2025年02月13日

インド消費者物価(25年1月)~1月のCPI上昇率は大きく低下し、目標の4%に近づく

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が2月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年1月のCPI上昇率は前年同月4.3%と、前月の同5.2%から低下し(図表1)、事前の市場予想(同4.5%)1を下回った。

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比3.9%(前月:同4.6%)、農村部が同4.6%(前月:同5.8%)となり、それぞれ3カ月連続で低下した。

1月のCPIの内訳をみると、主に食品価格の緩和により低下したことが分かる。

まず食品は前年同月比6.0%となり、前月の同8.4%から低下した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同11.3%(前月:同26.6%)と生鮮食品の入荷が進んで価格高騰が緩和された。特にインドで日常的に必須な野菜とされるトマトは前月比▲35.1%、タマネギは同▲21.6%、ジャガイモは同▲20.5%と揃って下落した。また国際価格の軟化により穀物製品(同6.2%)が鈍化し、また牛乳・乳製品(同2.8%)や豆類(同2.6%)、加工食品(同4.1%)、肉・魚(同5.3%)が相対的に落ち着いた伸びとなったほか、香辛料(前年同月比▲6.8%)は引き続き減少した。他方、食用油(前年同月比15.6%)は昨年9月の輸入税率の引上げを背景に価格上昇が続いており、果物(同12.2%)も高めの伸びが続いた。

燃料・電力は前年同月比▲1.4%となり、17ヵ月連続でマイナス圏での推移となった。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.7%となり前月の同3.6%から若干上昇した。カテゴリー別にみると、教育(同3.8%)や住宅(同2.8%)、輸送・通信(同2.8%)、衣服・靴(同2.7%)、家庭用品・サービス(同2.9%)、娯楽(同2.6%)は落ち着いた伸びが続いたが、パーソナルケア(同10.6%)が大幅に上昇した。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
今年1月のインフレ率は前年同月比4.3%となり、食品の価格上昇圧力が和らいで5ヵ月ぶりの低水準となった。インド準備銀行(RBI)の物価目標(+2%~6%)の中央値に近づき、インフレは落ち着いてきていると言える(図表3)。昨年高騰した食品価格は雨季作の豊作と乾季作の作付面積の拡大により軟化している。日次の食品価格指数をみると、2月も食品価格が緩和傾向で推移しており、足元のインフレ緩和の動きは続きそうだ(図表4)。昨年7月以降はインド経済が減速して景気下支え策が求められるなか、RBIは今月の金融政策委員会(MPC)で4年9ヵ月ぶりに0.25%の利下げを実施、政策金利は6.25%に引き下げられた。またMPCでは全会一致で中立的な金融政策スタンスを継続することを明らかにしているが、当面は食品価格の緩和傾向が続くと予想されるため、4月のMPCでも追加利下げが実施されるとみられる。
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標/(図表4)日次小売食品価格
 
1 Bloomberg集計の中央値。
 
 

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(2025年02月13日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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