2023年06月21日

長引く円安、為替介入の再開はあるか?~マーケット・カルテ7月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 今月月初に1ドル139円台半ばでスタートしたドル円は、もみ合いを挟んだ後、再び円安に傾いている。一時は7カ月ぶり高値となる142円台に乗せ、足元も141円台後半で高止まりしている。14日にかけて行われたFOMCにおいて、FRB内で年内2回の追加利上げが想定されていることが明らかになった一方、直後の日銀決定会合では金融緩和が維持されるとともに政策修正に慎重な姿勢が示され、日米金融政策の差が再び鮮明化したことが円安を促した。また、この間、日本株高に伴うリスク選好的な円売りも見受けられた。

FRBのインフレに対する警戒感は強く、今後も追加利上げが見込まれる。夏場の間は利上げ長期化観測が燻り、円安に振れやすい時間帯が続きそうだ。一方、その際には、政府・日銀による為替介入への警戒感がドル円の上値を一定程度抑制するだろう。資源高の一服や賃上げ進展などもあり、円安に対する政府の現状の危機感は昨年ほどではないとみられるが、今後も急速な円安が進めば輸入物価押し上げに繋がりかねず、看過できなくなるはずだ。145円が射程に入れば、口先介入の頻度が増えてトーンも強まると見込まれる。メインシナリオではないものの、仮に150円を目指す展開になれば、実弾介入の再開も有り得る。その後、夏の終わり頃にはインフレ鈍化に伴って米利上げの打ち止め感が市場に浸透してくることでドル高圧力が後退すると見ている。3ヵ月後には140円をやや下回ると予想している。

1ユーロ149円台でスタートした今月のユーロ円は、足元で154円台後半と大幅に上昇している。ECBが利上げ継続姿勢を崩さず、緩和を続ける日銀との格差がユーロ高を促した。ECBは今後も追加利上げに動くと予想され、当面はユーロが買われやすいだろう。ただし、ドル円同様、夏の終わり頃にはECBの利上げ打ち止め観測によってユーロ円は反転すると見ている。3ヵ月後の水準は150円強と見込んでいる。

0.4%台前半でスタートした長期金利は足元で0.3%台後半にある。日銀の緩和修正観測がやや後退したとみられる。イールドカーブの歪みがここ数カ月解消しているほか、日銀が物価・賃金の動向を見極める姿勢を強調していることから、YCCの修正は10月以降に後ろ倒しになりそうだ。従って、3か月後の水準は0.4%前後に留まると見ている。

 
(執筆時点:2023/6/21)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2023年06月21日「基礎研マンスリー」)

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