2024年04月01日

米個人所得・消費支出(24年2月)-個人消費(前月比)は前月、市場予想を上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得(前月比)は市場予想を下回る一方、個人消費は市場予想を上回る

3月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は2月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月:+1.0%)と前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.8%(前月:+0.2%)と前月、市場予想の+0.5%を上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.4%(前月改定値:▲0.2%)と▲0.1%から小幅下方修正された前月からプラスに転じたほか、市場予想の+0.1%も上回った(図表5)。貯蓄率1は3.6%(前月:4.1%)と前月から▲0.5%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月改定値:+0.4%)と+0.3%から小幅上方修正された前月、市場予想(+0.4%)を下回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%)と+0.4%から小幅上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.5%(前月:+2.4%)と前月を上回った一方、市場予想(+2.5%)に一致した。コア指数は+2.8%(前月改定値:+2.9%)と+2.8%から小幅上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+2.8%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに前月から低下

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)の名目ベースは後述するように財消費が前月からプラスに転じたほか、サービス消費が堅調を維持した結果、23年1月以来の高い伸びとなった(図表1)。

これに対して、個人所得(前月比)は利息配当収入が大幅な伸びとなった前月の反動から大幅なマイナスに転じたこともあって、前月から伸びが大幅に鈍化したほか、可処分所得の伸びが消費を下回った。この結果、貯蓄率は3.6%と22年12月以来の水準に低下した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数、物価の基調を示すコア指数ともに前月比は高い伸びが続いているものの、前月から低下した。また、前年同月比では依然としてFRBの物価目標である2%を上回る中、コア指数は低下基調が持続しているものの、総合指数は5ヵ月ぶりに前月から上昇した。

3.所得動向:利息配当収入が大幅に減少

2月の個人所得(前月比)は労働需給の逼迫が継続していることを背景に賃金・給与が+0.8%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速したほか、自営業者所得が+0.6%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じた(図表2)。一方、移転所得が+0.6%(前月:+2.8%)と前月から大幅に伸びが鈍化した。これは、前月に社会保障給付に関連してインフレを反映した年間生活費調整が大幅に増加したことを背景に大幅な伸びとなった反動が大きい。また、利息配当収入が▲2.1%(前月比+1.9%)とこちらも前月に大幅な伸びとなった反動もあって前月から大幅なマイナスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、2月の名目が+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は▲0.1%(前月:横這い)とこちらは5ヵ月ぶりのマイナスに転じた。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連が大幅に増加

2月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.9%(前月:+1.0%)と前月並みの堅調な伸びを維持したほか、財消費が+0.5%(前月:▲1.5%)と前月から大幅なプラスに転じた(図表4)。

財消費は、耐久財が+1.3%(前月:▲2.5%)、非耐久財が+0.1%(前月:▲0.9%)といずれも前月からプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+3.9%(前月:▲5.9%)、家具・家電が+0.1%(前月:▲0.4%)、娯楽財・スポーツカーが+0.1%(前月:▲1.1%)、といずれも前月からプラスに転じた。とくに、前月に大幅な落ち込みとなった反動で自動車関連が大幅な増加となった。

非耐久財では衣料・靴が▲0.5%(前月:▲0.1%)と前月からマイナス幅が拡大した。一方、食料・飲料が▲横這い(前月:▲0.1%)と小幅ながらマイナス幅が縮小したほか、ガソリン・エネルギーが+0.5%(前月:▲4.4%)と前月からプラスに転じて非耐久財消費全体を押し上げた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.5%(前月:+1.1%)、金融サービスが+1.5%(前月:+2.5%)、医療サービスが+0.5%(前月:+0.9%)と前月から伸びが鈍化した。一方、輸送サービスが+2.7%(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化したほか、娯楽サービスが+1.4%(前月:▲0.4%)、外食・宿泊が+0.4%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じるなどマチマチの動きとなった。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格の前月比は5ヵ月ぶりにプラス転換

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+2.3%(前月:▲1.4%)と5ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.1%(前月:+0.5%)と3ヵ月連続のプラスとなったものの、前月からプラス幅は縮小した。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲2.3%(前月:▲4.9%)と5ヵ月連続のマイナスとなったものの、前月からマイナス幅は縮小した(図表7)。食料品価格指数は+1.3%(前月:+1.5%)と前月から小幅に伸びが鈍化した一方、80ヵ月連続でプラスを維持した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年04月01日「経済・金融フラッシュ」)

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