2025年04月16日

インド消費者物価(25年3月)~3月のCPI上昇率は+3.3%、約6年ぶりの低水準に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が4月15日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年3月のCPI上昇率は前年同月比3.3%と、前月の同3.6%から低下し(図表1)、事前の市場予想(同3.5%)1を下回った。

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比3.4%(前月:同3.3%)と2カ月ぶりに上昇した一方、農村部が同3.2%(前月:同3.8%)と5カ月連続で低下した。

品目別にみると、主に食品価格の下落が3月のCPIを押し下げた。

まず食品は前年同月比2.7%となり、前月の同3.7%から低下した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同▲7.0%(前月:同▲1.1%)と生鮮食品の供給改善により価格が更に低下した。特にインドで日常的に必須な野菜とされるトマトは前月比▲11.3%、タマネギは同▲7.1%、ジャガイモは同▲6.4%と揃って下落した。また香辛料(前年同月比▲4.9%)と豆類(同▲2.7%)が減少したほか、国際価格の軟化により穀物製品(同5.9%)や牛乳・乳製品(同2.6%)、肉・魚(同0.3%)が鈍化した。他方、昨年9月の輸入税率の引上げを背景に高騰している食用油(前年同月比17.1%)や果物(同16.3%)は二桁増が続き、また加工食品(同4.3%)が小幅に上昇した。

燃料・電力は前年同月比+1.5%(前月:同▲1.3%)となり、約1年半ぶりにプラスに転じた。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比4.1%(前月:同4.0%)となり2ヵ月連続で上昇した。カテゴリー別にみると、金価格の高騰によりパーソナルケア(同13.5%)が二桁増だったほか、教育(同4.0%)や輸送・通信(同3.3%)、住宅(同3.0%)が前月から小幅に上昇した。一方、衣服・靴(同2.6%)、家庭用品・サービス(同2.7%)、娯楽(同2.4%)は前月から低下した。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標 3月のインフレ率は食品価格の下落が続いて2019年8月以来の低水準だった。食品の供給改善によりインフレ鈍化が続いているが、4月は気温が上昇し、今後は熱波襲来による食品高が警戒されている。4月も全体的に物価上昇圧力は抑制されたものとなるだろうが、先行きはインフレの底打ちが予想される。もっともインド気象局(IMD)によると、今年の南西モンスーン期間中(6~9月)の降雨量は長期平均(LPA)の105%を超え、2年連続で平年を上回る可能性が高い。また足元のドル安や原油価格の下落はインフレ見通しにとって好ましい動きとなっている。昨年7月以降はインド経済の減速が強まり景気下支え策が求められるなか、RBIは4月の金融政策委員会(MPC)では2会合連続で0.25%の利下げを実施し、政策金利は6.0%に引き下げられている。今回3月のインフレ率が低下し、インド準備銀行(RBI)の物価目標(+2%~6%)の中央値を下回って推移するなか(図表3)、経済の先行きは米国の関税措置で世界貿易が縮小するなど世界的な不確実性に伴う成長の下振れリスクが高まっている。RBIは6月と8月の会合でそれぞれ0.25%の追加利下げを実施し、政策金利は5.5%まで引き下げられると予想する。
 
1 Bloomberg集計の中央値。

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(2025年04月16日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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