2023年08月24日

収まらない円安、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ9月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し ドル円は、今月月初に1ドル142円台でスタートした後、円安基調となり、一時146円台を付けた。米国で予想を上回る堅調な経済指標が続き、金融引き締めの長期化観測が強まったほか、米国債増発もあって米長期金利が大きく上昇したことが原動力となった。また、YCCを修正したばかりの日銀がオペによって金利上昇の抑制を図ったことも円安を促した。一方、145円超の領域では政府・日銀による介入への警戒感が高まったうえ、米景況感の悪化がドルの上値を抑えたことで、足元では145円付近で推移している。

先行きに目を転じると、インフレに対する警戒感の根強いFRBは、11月に追加利上げに踏み切る可能性が高い。市場では米引き締め長期化観測が浸透し、ドル高圧力が長引きそうだ。一方、ドル高(円安)圧力のさらなる高まりに対しては、政府・日銀が口先介入やレートチェック等でけん制することで、ドル円の上値は一定程度抑制されるだろう。実弾介入については、最近の円安ペースが昨年の介入時ほどではないほか、昨年より円安のプラス効果(インバウンド)も見込めるため、発動までにはまだ距離があると見ている。ただし、今後比較的早いペースで150円の節目に接近すれば、発動の可能性がかなり高まるだろう。

11月以降は米利上げの打ち止め観測が浸透し、ドル高圧力が一服すると見ている。3か月後の水準は142円前後と予想している。

1ユーロ156円台後半でスタートした今月のユーロ円は、足元で157円台半ばと強含んでいる。日欧の金融政策の格差が引き続きユーロの追い風となった。ECBは9月にも追加利上げに動き、以降も追加利上げ観測は残るだろう。ただし、欧州経済の減速懸念や高水準にある投機筋によるユーロ買いの巻き戻し、円買い介入への警戒感などから、今後はユーロが弱含むと予想。3ヵ月後の水準は156円前後と見込んでいる。

長期金利はYCC修正後の新しい居所を探る時間帯にある。月初0.5%台後半でスタートした後、日銀の臨時オペが重石になったものの、米金利の大幅上昇を受けて上昇し、足元では0.6%台後半にある。今後、日本の物価・賃金上昇率の高止まりが金融政策正常化への思惑を通じて金利上昇圧力として燻る一方、晩秋には米利上げの打ち止め観測が金利抑制要因になる。3ヵ月後の水準は0.7%前後と予想している。
 
(執筆時点:2023/8/24)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2023年08月24日「基礎研マンスリー」)

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