2021年10月22日

急速に進む円安、今後も円安の流れが続くのか?~マーケット・カルテ11月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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金利・為替 3ヶ月後の見通し 今月のドル円は急速な円安ドル高が進行し、足元では1ドル114円台前半と月初から約3円円安の水準にある。米国の債務上限問題が先送りされたほか、原油や天然ガス等のエネルギー価格上昇を受けて米国のインフレ懸念が高まり、利上げ前倒し観測に伴う米金利上昇がドル買いを促したためだ。また、エネルギー高は日本の貿易赤字拡大観測を通じて円売り材料にもなっている。

今後も当面エネルギーの需給逼迫は続くと見込まれ、エネルギー高が続く可能性が高い。この追い風を受ける米金利には上昇余地があり、ドル円は一旦115円台に乗せることも十分想定される。

ただし、持続性には欠けるだろう。エネルギー高や米金利上昇は行き過ぎると世界経済の先行き懸念を高め、リスク回避的な円買い需要を誘発するためだ。また、既に投機筋による円売りが大きく進んでいることから、円の安値では利益確定に伴う円の買い戻しも予想される。3か月後の水準は現状並みの114円前後と見込んでいる。なお、11月のFOMCでFRBはテーパリングを決定すると見るが、既に市場のメインシナリオであるため、影響は限定的に留まりそうだ。

今月は対ユーロでも急速な円安が進行している。足元のユーロ円は1ユーロ132円台後半と月初から4円近く円安に振れている。世界的なエネルギー価格上昇に伴うインフレ懸念の中、利上げから最も遠い日本の円が売られたほか、世界的な株高の中でリスク選好の円売りユーロ買いが進んだ。今後もエネルギー高やECBによる量的緩和縮小観測がユーロ高圧力となると見込まれるが、ドル円同様、リスク回避等による円買いも予想されるため、3ヵ月後の水準は現状並みの133円前後と見込んでいる。

今月の長期金利は米金利の上昇や国債増発観測を受けて上昇し、足元では0.1%に肉薄している。今後も米金利の上昇や総選挙後の補正予算編成を巡る国債増発観測が金利上昇圧力になるものの、0.1%を上回る水準では国内投資家の債券需要が見込まれる。また、リスク回避的な債券需要も予想されることから、3か月後の水準は現状並みの0.1%前後と見込んでいる。
 
(執筆時点:2021/10/22)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2021年10月22日「基礎研マンスリー」)

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