2022年06月03日

ロシア制裁強化、OPECプラス増産拡大、原油価格はどうなる?~今後の注目ポイントと見通し

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 5月終盤以降、EUによるロシア原油禁輸の合意、OPECプラスによる増産幅拡大など原油市場を巡る大きな動きが相次いでいる。原油相場を巡る今後の主な注目ポイントとしては、(1)ロシア産原油禁輸のインパクト、(2)中国・インド等による肩代わり輸入、(3)米国の増産、(4)世界の原油需要の動向、(5)OPECプラスによる増産が挙げられる。
     
  2. 先行きを考えると、(1)経済活動の正常化によって世界の原油需要が増加する一方で、(2)制裁の影響でロシアの西側向け供給は減少、(3)中国やインドは各種のリスクを考慮して減少分の全量の肩代わりはせず、(4)米国やOPECプラスの増産も限定的に留まると見ている。世界の原油需給はタイトな状況が続き、原油価格の高止まりに繋がるだろう。原油価格の具体的な見通し(WTIベース)としては、年末にかけて1バレル100ドル強~130ドル弱のレンジを予想している。当面は上海の都市封鎖解除やロシアの生産減、米ドライブシーズン入りなどを受けて、強含む可能性が高い。一方、120ドル台後半では、批判の高まりに配慮してOPECプラスが多少増産姿勢を強めたり、輸入国が協調で備蓄を放出したりする事態が想定されるため、上昇が抑えられると見ている。ただし、極めて高度な政治的判断に絡む材料が多いだけに、不確実性が高めであることは否定できない。
     
  3. 原油価格が高止まりした場合の国内家計への影響はかつてよりも限定的になる。政府が燃料油に対して補助金を出して価格を抑制しているためだ。ただし、原油は化学製品の原材料としても使用されるため、原油高が製品の価格に転嫁され、インフレ圧力になる。また、発電の主力燃料であり、ガスの主原料であるLNGの価格は数カ月前の原油価格に連動するケースが多いため、特に上限がないタイプの契約を結んでいる家計では、電力・ガス料金の上昇・高止まり要因になる。

 
原油価格(WTIと東京ドバイ)
■目次

1. トピック: ロシア制裁強化、OPEC+増産拡大、原油価格はどうなる?
  ・今後の注目ポイント
  ・原油相場の中心的な見通し・・・高止まり
  ・日本国内への影響・・・影響は免れず
2. 日銀金融政策(5月)
  ・(日銀)維持(開催なし)
  ・今後の予想
3. 金融市場(5月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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