楽天日本株4.3倍ブル」(【図表2】青太字)を中心に700億円の資金流入があった。日次でみるとインデックス型の国内株式ファンドと同様に2日、8日、22日に100億円を超える資金流入があった。

いずれにしても商品によって手口こそ若干異なっていたが、日経平均株価のきりのよい水準を節目として意識し、買付を行っていた様子である。やはり新NISAが始まっても国内株式ファンドの逆張り投資は健在であったといえよう。

国内株式以外の販売は3月よりも弱く?

このように4月は国内株式ファンドが株価下落に伴って買いが膨らんだため、ファンド全体でみても2024年最大の流入となったが、国内株式以外のファンドについては3月からやや鈍化した。
 
外国株式ファンドには9,500億円と相変わらず大規模な資金流入があったが、3月の1兆300億円から減少し、2カ月連続の流入減となった【図表4】。外国株式ファンドへの1カ月の流入額が1兆円を下回ったのは2024年に入って初めてのことであった。
【図表4】 外国株式ファンドの純流出入
一般販売されている外国株式ファンドを詳しくみると、インデックス型(黄棒)に6,600億円の資金流入と3月の7,100億円から減少し、3カ月連続の流入減となった。ただし、4月の減少額は500億円と2月、3月と比べて少額であった。そもそもインデックス型の外国株式ファンドは2024年に新NISAのスタートに伴って、年初にインデックス型の外国株式ファンドへの買付が膨らんでいた。4月も資金流入の減少こそ続いていたが鈍化してきており、制度開始から3カ月以上経過してやや落ち着いてきている印象である。
 
また、アクティブ型の外国株式ファンド(緑棒)にも一般販売されているものに2,900億円の資金流入と3月の3,300億円から減少した。再び【図表2】でアクティブ型について個別にみると、4月は毎月分配型の2本(赤太字)に加えて新設ファンド(緑太字)にも大規模な資金流入があったが、その一方で過去人気だったテーマ型の売りも膨らんだ様子である。
 
外国株式ファンド以外にも【図表1】の「その他」のファンドにも4月にまとまった流入があったが、一般販売されているものへの流入のほとんどは先述したレバレッジ型の国内株式ファンドであった。バランス型ファンドへの流入も3月から減少した。さらに、外国債券ファンド、国内債券ファンド、外国REITファンド、国内REITファンドは一般販売しているものに限ると流出超過であった。

そのため4月はファンド全体への流入額こそ大きかったが、3月まで以上に投信販売が盛り上がっている様子は感じられなかった。今後の投資環境次第ではあるが、5月以降はこの勢いが続かない可能性が高そうである。

トルコ、中国関連ファンドが好パフォーマンス

4月はトルコ(赤太字)、中国(青太字)の関連ファンドや一部の資源関連ファンド(黄太字)が高パフォーマンスだった【図表5】。
【図表5】 2024年4月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。

(2024年05月15日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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