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- 中国経済の見通し-政策頼みの景気回復。不動産リスクは残存、貿易摩擦も新たな火種に
2024年05月29日
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4.経済政策
財政政策に関して、インフラ投資は相対的に高い伸びを維持しているものの、浮き沈みがみられる。23年中は夏場から減速した後、12月から24年3月まで改善したが、同4月には再び減速した(図表-13)。インフラ投資の財源に充てられる土地使用権売却収入や地方債、地方政府融資平台が債券発行等により調達する資金など各種財源の動向が影響している可能性がある(図表-14)。
金融政策に関しては、24年に入ってから2月に預金準備率を引き下げたほか、LPR(5年)も25bpsと過去最大幅で低下するなど、緩和が継続されている。(図表-15)。もっとも、需要不足の継続や実質金利の高止まり、国債・地方債発行の遅れなどを背景に、社会融資総量の伸びが減速している(図表-16)。M2も過去最低の伸び率を記録した。預金獲得を目的に、自主規制金利に対して預金金利を上乗せする行為が規制されるようになった影響や、金融業のGDP計算方法見直しの影響もあるようだ。
注目点としては、4月30日に開催された中央政治局会議後の経済政策の動向が挙げられる。財政・金融政策に関しては、一段の利下げや預金準備率引き下げの可能性が示唆された程度であったが、不動産については「在庫消化・新規供給最適化の政策を統合して検討」する方針が新たに示された。また、地方債務に関しては、債務の圧縮と安定した発展の両立が強調され、デレバレッジ一辺倒となることを避ける考えが強調された。不動産政策については、その後の5月17日に、人民銀行が国有銀行を通じて地方国有企業に融資を行い、在庫住宅の買い取りと公共住宅への転用を進める策や、竣工・引き渡し未済の物件の全数把握を進める方針が発表された。住宅購入規制の緩和や買い替え促進策も広がっている。
金融政策に関しては、24年に入ってから2月に預金準備率を引き下げたほか、LPR(5年)も25bpsと過去最大幅で低下するなど、緩和が継続されている。(図表-15)。もっとも、需要不足の継続や実質金利の高止まり、国債・地方債発行の遅れなどを背景に、社会融資総量の伸びが減速している(図表-16)。M2も過去最低の伸び率を記録した。預金獲得を目的に、自主規制金利に対して預金金利を上乗せする行為が規制されるようになった影響や、金融業のGDP計算方法見直しの影響もあるようだ。
注目点としては、4月30日に開催された中央政治局会議後の経済政策の動向が挙げられる。財政・金融政策に関しては、一段の利下げや預金準備率引き下げの可能性が示唆された程度であったが、不動産については「在庫消化・新規供給最適化の政策を統合して検討」する方針が新たに示された。また、地方債務に関しては、債務の圧縮と安定した発展の両立が強調され、デレバレッジ一辺倒となることを避ける考えが強調された。不動産政策については、その後の5月17日に、人民銀行が国有銀行を通じて地方国有企業に融資を行い、在庫住宅の買い取りと公共住宅への転用を進める策や、竣工・引き渡し未済の物件の全数把握を進める方針が発表された。住宅購入規制の緩和や買い替え促進策も広がっている。
5.中国経済の見通し
1|メインシナリオ
今後については、24年の1~3月期の実績が外需や製造業の投資等が想定に比べて上振れたこと等を踏まえ、24年の経済成長率を前回(+4.6%)から+4.8%へと小幅に上方修正したものの、25年にかけて段階的に減速するとの見通しに変わりはない(図表-17)。
今後については、24年の1~3月期の実績が外需や製造業の投資等が想定に比べて上振れたこと等を踏まえ、24年の経済成長率を前回(+4.6%)から+4.8%へと小幅に上方修正したものの、25年にかけて段階的に減速するとの見通しに変わりはない(図表-17)。

25年に入ると、不動産市場の低迷に出口がみえてくるが、デベロッパーの在庫処理圧力が依然残存していることが予想されるため、不動産開発投資は引き続き抑制されるだろう。また、足もとで堅調な製造業の設備投資や生産活動が調整局面に転じることが予想されるほか、インフラ投資についても地方政府債務問題を背景に盛り返す可能性は低く、減速が続くとみている。
2|リスク要因
主なリスクとしては、従来同様、(1)不動産市場の悪化リスクや、(2)地方政府財政の悪化リスクといった国内要因と、(3)地政学リスクといった海外要因が挙げられる。(1)・(2)については、政策スタンスを踏まえると、従来に比べて不安はやや後退したが、依然予断を許さない状況にある。また、(3)が外需に水を差す恐れもある。米国大統領選挙でのトランプ氏再選による対中制裁関税の実施が直接的な押し下げリスクとしてくすぶるが、バイデン氏再選の場合でも、直近発表されたEVやリチウムイオン電池等に関する対中輸入制裁関税の実施のように、多かれ少なかれ厳しい対中政策が続くだろう。また、欧州とも中国の過剰生産能力を巡り摩擦が強まっており、同様の対中輸入関税が実施される可能性もある。現状想定される経済への影響は小さいが、内外需の不安要素につき、引き続き国内外の動向に注視が必要だ。
主なリスクとしては、従来同様、(1)不動産市場の悪化リスクや、(2)地方政府財政の悪化リスクといった国内要因と、(3)地政学リスクといった海外要因が挙げられる。(1)・(2)については、政策スタンスを踏まえると、従来に比べて不安はやや後退したが、依然予断を許さない状況にある。また、(3)が外需に水を差す恐れもある。米国大統領選挙でのトランプ氏再選による対中制裁関税の実施が直接的な押し下げリスクとしてくすぶるが、バイデン氏再選の場合でも、直近発表されたEVやリチウムイオン電池等に関する対中輸入制裁関税の実施のように、多かれ少なかれ厳しい対中政策が続くだろう。また、欧州とも中国の過剰生産能力を巡り摩擦が強まっており、同様の対中輸入関税が実施される可能性もある。現状想定される経済への影響は小さいが、内外需の不安要素につき、引き続き国内外の動向に注視が必要だ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年05月29日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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