2023年01月06日

2023年の原油相場展望~波乱の火種になる可能性も

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 今年の原油価格は、「年初に低迷した後、年半ば以降に緩やかに持ち直す」と予想する。
     
  2. まず、年初から春までは、世界経済の減速に伴う原油需要の低迷が価格の抑制要因となり、価格の低迷が見込まれる。ただし、制裁を受けるロシアの生産減少、米国のSPR補充(観測)、OPECプラスによる追加減産(観測)が下支え要因となり、急落は回避されると見ている。レンジとしてはWTIベースで60~85ドル程度と予想している。
     
  3. その後、年半ばから年末にかけては、中国における経済活動の回復と米利下げ観測が原油価格の押し上げ要因となり、価格の持ち直しが予想される。5月末から米国がドライブシーズンに入るという季節的な要因も追い風となる。レンジとしてはWTIベースで70~95ドル程度、年末時点の水準は80ドル台半ば~後半と予想している。
     
  4. 以上、年間を通じて見れば、原油価格が「緩やかに持ち直す」シナリオが筆者の中心的な見通しだが、対ロシア制裁の影響や中国の感染動向などの不透明感は強く、価格が見通しから乖離するリスクも高めと言わざるを得ない。その際、価格の下振れに対してはOPECプラスが減産で下支えに行く可能性が高いことを踏まえると、特に上振れリスクに注意が必要になる。
     
  5. 仮に原油価格が急騰する場合には、波乱の火種となる可能性がある。米国の物価上昇率が押し上げられ、FRBが大幅な利上げを続けざるを得なくなるためだ。この場合には、米国経済への逆風が強まり、米株価は下落、ドル高が進行する可能性が高い。また、日本経済にとっても米経済の急減速に加えて、原油高と円安(ドル高)の進行が物価の押し上げ圧力を増幅することで逆風が強まりかねない。円安と物価の抑制のために、日銀にさらなる金利引き上げに踏み切る引き金になるかもしれない。

 
原油価格(WTIと東京ドバイ)
■目次

1. トピック:2023年の原油相場展望
  ・2023年の展望・・・年初は低迷、年半ば以降持ち直しへ
  ・上振れリスクに注意、市場の波乱の火種となる可能性も
2. 日銀金融政策(12月)
  ・(日銀)長期金利許容上限の引き上げを決定
  ・受け止めと評価
  ・今後の予想
3. 金融市場(12月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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