コラム
2023年06月27日

紙の通知書は今年が最後かも?-ふるさと納税の減税額を確認していますか?

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子

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給与所得者にとって6月は、今後1年間の住民税額等が記された「個人住民税の特別徴収決定通知書(納税義務者用)」を勤務先から受ける月であり、多くの人は紙媒体の通知書を受け取る。ここ数年でデジタル化が進み電子的な方式で給与明細等を受け取る人は、紙媒体の通知を時代遅れに感じるかもしれない。また、各自治体から届いた通知書を各従業員に配布する担当者の労力を考えると、毎月の納付額等の通知を電子的な方法に切り替えたい企業も少なくないと思われる。
 
現時点において、「個人住民税の特別徴収決定通知書(納税義務者用)」は紙媒体に限られる。このため、企業が電子的な方法により毎月の納付額等の通知を行う場合、電子的な情報として入手可能な「個人住民税の特別徴収決定通知書(特別徴収義務者用)」の記載情報で代替するしかない。しかし、「個人住民税の特別徴収決定通知書(特別徴収義務者用)」の記載情報は少なく、ふるさと納税制度を利用している人にとって重要な寄附金税額控除額が含まれない。このため、勤め先が電子的な方法による通知に切り替えると、簡単に想定通り減税されているかを確認できなくなるのだが1、この不便さも今年限りで終わる。
 
令和3年度税制改正の大綱(2020年12月21日閣議決定)において、令和6年度分以後、個人用「個人住民税の特別徴収決定通知書」も電子的な方法で受け取れるようになることが決まっている。このため、来年以降は、だれもが簡単に想定通り減税されているかを確認でいるようになるはずだ。ただし、企業(勤務先)が紙で受け取るか電子的な方法で受け取るかを選択するので、電子媒体での通知が良くてもこれまで通り紙媒体の人もいるだろうし、その逆もある。いずれにせよ、紙媒体の「個人住民税の特別徴収決定通知書(納税義務者用)」を受け取るのは、今年が最後かもしれない。
 
だれもが簡単に想定通り減税されているかを確認できるようになるのは来年からなので、勤め先から電子的な方法で今後1年間の住民税額等の通知を受けた人は、昨年の寄付額に応じた減税が行われているか確認する方法がないと思うかもしれない。しかし、実は話題のマイナカードとスマホ等の利用可能な端末があれば、昨年の寄付額に応じた減税が行われているかが確認できる。
 
マイナカードを持っている人が利用できるマイナポータルから、自身の個人住民税情報が取得できる。但し、残念なことに市町村民税から引かれる寄附金税額控除額は示されているが、都道府県民税から引かれる寄附金税額控除額は示されていないので、各自で計算する必要がある。計算方法は簡単だ。市町村民税から控除される金額と都道府県民税から控除される金額の比率は6:4(政令指定都市の住民に限り8:2)なので、市町村民税から引かれる寄附金税額控除額に5/3(政令指定都市の住民に限り5/4)を乗じることで、住民税からの合計減税額がわかる。様々な問題点が指摘されるが、マイナカード(デジタル化)にはこのような利点もある。
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

経歴
  • 【職歴】
     1999年 日本生命保険相互会社入社
     2006年 ニッセイ基礎研究所へ
     2017年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2023年06月27日「研究員の眼」)

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