2024年03月13日

英国雇用関連統計(24年2月)-失業率は低水準、雇用者数の増加傾向が継続

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率はやや上昇

3月12日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった1
 

【2月】
失業保険申請件数2前月(156.82万件)から1.68万件増の158.50万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は4.0%となり、前月(同4.0%)から横ばいだった。
給与所得者数3前月(3033.4万人)から2.0万人増の3035.4万人となった。増減数は前月(+1.5万人)から増加したが、市場予想4(+2.5万人)を下回った。

【1月(23年11-24年1月の3か月平均)】
失業率は3.9%で前月(3.8%)から上昇した(図表1)。
就業者は3317.5万人で3か月前の3319.6万人から2.1万人減少した。増減数は前月(+7.2万人)からマイナスに転じた。
週平均賃金は前年比5.6%で前月(5.8%)から低下、市場予想(5.7%)を下回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ONSでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。
2 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは開発中の公式統計という位置付けで公表している。
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計。
4 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:ストライキは損失日数、件数ベースのいずれでも再び増加

まず2月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数が23年12-24年2月の平均で90.8万件となり22年3-5月平均(130.2万件)をピークした減少傾向が続いている(図表3)。ただし、足もとでは減少ペースが鈍化している。業種別にはここのところ卸・小売、医療、飲食・居住といったサービス業での減少が続いている。また、2月単月の求人数は87.1万件となり、3か月連続で90万件を下回っている5

給与所得者データは、2月の給与所得者数(速報値)が前月差で2.0万人増と1月の前月差(+1.5万人)から増加幅が拡大した。産業別には製造業や建設、卸・小売、情報業では減少したが、事務サービスや医療での増加が目立った。2月の給与額(中央値)伸び率は前年同月比5.5%となり、1月(6.4%)からわずかに減速した。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
労働力調査ベースの数値は、23年11月-24年1月期の失業率で3.9%となり、23年12月の3.8%からやや上昇した(前掲図表1)。就業者が微増したが、非労働力人口が減少し、失業者も増加した形となった。労働参加率は62.8%とコロナ禍後の最低値付近で推移している。
(図表5)賃金上昇率(ボーナス除く)の推移/(図表6)英国の労働争議件数と労働損失日数
労働時間は31.9時間(前年差0.1時間)、フルタイム労働者で36.7時間(同0.2時間)となった(前掲図表2)。週当たり総労働時間はコロナ禍前比0.2%と、23年3-5月期以来となるプラスとなった。名目賃金は前年比で5.6%となり、前月(5.8%)からやや低下した。ボーナスを除く定期賃金伸び率では、前年比6.1%と前月(6.2%)から減速し、市場予想(6.2%)を下回った。3か月連続で6%台を維持しているが、ONSは、前年比は高い賃上げが反映される前のデータとの比較であり、最近の賃上げの勢いは弱まっていると指摘している(図表5)。なお、実質ベースの伸び率は、ボーナス含みで前年比1.4%、ボーナスを除きで同1.8%と横ばい推移となっている。

処遇改善を求めたストライキは、1月は件数ベースで292件、労働損失日数で20.3万日となった。いずれも23年12月から増加している(図表6)。
 
5 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年03月13日「経済・金融フラッシュ」)

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