2024年05月01日

宿泊旅行統計調査2024年3月~物価高が逆風となり日本人延べ宿泊者数(前年比)は3ヵ月ぶりのマイナス~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.日本人延べ宿泊者数(前年比)は3ヵ月ぶりにマイナスに

観光庁が4月30日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2024年3月の延べ宿泊者数は5,486万人泊(2月:4,785人泊)となった。前年同月比は8.2%(2月:同16.3%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、7.2%(2月:同9.9%)となった。

2024年3月の日本人延べ宿泊者数は4,216万人泊(2月:3,633万人泊)となり、前年同月比は▲2.3%(2月:3.2%)と3ヵ月ぶりのマイナスとなった。2019年同月比は1.3%(2月:同6.0%)とコロナ禍前の水準を6ヵ月連続で上回った。

2024年3月の外国人延べ宿泊者数は1,270万人泊(2月:1,152万人泊)となり、2019年同月比は33.4%(2月:同24.2%)と、前月から伸びを高めた。
延べ宿泊者数の推移/日本人延べ宿泊者数の推移(前年比)
客室稼働率の推移 2024年3月の客室稼働率は全体で59.7%(2月:同57.8%)、2019年同月差▲3.7%(2月:同▲4.1%)と、コロナ禍前の水準を下回っているが、2023年3月(57.3%)を上回っている。

宿泊施設タイプ別客室稼働率は、旅館は36.1%、2019年同月差▲3.7%(2月:同▲3.7%)、リゾートホテルは54.3%、2019年同月差▲6.4%(2月:同▲5.5%)、ビジネスホテルは74.3%、2019年同月差▲2.9%(2月:同▲3.8%)、シティホテルは74.3%、2019年同月差▲6.7%(2月:同▲8.8%)、簡易宿所は27.2%、2019年同月差▲4.1%(2月:同▲4.6%)であった。2019年同月差は全てのタイプの宿泊施設でマイナス圏での推移が続いている。

2.北陸応援割が全体を押し上げる様子は見られない

都道府県別の延べ宿泊者数の実績は速報より1ヵ月遅れて公表される。今回公表された2024年2月の都道府県別延べ宿泊者数をみると、富山県が2019年比8.9%(前年比▲1.3%)、新潟県が同▲7.2%(同▲0.7%)、福井県が同▲26.2%(同13.7%)、石川県が同39.8%(同52.9%)となった。石川県が大幅に増加しているが、これは2次避難者が含まれているためだと考えられる。2次避難者は金沢市以南・県外のホテルや旅館に移送されている。内閣府の発表では、2月上旬に5,248人となり、その後緩やかに減少し、4月2日時点で3,312人となっている。
北陸応援割の概要 なお、3月からは北陸応援割が開始されており、富山県、新潟県、福井県、石川県では、1泊の宿泊旅行代金の50%が最大2万円1まで補助されている。延べ宿泊者数の押し上げが期待されるが、日本人延べ宿泊者数は、3ヵ月ぶりのマイナスと、全体を押し上げている様子は見ることができない。物価高による実質所得の低下やホテル代の高騰などによって日本人の旅行需要は停滞している。先行きも、横ばい圏内で推移する公算が大きい。
 
1 宿泊数や宿泊県数によって上限金額が変わる

3.中国人延べ宿泊者数(2019年比)のマイナス幅はゆるやかに縮小傾向

外国人延べ宿泊者数の推移 外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2024年3月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲31.4%(2月:同▲29.4%)と、外国人延べ宿泊者数全体(同28.3%)と比較すると回復が遅い状況が続いている。日中間の航空便数の回復が遅れていることや中国国内の不動産市場の低迷による景気下押しの影響などから回復が遅れている。

中国人宿泊者数の回復には時間がかかっているが、マイナス幅は緩やかに縮小傾向にある。コロナ禍前に比べて為替レートが円安の水準にあることが追い風となって、外国人延べ宿泊者数は増加を続けるだろう。
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2024年05月01日「経済・金融フラッシュ」)

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