- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 財政・税制 >
- ふるさと納税、使途選択の効果-人気の使途は寄付額アップにつながるのか?
ふるさと納税、使途選択の効果-人気の使途は寄付額アップにつながるのか?

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
5――寄付額に及ぼす使途間の相互作用

2章で「教育・人づくり」は「子ども・子育て」の次に寄付額の多いのに、「教育・人づくり」を選択できる地方公共団体の方が寄付額は少ない傾向がみられたのも、「子ども・子育て」と「教育・人づくり」の類似性が影響していると思われる。「子ども・子育て」を選択できない地方公共団体に限定して、図表2の分析をすると、結果は逆転し、「教育・人づくり」を選択できる地方公共団体の方が寄付額は多くなる。
「子ども・子育て」が選択不可の場合、「教育・人づくり」と「地域・産業振興」の寄付者の選択の効果は1.5倍(31.47%÷20.27%)の差があり、かつ「子ども・子育て」が選択可能な寄付が全体の57.5%に及ぶことを考えると、「教育・人づくり」と「地域・産業振興」に対する支持率の差は、4章の分析結果(22.1 % vs 16.1%)以上であると考えられる。
以上から、寄付受領団体が提示する使途のラインナップに含まれるか否かだけでなく、ラインナップの構成(選択可能な使途のバリエーション)の影響も無視できないことが分かる。
6――まとめと今後の課題
一方、使途が各地方公共団体の寄付受領額に影響を及ぼさなくても、使途別の寄付額の差には寄付者の考えや想いはある程度は反映されている可能性はある。但し、寄付を受領する地方公共団体が提示するラインアップ(選択可能な使途のバリエーションを含む)による影響が大きい点には注意が必要である。使途別の寄付額の比率と寄付者の考えや想いの比率が完全に対応しているとは考えない方がいい。更に、ポータルサイトの設計が使途別寄付額に影響を及ぼしている可能性もある。この可能性は総務省の調査結果では検証できないので、サンプリング調査等を行い影響の有無を確認する価値はあるだろう。
加えて、興味深いのは寄付を受領する地方公共団体が必要とする使途と寄付者の考えや想いとの間にズレが生じている点である。地方公共団体が提示する使途に対しては、地方公共団体自身がその必要性を感じているはずである。このため、多くの地方公共団体で指定できる使途は、多くの地方公共団体が必要とする使途であると考えられる。調査対象全10分野のうち指定可能な地方公共団体数が多い使途は「健康・医療・福祉」、「地域・産業振興」や「環境・衛生」(図表1)であり、寄付者の支持が高い「子ども・子育て」や「教育・人づくり」とは異なる。財務省の資料2によると、ふるさと納税制度導入後の寄付受入額上位団体の歳出については、児童福祉費や商工費の伸びが全国の水準を上回っているが、児童福祉費よりも商工費の伸びの方が全国の水準をより大きく上回っている。このように、地方公共団体が必要とする使途と寄付者の考えや想いとの間にズレが生じている状況のままで、ふるさと納税の規模が拡大し、一部の地方公共団体に集中することの影響については、今後調査してみる価値があると思われる。
2 財政制度分科会(2023年10月4日開催)資料参照
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年04月12日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/30 | ふるさと納税のピットフォール-発生原因と望まれる改良 | 高岡 和佳子 | 基礎研レポート |
2025/04/03 | 税制改正でふるさと納税額はどうなる? | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/26 | ふるさと納税、確定申告のススメ-今や、確定申告の方が便利かもしれない4つの理由 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/18 | ふるさと納税、事務負荷の問題-ワンストップ特例利用増加で浮上する課題 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【ふるさと納税、使途選択の効果-人気の使途は寄付額アップにつながるのか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
ふるさと納税、使途選択の効果-人気の使途は寄付額アップにつながるのか?のレポート Topへ