2023年09月01日

国内金価格が史上最高を更新~歴史的高騰の理由と見通し

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 国内金先物価格は上昇基調を続け、歴史的な高騰を見せている。高騰の理由は、(1)世界経済の先行き不安、インフレ懸念、堅調なユーロ相場、中央銀行の持続的な金買いなどを背景として、国際的な中心指標であるNY金先物価格が米利上げ局面にもかかわらず高止まりする中で、(2)FRBの利上げ継続と日銀の金融緩和継続を主因として大幅な円安が進行し、円の購買力が低下、円建てである国内金価格が押し上げられたためだ。
     
  2. 内外金相場の先行きを考えるうえでベースになるのは米金利の動向であり、そのカギを握るのがFRBの金融政策だ。米インフレの鈍化に伴って、FRBは11月に利上げを打ち止めにする可能性が高いとみている。その後は、市場の目線が利下げの開始へと移り、米長期金利は低下しやすくなる。米長期金利の低下がNY金先物の追い風になるだろう。また、世界経済の下振れ懸念を背景とする「安全資産としての金需要」や国家間の対立を背景とする「準備資産としての金需要」は続くとみられることもあり、NY金先物は秋以降、来年にかけて上昇基調になり、過去最高値を更新すると予想している。
     
  3. 一方、国内の金先物価格にとっては、米金利低下に伴うドル安(円高)圧力が逆風になりそうだ。その際には、「NY金先物価格の上昇(国内金の上昇要因)」と「ドル円レートの下落(国内金の下落要因)」の力比べの様相となり、その帰趨が国内金先物の方向性を決めることになる。ただし、FRBの利下げ開始には時間がかかりそうなうえ、日銀の金融政策正常化までにはまだ距離があると考えられることから、円高のペースは緩やかなものになりそうだ。従って、(緩やかな)円高が上値を抑えるものの、NY金先物価格の上昇に下支えされる形で国内金先物価格は現状並みで高止まりすると予想している。中心的な見通しとしては、来年半ば時点で1グラム9000円台と予想している。

 
金の内外先物価格
■目次

1. トピック: 国内金価格が史上最高を更新
  1)国内金高騰の要因
  2)国内金先物価格の展望
2. 日銀金融政策(8月)
  ・(日銀)現状維持(開催なし)
  ・今後の予想
3. 金融市場(8月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

(2023年09月01日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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