2024年01月12日

2024年の原油相場を展望する~注目ポイントの整理と見通し

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 今年の原油相場を見通すうえで、主な注目ポイントとしては、「世界経済の動向と米利下げ」、「米国の生産動向」、「OPECプラスの減産」、「中東の地政学リスク」、「米大統領選挙の結果」が挙げられる。
     
  2. 原油価格の中心的な見通しとしては、まず、足元から春にかけては価格低迷が予想される。不動産問題などを抱える中国経済の急回復は見込みづらいうえ、米国経済も既往の利上げなどの影響から一旦減速に向かうとみられ、原油需要の鈍化懸念が価格の下押し圧力になるためだ。一方で、自主減産とはいえ、1月からOPECプラスの減産が拡大されること、中東地政学リスクへの警戒が続くことなどが原油価格の下支えとなる。春までの予想レンジは、WTI先物ベースで60ドル前後~80ドル前後と予想している。
     
  3. 一方、春から年末にかけては、原油価格の緩やかな持ち直しを予想している。米国でドライブシーズンを迎えるほか、FRBが段階的な利下げを開始し、米景気が持ち直すことが見込まれるためだ。利下げに伴うドル安も持ち直しをサポートする。結束に不安を抱えるOPECプラスによる大規模な追加協調減産は想定しづらいが、サウジが率先して減産に取り組むことで、減産は継続されると予想している。ただし、中国経済の回復のもたつきや米国などの増産継続が上値を抑制すると見込んでいる。春から年末にかけての予想レンジは70ドル弱~85ドル強と予想している。
     
  4. 以上が中心的な見通しとなるが、不確実性が高い点は否めない。主な下振れリスクは米国経済の失速とOPECプラスの枠組み崩壊だ。逆に主な上振れリスクとしては、中東の地政学リスクが挙げられる。仮に紛争の拡大によって原油供給が多大な悪影響を受ける事態に陥れば、原油価格が100ドルに到達する可能性さえ排除できない。

 
原油価格(WTIと東京ドバイ)
■目次

1.トピック: 2024年の原油相場を展望する
  ・2023年の振り返り・・・方向感を欠く展開に
  ・2024年の注目ポイント・・・多くの材料がひしめく
  ・中心的なシナリオとリスク評価
2.日銀金融政策(12月)
  ・(日銀)維持
  ・今後の予想
3.金融市場(12月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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