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急速に導入が進むインドの再生可能エネルギー~2030年の国際公約達成を狙える位置に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠
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1――はじめに
現在インド政府は2030年までに電力の50%を再生可能エネルギー(再エネ)で賄う目標を立てている。再生可能エネルギーの導入は低炭素化や大気汚染対策、エネルギー安全保障の確保につながるうえに、価格面でのメリットもあるため、インド政府は積極的に取り組んでいる。
本稿では、インドにおける再エネ導入拡大の背景を整理した後、再エネの普及状況を確認し、インド政府の促進策を整理する。そして今後の再生可能エネルギー導入の行方・課題について議論する。
2――インドの再生可能エネルギー導入拡大の背景

現在、インドはエネルギー源の大半を石炭に依存している。一次エネルギー消費量(2021年)のうち、石炭の割合は全体の57%と最大で、次いで石油(27%)、天然ガス(6%)、再生可能エネルギー(5%)、水力(4%)、原子力(1%)となっている(図表3)。
インドは世界有数の石炭埋蔵・生産国であり、需要量の約8割を国内で調達しているが、石油資源は乏しく需要量の8割超を輸入に依存している。また天然ガスは需要が増加しているものの、国産ガスの供給が限定的であり、隣国との国境問題もあってパイプラインの整備が遅れているため、価格が割高なLNGの輸入が増加している。
石油・ガスなどの化石燃料を輸入に頼るインドは、現在一次エネルギー需要の40%以上を輸入に頼っており、エネルギー安全保障上の問題が生じている。また化石燃料の輸入額は毎年900億米ドルを超えており、大幅な貿易赤字を計上してマクロ経済の安定性を損なっている。ウクライナ危機以後、インドが欧米諸国の批判にさらされながらも割安なロシア産原油の輸入量を増やしているのは、こうした事情も関係している。
インドがエネルギー安全保障を確保し、マクロ経済を安定化させるためにも、再エネ導入拡大により化石燃料の輸入を減らしてエネルギー自給率を高めることが必要である。

インドはエネルギー転換における数値目標を設定して国際社会と協調する一方で、モディ首相は「これまで二酸化炭素を大量に排出してきた先進国が責任をもって気候変動の影響を受けている途上国を支援しなければならない」という考えを繰り返し表明している。グローバル・サウスの代弁者として立場をアピールすると同時に、実利を得るための合理的な外交を展開している。

1 再生可能エネルギーの発電コストが、既存の系統からの電力のコストと同等かそれ以下になること。
(2024年03月29日「基礎研レポート」)

03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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