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- インドネシア経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比+5.02%~消費が持ち直して再び5%成長に
2025年02月05日
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インドネシアの2024年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.02%増(前期:同4.94%増)と上昇し、市場予想2(4.96%)を上回った。
10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、消費の回復が成長率上昇に繋がった(図表1)。
民間消費は前年同期比4.98%増(前期:同4.91%増)と上昇した。費目別に見ると、輸送・通信(同6.45%増)とホテル・レストラン(同6.30%増)が堅調な伸びを維持した一方、食料・飲料(同4.34%増)や保健・教育(同4.31%増)、住宅設備(同4.33%増)が伸び悩んだ。
政府消費は前年同期比4.37%増となり、前期の同4.78%増から鈍化した。
総固定資本形成は前年同期比4.33%増(前期:同4.47%増)と低下した。機械・設備投資(同9.30%増)と建設投資(同5.26%増)が堅調だったが、育成生物資源(同11.87%減)が低迷した。
純輸出は成長率寄与度が▲0.25%ポイント(前期:▲0.22%ポイント)となり2四半期連続のマイナスだった。財・サービス輸出は前年同期比7.64%増(前期:同8.80%増)と鈍化したものの、堅調な伸びが続いた。輸出の内訳を見ると、財輸出が同6.72%増、サービス輸出が同17.97%増だった。また財・サービス輸入は同10.68%増(前期:同11.83%増)と二桁増が続いた。輸入の内訳を見ると、財輸入が同10.19%増、サービス輸入が同13.99%増だった。
供給項目別のGDPをみると、第二次産業、第三次産業がそれぞれ鈍化した(図表2)。
まず第三次産業は前年同期比5.41%増(前期:同5.89%増)と低下した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売(同5.19%増)をはじめとして、ビジネスサービス(同8.08%増)や運輸・倉庫(同7.64%増)、情報・通信(同7.45%増)、ホテル・レストラン(同6.61%増)が堅調に拡大した一方、行政・国防(同1.16%増)や金融・不動産(同2.24%増)、教育(同2.95%増)が伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比4.89%増(前期:同5.16%増)と低下した。内訳を見ると、全体の2割を占める製造業(同4.89%増)と鉱業(同3.95%増)が改善したが、建設業(同5.81%増)と電気・ガス・水供給業(同3.25%増)が鈍化した。
第一次産業は前年同期比0.71%増(前期:同1.69%増)と低下した。
1 2025年2月5日、インドネシア統計局(BPS)が2024年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
まず第三次産業は前年同期比5.41%増(前期:同5.89%増)と低下した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売(同5.19%増)をはじめとして、ビジネスサービス(同8.08%増)や運輸・倉庫(同7.64%増)、情報・通信(同7.45%増)、ホテル・レストラン(同6.61%増)が堅調に拡大した一方、行政・国防(同1.16%増)や金融・不動産(同2.24%増)、教育(同2.95%増)が伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比4.89%増(前期:同5.16%増)と低下した。内訳を見ると、全体の2割を占める製造業(同4.89%増)と鉱業(同3.95%増)が改善したが、建設業(同5.81%増)と電気・ガス・水供給業(同3.25%増)が鈍化した。
第一次産業は前年同期比0.71%増(前期:同1.69%増)と低下した。
1 2025年2月5日、インドネシア統計局(BPS)が2024年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
10-12月期GDPの評価と先行きのポイント
インドネシア経済は昨年2月の大統領選挙と総選挙の実施により選挙関連支出がGDPを押し上げる形となり、2024年前半の実質成長率は前年同期比5.07%と順調だった。7-9月期の成長率は+5%割れとなったが、今回発表された10-12月期は再び5%成長に回復して堅調な成長ペースが続いていることが明らかとなった。
10-12月期は消費の回復が成長率上昇に繋がった。GDPの半分以上を占める民間消費は前年同期比+4.98%(前期:同+4.91%)と小幅に上昇した。クリスマスや年末のホリデーシーズンに消費が活発化したほか、失業率はコロナ禍前を下回る4%台で安定している。一方、投資(同+4.33%)は伸び悩んだ。低所得者向けの住宅購入支援策などから住宅投資(同+5.26%)は順調だったが、高金利環境が続いて車両(同▲4.13%)や育成生物資源(同▲11.87%)が低迷した。
外需は輸入の大幅な増加により成長率寄与度がマイナスだったが、財輸出(同+6.72%)は堅調に拡大した。貿易統計(通関ベース)をみると、10-12月期は鉄鋼、電気機械、織物類など製造品の輸出が好調だった(図表3)。またサービス輸出(同+17.55%)は大幅な増加が続いている。10-12月期の外国人旅行者数は前年同期比+15.6%の353万人となり順調だった。
インドネシア経済は堅調を維持しているものの、依然として消費と投資の伸びは+5%を下回っている。内需の勢いがそれほど強くないため、10-12月期の消費者物価指数(CPI)は同+1.6%と低水準にあり、インドネシア中銀の物価目標(+1.5~3.5%)の下限で推移している(図表4)。インドネシア中銀は国内需要を喚起すべく先月0.25%の追加利下げを実施(昨年9月に利下げして以来4カ月ぶり)した。トランプ米大統領の就任を控えてドル高圧力が高まる時期だっただけにサプライズの利下げであり、政策金利は昨年のピークから0.5%ポイント低下して5.75%となったものの、依然高い水準にあり、景気の先行きに対する懸念は払拭できていない。2025年は米トランプ政権の関税政策による世界貿易の混乱が懸念され、先月インドネシア中銀は2025年の成長率予想を+4.8~5.6%から+4.7~5.5%に下方修正した。プラボウォ大統領は現在5%前後の成長率を8%以上に高める目標を掲げているが、実現の道のりは険しい。プラボウォ政権はジョコ前政権から首都移転事業を継承しているが2025年度はインフラ開発予算を抑制し、その財源を給食や健康診断の無償化、電気料金の割引、公務員給与の引き上げ、年300万戸の住宅供給計画などに充てており、「成長」と「分配」のうち分配政策をより重視する姿勢に転換している。
10-12月期は消費の回復が成長率上昇に繋がった。GDPの半分以上を占める民間消費は前年同期比+4.98%(前期:同+4.91%)と小幅に上昇した。クリスマスや年末のホリデーシーズンに消費が活発化したほか、失業率はコロナ禍前を下回る4%台で安定している。一方、投資(同+4.33%)は伸び悩んだ。低所得者向けの住宅購入支援策などから住宅投資(同+5.26%)は順調だったが、高金利環境が続いて車両(同▲4.13%)や育成生物資源(同▲11.87%)が低迷した。
外需は輸入の大幅な増加により成長率寄与度がマイナスだったが、財輸出(同+6.72%)は堅調に拡大した。貿易統計(通関ベース)をみると、10-12月期は鉄鋼、電気機械、織物類など製造品の輸出が好調だった(図表3)。またサービス輸出(同+17.55%)は大幅な増加が続いている。10-12月期の外国人旅行者数は前年同期比+15.6%の353万人となり順調だった。
インドネシア経済は堅調を維持しているものの、依然として消費と投資の伸びは+5%を下回っている。内需の勢いがそれほど強くないため、10-12月期の消費者物価指数(CPI)は同+1.6%と低水準にあり、インドネシア中銀の物価目標(+1.5~3.5%)の下限で推移している(図表4)。インドネシア中銀は国内需要を喚起すべく先月0.25%の追加利下げを実施(昨年9月に利下げして以来4カ月ぶり)した。トランプ米大統領の就任を控えてドル高圧力が高まる時期だっただけにサプライズの利下げであり、政策金利は昨年のピークから0.5%ポイント低下して5.75%となったものの、依然高い水準にあり、景気の先行きに対する懸念は払拭できていない。2025年は米トランプ政権の関税政策による世界貿易の混乱が懸念され、先月インドネシア中銀は2025年の成長率予想を+4.8~5.6%から+4.7~5.5%に下方修正した。プラボウォ大統領は現在5%前後の成長率を8%以上に高める目標を掲げているが、実現の道のりは険しい。プラボウォ政権はジョコ前政権から首都移転事業を継承しているが2025年度はインフラ開発予算を抑制し、その財源を給食や健康診断の無償化、電気料金の割引、公務員給与の引き上げ、年300万戸の住宅供給計画などに充てており、「成長」と「分配」のうち分配政策をより重視する姿勢に転換している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2025年02月05日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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