2023年07月07日

減産連発でも上がらない原油価格~今後の方向性は?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 年初以降、OPECプラス加盟国が幾度も追加減産を表明しているにもかかわらず、原油価格は昨年末の水準を下回り、伸び悩みが続いている。その背景には、(1)中国経済の先行き懸念(需要面)、(2)利上げに伴う欧米経済の減速懸念(需要面)、(3)ロシアの生産量高止まり(供給面)、OPECプラスの足並みの乱れ(供給面)などがあると考えられる。
     
  2. 国際的に有力なエネルギー調査機関は、世界的な原油需給がタイト化に向かい、今年後半には供給不足に陥るとの見方を依然として維持しているが、投機筋は悲観的な見方に大きく傾いている。投機筋の買い越しは直近で2012年7月以来の低水準に留まっている。今後、欧米中などの需要が減少する一方で、主要産油国の生産調整が追い付かず、原油の国際需給が緩和する可能性が織り込まれているものと推測される。
     
  3. 今後の原油価格の見通しを考えると、大きなカギとなるのは世界の需要を左右する中国ならびに欧米の景気動向と考えられる。筆者の中心的な見通しとしては、中国経済は様々な課題を抱えつつも回復に向かうと見込んでいる。今後「5%」とする成長率目標の達成が危ぶまれる状況になれば、経済対策による景気のテコ入れも期待される。また、欧米については、遠からず利上げが打ち止めとなることで大幅な景気後退は避けられると見ている。OPECプラスによる大規模な追加減産は想定していないが、価格上昇に向けた抑制的な生産姿勢が続くだろう。この結果、年後半には次第に原油需給のタイト化が確認されるようになる可能性が高い。投機筋は足元で悲観に振れすぎていると見ているため、その修正を余儀なくされることも原油価格の持ち直しに働くと想定している。具体的な水準(WTIベース)としては、夏の間に1バレル70-75ドルを中心に推移した後、秋から上昇基調となり、年末には80ドルをやや上回る水準で着地すると見込んでいる。

 
原油価格(WTIと東京ドバイ)
■目次

1. トピック: 減産連発でも上がらない原油価格
  ・揺らぐ需給のタイト化シナリオ
  ・投機筋は悲観に大きく傾く
  ・今後の焦点と原油価格の見通し
2. 日銀金融政策(6月)
  ・(日銀)現状維持
  ・今後の予想
3. 金融市場(6月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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