英国雇用関連統計（24年4月）－賃金上昇圧力は根強い

経済研究部主任研究員高山武士

1．結果の概要：失業率は4.3％に

5月14日、英国国家統計局（ＯＮＳ）は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった¹。

【4月】
・失業保険申請件数²は前月（156.99万件）から0.89万件増の157.88万件となった（図表1）。
・申請件数の雇用者数に対する割合は4.1％となり、前月（同4.1％）から横ばいだった。
・給与所得者数³は前月（3033.2万人）から8.5万人減の3024.8万人となった。増減数は前月（▲0.5万人）から減少幅が拡大し、市場予想⁴（+2.0万人）を下回った。

【3月（24年1-3月の3か月平均）】
・失業率は4.3％で前月（4.2％）から上昇、市場予想（4.3％）と一致した（図表1）。
・就業者は3299.7万人で3か月前の3317.4万人から17.7万人減少した。増減数は市場予想（▲22.0万人）を上回ったが、前月（▲15.6万人）からマイナス幅が拡大した。
・週平均賃金は前年比5.7％で前月（5.7％）と同じ、市場予想（5.5％）を上回った（図表2）。

¹ 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ＯＮＳでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。
² 求職者手当（ＪＳＡ：Jobseekerʼs Allowance）、国民保険給付（National Insurance credits）を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット（ＵＣ）を受給している者の推計数の合算。なお、ＵＣはＪＳＡより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ＯＮＳは開発中の公式統計という位置付けで公表している。
³ 歳入関税庁（ＨＲＭＣ）の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85％のデータから推計。
⁴ bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2．結果の詳細：賃金上昇圧力は根強い

まず4月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数が2-4月の平均で89.8万件となり、コロナ禍以降初となる90万件割れだった。前月1-3月期（91.3万件は）は微増したが、22年3-5月平均（130.2万件）をピークした減少傾向は継続している（図表3）。4月単月の求人数は89.3万件となり、こちらも90万件を割れている⁵。

給与所得者データは、4月の給与所得者数（速報値）が前月差で8.5万人減となり、3か月連続で減少した。なお、3月の前月差は速報値では6.7万人減だったが、0.5万人減に改定されている。産業別には卸・小売業、専門サービス業、居住・飲食業での減少が目立った。4月の給与額（中央値）伸び率は前年同月比6.9％となり、3月（6.4％）から加速した。また3月の数値も速報値の5.6％から大幅に上方修正されている。

労働力調査ベースの数値は、24年1-3月期の失業率で4.3％となり、2月の4.2％からやや上昇した（前掲図表1）。失業者が増えたが、非労働力人口が減少しており、就業者も増加した。その結果、労働参加率は若干改善したものの、依然としてコロナ禍後の最低値付近で推移している。

（図表5）賃金上昇率（ボーナス除く）の推移/（図表6）英国の労働争議件数と労働損失日数

労働時間は32.0時間（前年差0.2時間）、フルタイム労働者で36.6時間（同±0.0時間）となった（前掲図表2）。週当たり総労働時間はコロナ禍前比0.1％だった。名目賃金は前年比で5.7％となり、前月（5.7％）から横ばい、ボーナスを除く定期賃金伸び率も前年比6.0％と前月（6.0％）から横ばいで、市場予想（5.9％）を上回った。3か月前比年率で見た賃金上昇の勢いは6.4％まで加速し（図表5）、ボーナスの水準も23年末を底に再び増加基調を辿っている。実質ベースの伸び率は、ボーナス含みで前年比1.7％、ボーナスを除きで同2.0％となり、概ね横ばい圏で推移している。賃金上昇圧力の根強さを感じさせる結果となっている。

処遇改善を求めたストライキは、3月は件数ベースで46件、労働損失日数で2.1万日となった。22年下半期以降で件数・日数ともに最低値を記録した（図表6）。

⁵ 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。

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