2025年03月13日

インド消費者物価(25年2月)~2月のCPI上昇率は半年ぶりの4%割れ

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が3月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年2月のCPI上昇率は前年同月3.6%と、前月の同4.3%から低下し(図表1)、事前の市場予想(同4.0%)1を下回った。

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比3.3%(前月:同3.9%)、農村部が同3.8%(前月:同4.6%)となり、それぞれ4カ月連続で低下した。

2月のCPIの内訳をみると、主に食品価格の緩和により低下したことが分かる。

まず食品は前年同月比3.7%となり、前月の同6.0%から低下した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同▲1.1%(前月:同11.3%)と生鮮食品の入荷が進んで価格高騰が大きく緩和された。特にインドで日常的に必須な野菜とされるトマトは前月比▲38.5%、タマネギは同▲6.7%、ジャガイモは同▲19.5%と揃って下落した。また国際価格の軟化により穀物製品(同6.1%)が鈍化、牛乳・乳製品(同2.7%)や加工食品(同4.2%)、肉・魚(同2.1%)が相対的に落ち着いた伸びとなったほか、香辛料(前年同月比▲5.8%)と豆類(同▲0.3%)が減少した。他方、昨年9月の輸入税率の引上げを背景に高騰している食用油(前年同月比16.4%)や果物(同14.8%)は二桁増だった。

燃料・電力は前年同月比▲1.3%となり、18ヵ月連続でマイナス圏での推移となった。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比4.0%となり前月の同3.7%から上昇した。カテゴリー別にみると、教育(同3.8%)や住宅(同2.9%)、輸送・通信(同2.9%)、衣服・靴(同2.7%)、家庭用品・サービス(同2.9%)、娯楽(同2.7%)は落ち着いた伸びが続いたが、パーソナルケア(同13.6%)が大幅に上昇した。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
今年2月のインフレ率は前年同月比3.6%となり、食品価格の継続的な下落により7ヵ月ぶりの低水準だった(図表3)。昨年高騰した食品価格は雨季作の豊作と乾季作の作付面積の拡大、冬の野菜価格の緩和などから落ち着いてきている。日次の食品価格指数をみると、3月も食品価格が低下傾向で推移しており、引き続きインフレは緩やかなものとなりそうだ(図表4)。昨年7月以降はインド経済が減速して景気下支え策が求められるなか、RBIは今年2月の金融政策委員会(MPC)では4年9ヵ月ぶりに0.25%の利下げを実施、政策金利が6.25%に引き下げられた。今回2月のインフレ率がインド準備銀行(RBI)の物価目標(+2%~6%)の中央値を下回ったことで利下げ余地が生まれており、また経済の先行きは貿易関連の不確実性が高まっているため、4月と6月の会合では成長を支えるため追加利下げが実施されると予想する。
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標/(図表4)日次小売食品価格
 
1 Bloomberg集計の中央値。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年03月13日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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