2024年02月02日

金価格はまだ上がる?~内外金相場のテーマと見通し

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 昨年終盤に過去最高値を更新した内外金(Gold)価格は、今年に入ってからも堅調に推移しており、直近1日時点でNY金先物が1トロイオンス2071.1ドル、国内金先物が1グラム9655円と、それぞれ過去最高値に程近い水準にある。
     
  2. 今後年末にかけての金相場の行方を考えると、NY金には多くの追い風が期待される。具体的には、(1)主要国でのインフレ懸念の残存、(2)米利下げを背景とした「金利が付かない金」、「基軸通貨ドルの代替としての金」の魅力向上、(3)地政学リスク・政治リスク・景気下振れリスクを背景とした「安全資産としての金」の存在感増大、(4)中央銀行による積極的な金購入継続が挙げられる。これら多くの追い風を受けて今年のNY金先物は上昇し、過去最高値を明確に更新する可能性が高いと見込んでいる。年末時点のNY金先物は2200ドル台と予想している。
     
  3. 国内金価格にとっても、国際的な中心指標であるNY金の上昇は上昇要因となるが、為替の動向がもう一つのカギとなる。国内の金先物価格は、「NY金先物価格(ドル建て・グラム当たり)×ドル円レート(円/ドル)」に近似して動くため、円高が進めば価格が抑制される。今後、FRBが利下げに向かうことに加え、日銀が春に金融政策の正常化に踏み切ると見込まれることは、円高ドル安に働くだろう。ただし、FRBの利下げ・日銀の正常化はともに緩やかなペースで行われ、急激な円高ドル安は避けられると見ている。NISAの拡充に伴って、日本の家計による海外投資増加に伴う円売りフローの拡大が生じていることも円高進行の抑制に寄与するだろう。現時点では、NY金の上昇を打ち消すほど円高ドル安は進まないと見ており、今年年末時点の国内金価格は、現状よりやや高い1グラム10000円前後と予想している。

 
金の内外先物価格
■目次

1.トピック:金価格はまだ上がる?
  ・2023年の内外金価格は過去最高値を更新
  ・NY金には多くの追い風が期待される
  ・国内金は円高進行の度合い次第
2.日銀金融政策(1月)
  ・(日銀)維持
  ・今後の予想
3.金融市場(1月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

(2024年02月02日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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