2021年11月05日

OPECプラスが追加増産を拒否、原油価格はまだ上がるのか?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. OPECプラスは昨日の会合で12月の生産量について協議し、従来方針通り、日量40万バレルの減産縮小(増産)を決定した。米国をはじめとする多くの輸入国が追加増産を要請していたにもかかわらず、これを拒否した形だ。
     
  2. 世界的な経済活動の再開や天然ガス高騰を受けて原油需要が増加し、需給の逼迫感によって原油価格が高騰しているにもかかわらず、増産余力のあるOPECプラスが追加増産に慎重な理由は、コロナの感染再拡大などによる需給緩和に対する警戒感が根強いことが挙げられる。また、従来の計画を維持することで減産参加国間の不協和音発生を回避したいという思惑もあるとみられる。
     
  3. 原油価格の見通し(WTI先物ベース)については、今後も当面は70ドル台半ばから80ドル台半ばでの高止まりが予想される。世界的に経済活動の再開が原油需要の増加に寄与する一方、OPECプラスが追加増産を見送ったことで、需給がタイトな状況が続くとみられるためだ。その後、春先には70ドル台前半へ一旦調整すると見込んでいる。この頃になると、暖房需要が剥落するうえ、OPECプラスが緩やかな減産縮小を続けることで需給が緩和する可能性が高いためだ。
     
  4. ただし、原油市場を取り巻く環境は複雑さを増していることから、不透明感は強い。今後、北半球の冬の気温が例年よりも下がれば、暖房需要増加によって需給がさらに逼迫し、価格が予想以上に上昇する恐れがある。また「12月に市場環境評価を行う」としているOPECプラスが、評価のうえ減産縮小ペースを遅らせることを決め、価格が上昇するというシナリオも排除はできない。逆に原油価格高騰の影響を危惧した米国や中国の政府が戦略備蓄の大規模な放出を行えば、価格が一時的に下振れる可能性が高い。
原油価格(WTIと東京ドバイ)
■目次

1. トピック: OPECプラスが追加増産を拒否、原油はまだ上がるか?
  ・需給逼迫を受けて原油価格は7年ぶり高値圏に
  ・今後も高止まりが予想される
2. 日銀金融政策(10月):円安への懸念払拭に苦慮
  ・(日銀)現状維持
  ・今後の予想
3. 金融市場(10月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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