2021年09月21日

米テーパリング決定後のドル円の焦点は?~マーケット・カルテ10月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 今月のドル円は、110円前後での一進一退の時間帯が続いた。米国経済の減速、物価の鈍化を示唆する経済指標も見られたものの、「FRBによる年内テーパリング(量的緩和縮小)開始は変わらず」との見方が根強く、ドルの支えとなった。一方、直近では中国不動産大手の経営不安からリスクオフの円買いが入り、足元では109円台半ばにある。

デルタ株の拡大や中国関連など警戒を要するリスクは燻るものの、FRBは雇用の回復を確認したうえで、11月にテーパリングを決定し、12月に開始する可能性が濃厚と見ている。市場でも織り込みが進んでいるとはいえ、現状の極めて低い米長期金利は正当化できなくなり、米金利上昇を通じて円安ドル高が進むだろう。3か月後の水準は112円弱と予想している。なお、自民党総裁選や衆院選がドル円に与える影響は限定的と見ている。誰が首相になろうと、日銀の金融政策は出口戦略着手が容易でない一方で、追加緩和余地もほぼ枯渇しているためだ。

ちなみに、FRBによるテーパリング決定に際しては、一定のペースで粛々と進める方針が示されるとみられるため、その後の市場の目線は自ずとテーパリング終了後の利上げに向かうだろう。利上げの可能性・開始時期・ペースを巡る思惑がドル円の原動力になる。

ユーロ円は、今月上旬に130円付近での推移を続けた後、中国不動産大手の経営不安からリスク回避的な円買いユーロ売りが進み、足元では128円台半ばに下落している。今後も独総選挙後の連立協議難航が予想され、ユーロの重荷になりそうだ。しかし、ユーロ圏の景気回復は続くうえ、年末にかけてECBによる債券購入の減額観測がユーロの追い風になると見込まれる。3か月後の水準は131円弱と予想している。

今月の長期金利は米長期金利の小幅な上昇や自民党総裁選を発端とする国債増発観測・株高を受けて若干上昇し、足元では0.0%台半ばにある。今後もテーパリング決定に伴う米長期金利の持ち直しや国内での国債増発観測が金利上昇圧力になっていくだろう。3か月後の水準は0.0%台後半と見込んでいる。
 
(執筆時点:2021/9/21)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2021年09月21日「基礎研マンスリー」)

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