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「プラチナ会員」のステータスは維持されるか?-プラチナ価格は金価格の約4割に転落
基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.325]
経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志
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国際的指標であるNYプラチナ先物価格(中心限月・終値)の推移を振り返ると、2008年には1トロイオンス2000ドルを突破し、NY金先物価格( 同)の2倍を超えていたものがその後大きく下落した。2015年以降は1000ドル前後で一進一退となっており、直近3月8日時点でも914.8ドルと低迷を脱していない。
一方、この間にNY金先物価格は大きく上昇したため、NYプラチナ先物は2015年年初以降、継続的に金の価格を下回っている。さらにNYプラチナ先物の金先物に対する比率は徐々に切り下がっており、直近3月8日時点では4割強(0.42倍)にまで落ち込んでいる。
プラチナにとっても、同じ貴金属である金の価格上昇は追い風となるが、プラチナ需要の大半は工業用であるため、世界的な景気減速懸念が価格の重石となってきた。さらに、2015年に大手自動車メーカーによる排ガス不正問題を発端として消費者によるディーゼル車離れが起きたことで、プラチナの主力需要であったディーゼル車の排ガス触媒向けが減少したことも価格の逆風となった。
このように、貴金属としてのプラチナ価格は既に金に遠く及ばない状況になっているわけだが、依然ゴールド会員よりも上位にあるプラチナ会員の社会的ステータスは今後も維持されるのだろうか?
まず、プラチナの価格が今後も低迷して金を下回り続けた場合には、いずれ、「金より上位」というプラチナの社会的ステータスが失われる可能性がある。プラチナ価格が金価格を下回り続けるうちに、その事実が広く社会に浸透し、「金より高級」というプラチナのイメージが失われれば、企業はプラチナ会員をゴールド会員の上位に置きづらくなるだろう。とはいえ、プラチナ会員をゴールド会員の下に変えると混乱が起きるため、プラチナ会員に換えて「ダイヤモンド会員」など、高級感のある別称を付与することになりそうだ。
なお、プラチナ価格が金価格を下回り続けたとしても、「金より上位」という社会的ステータスが根強く残る可能性もある。プラチナの価格が金を下回るのはあくまで地金の話であり、宝飾品の小売段階では未だにプラチナ製品の方が金製品よりも高く値付けされていることが多い。つまり、金属としてのプラチナ価格が今後も金を下回り続けたとしても、一般消費者が普段目にする製品の小売価格で「プラチナ>金」の序列が維持されるのであれば、プラチナの社会的ステータスも維持される可能性がある。
一方、今後、プラチナの価格が金の価格を再び上回れば、「プラチナは金より高級」というイメージが無理なく保たれ、プラチナ会員の社会的ステータスも維持されるだろう。現状の金との価格差は大きく、逆転は容易ではないものの、今後は「水素関連需要」がプラチナ価格の追い風になり得る。プラチナは燃料電池(車)や水素製造装置の電極触媒に使われるため、世界が脱炭素に向かうなかで代替エネルギーとして水素が普及する場合には、プラチナの需要増加と価格上昇が期待される。需要が急増するなら価格の急騰に繋がるかもしれない。ただし、「いつ、どの程度水素が普及し、プラチナ需要に繋がるか」は政治的・技術的な要素も絡み、判然としない。
このように、「プラチナ会員」の社会的ステータスが今後も維持されるか否かの最大のカギはプラチナ価格にあると考えられる。今後、プラチナ価格が大きく上昇して金価格を上回れば、問題なく維持されるだろう。逆に、プラチナ価格が金価格を下回り続ければ、いずれステータスが維持されなくなる可能性が出てくる。そして、プラチナ価格の行方を左右するカギは、価格を大きく押し上げる可能性を秘めた「水素関連需要」ということになる。
(2024年04月05日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1870
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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