コラム
2024年03月08日

新NISAのスタートダッシュの反動も~2024年2月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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1月からさらに資金流入が増加!!

2024年2月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、2月はファンド全体に1兆4,100億円の資金流入があった。1月の1兆3,000億円からさらに1,100億円増えた。SMA専用ファンドへの流入額が1,000億円と1月の800億円から増えたこともあるが、一般販売されているファンドの販売も1月以上に好調であった様子である。
 
2月も外国株式ファンドに1兆1,400億円の資金流入があり、ファンド全体への純流入の8割が外国株式ファンドであった。外国株式ファンド全体でみるとSMA専用ファンドから資金流出していたため流入額が1月より若干減少したが、一般販売されているものに限ると1月から300億円と少額であるが資金流入が増加した。
【図表1】 2024年2月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

インデックス型の外国株式ファンドの一部で1月の反動が

ただし、一般販売されている外国株式ファンドをタイプ別にみると、インデックス型には2月も8,800億円と大規模な資金流入があったが、1月の9,600億円から800億円減少した。そもそも1月は新NISAの成長投資枠の年間240万円を一括で利用した人が数多くいたと思われ、インデックス型の外国株式ファンドなどの販売が膨らんでいた可能性があった。そのため2月はインデックス型の外国株式ファンドの販売が鈍化したというより、1月に成長投資枠の一括利用などによって膨らんでいた分が落ちただけといえそうである。
 
個別にみると2月も1月と同様に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(1位)に2,300億円、「eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)」(2位)に1,800億円と資金流入が集中していた【図表2】。引き続き非常に売れていたといえるが1月の3,400億円、2,100億円と比べると、それぞれ1,100億円、300億円減少した。特に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が1月に売れに売れていた分、2月はその反動で減少も大きかった様子である。
 
この上位2本以外にも資金流入が1月から細ったインデックス型の外国株式ファンドがあった。それでも上位2本の1月からの減少額が1,400億円とインデックス型の外国株式ファンド全体の減少額800億円を大きく上回っている。しかし、インデックス型の外国株式ファンドへの資金流入が1月から減少したとはいえ、2月の8,800億円という流入額自体は、2023年までと比べると2倍以上の金額であった。そのためインデックス型の外国株式ファンドは1月に売れ過ぎた一部で2月にその反動があったが、引き続き販売は堅調であったと言える。
【図表2】 2024年2月の推計純流入ランキング

米ハイテク株投資が盛んに

アクティブ型の外国株式ファンドは2月に2,800億円の資金流入と1月の1,800億円から増加した。アクティブ型の場合は2月も販売を牽引していたファンド2本(【図表2】太字:3位、4位)が新NISAで買付不可であったことからも分かるように、そもそも新NISAの影響がインデックス型と比べて小さかったことが考えられる。その上で2月はハイテク系のテーマ型やハイテク系の銘柄の組入が多いと思われる米国成長株式のアクティブ型ファンドが売れた。
 
なお、インデックス型の外国株式ファンドでも主に米ハイテク株式で構成されている指数に連動しているものに限ると「iFreeNEXT FANG+インデックス」(7位)を中心に2月に1,000億円の資金流入と1月の900億円から増加した。このようにインデックス型でもハイテク系の販売は好調であった。

米ハイテク株が中心のNASDAQ総合指数が2023年は43%も上昇し、2024年に入っても年初来で既に7%上昇するなど、米ハイテク株の上昇が顕著であったこともあり、注目する個人投資家が多いようだ。ただし、米ハイテク株については足元、過熱感も指摘されているだけに、株価上昇の後追いで結果的に高値掴みになる可能性もあるかもしれない。

国内株式も新NISAの影響?

また、国内株式ファンドにも2月に1,400億円の資金流入があり、1月の1,300億円から若干増加した。一般販売されている国内株式ファンドをタイプ別にみるとアクティブ型の資金流入が減る一方でインデックス型が増え、偶然かもしれないが外国株式ファンドと逆の傾向になった。
 
一般販売されているアクティブ型の国内株式ファンドには800億円の資金流入があったが、1月の1,000億円から200億円減少した。アクティブ型の国内株式ファンドもインデックス型の外国株式ファンドと同様に1月が成長投資枠の一括利用などによって膨らんでいた可能性がある。ただ、アクティブ型の国内株式ファンドは1月からの減少が小幅だったこともあり、1月に人気を集めてファンドが2月に販売停止の影響など、その他の要因によるところが大きかったと考えられる。2月も株価上昇が大きかっただけに利益確定売りが膨らんだ可能性もあるだろう。
 
その一方で、一般販売されているインデックス型の国内株式ファンドには500億円の資金流入と流入額こそ小さいが1月の100億円から400億円増えた。日次で資金流入を詳しくみると、2月は9日に300億円、22日には200億円の純流出と日経平均株価が大きく上昇した翌営業日は売却超過になっていた【図表3】。それでも日経平均株価が高値で推移する中、20日、21日、22日と3営業日連続で100億円の資金流入があるなど買いも旺盛だった。新NISAや足元の株価上昇などの影響からなのか、やはり2024年に入ってからインデックス型の国内株式ファンドの買付が地味に増えている可能性が高そうである。

その他に2月は外国債券ファンドや国内債券ファンドへの資金流入も増加したが、内外債券ファンドの資金流入についてはほぼSMA専用ファンドによるものであった。また、国内REITファンドと外国REITファンドは流出額こそ1月からやや減少したが引き続き資金流出であった。
【図表3】 インデックス型の国内株式ファンドの資金流出入

テーマ型の株式ファンドの一部が特に好パフォーマンス

2月は世界的に株式が上昇する中でテーマ型の内外株式ファンドの一部のものが特に好調だった【図表4】。特に足元、人気を集めている「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」(【図表2】8位、【図表4】7位)は過去1年間の収益率が100%を超えており、過去1年でみても最もパフォーマンスが良かった。
【図表4】 2024年2月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2024年03月08日「研究員の眼」)

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