2023年12月07日

日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント上昇の11と予想、設備投資計画に注目

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 12月短観では、製造業・非製造業ともに景況感の足踏み感が示されそうだ。大企業製造業では引き続き供給制約緩和に伴う自動車の生産回復が追い風となる一方、中国経済の回復の遅れなどが重石となり、景況感が小幅な改善に留まると予想。また、非製造業では、経済活動正常化に伴うサービス需要やインバウンド需要の回復持続が下支え要因となるものの、物価高による消費抑制や人手不足感が逆風となり、若干悪化すると見込んでいる。
     
  2. 先行きの景況感は総じて悪化が示されると予想。製造業では、利上げに伴う米国経済の減速、中国経済の回復のさらなる遅れなどへの警戒感が優勢となる可能性が高い。また、非製造業では、物価上昇に伴う国内消費の腰折れや人手不足の深刻化、原材料価格の再上昇などへの警戒感が台頭し、先行きに対する慎重な見方が示されると見ている。
     
  3. 23年度の設備投資計画(全規模)はやや下方修正されると予想。例年12月調査では、中小企業において年度計画が固まることで投資額が上乗せされる傾向が強い。収益の回復や、脱炭素・DX・省力化などに伴う投資需要もプラスに寄与するだろう。ただし、生産活動の停滞や建設領域における人手不足が重荷となり、今回は下方修正されると見ている。ちなみに、下方修正されたとしても伸び率は高く、引き続き堅調な投資計画と言える。
     
  4. 今回の短観において、特に注目されるのが設備投資計画だ。前回調査時点では例年を上回る高い伸びが示されていたが、これまでのところ、設備投資の実勢は力強さを欠いていると見られる。設備投資は消費に次ぐ経済の柱であるだけに、同計画が大きく下方修正されれば、今後の日本経済の見通しにとって無視できない影響を与える可能性がある。また、「販売価格判断DI」や「企業の物価見通し」についても、今後の賃上げや物価上昇の持続性を考えるうえでその動向が注目される。

 
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

12月短観予測:景況感は足踏み、設備投資計画はやや鈍化も堅調を維持
  ・大企業製造業の景況感は小幅に改善か
  ・設備投資計画は堅調を維持
  ・注目ポイント:設備投資計画と物価関連指標
  ・金融政策正常化を後押しする材料になるか
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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