2024年03月07日

上昇が続くグローバル株式市場

金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任 原田 哲志

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1――グローバル株式市場は上昇基調が続く

2024年2月、グローバル株式市場は堅調な推移となった。米国でのインフレ率の鈍化、それによる経済のソフトランディングへの期待や中国での景気回復に向けた財政政策の強化などが株式市場を支えた。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)のリターンは2024年2月 +4.3%(米ドル建グロス配当込み)1、過去1年(2023年3月-2024年2月)も+23.8%と上昇が続いている(図表1)。

2024年2月、先進国と新興国を比べると、新興国は先進国と比較して低いリターンにとどまった。先進国(MSCI  World Index)が+4.8%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+4.3%となった(図表2)。
図表1 世界株指数の推移/図表2 先進国・新興国指数の推移
グロース・バリューでは、グロース指数(MSCI ACWI Growth Index)が+6.0%、バリュー指数(MSCI ACWI Value Index)が+2.6%とグロース優位となった(図表3)。企業規模別では、大型株(MSCI ACWI Large Cap Index)が+4.4%、中型株(MSCI ACWI Mid Cap Index)が+3.9%、小型株(MSCI ACWI Small Cap Index)が+3.3%と大型株優位となった(図表4)。過去1年では、大型・グロース優位の展開が続いており、直近1カ月もその傾向が継続している。
図表3 グロース・バリュー指数の推移/図表4 企業規模別指数の推移
 
1 以下、特に断りのない限りリターンは米ドル建グロス配当込みを示す。

2――国・業種別の動向

2――国・業種別の動向

2024年2月は国別に見ても上昇した国が多かった(図表5)。イスラエル(+8.8%)、中国(+8.4%)、ペルー(+7.2%)がリターンが高かった。一方で、エジプト(▲12.5%)、オーストリア(▲7.6%)、ポルトガル(▲6.8%) がリターンが低かった。主要国について見ると、米国(+5.4%)、ドイツ(+4.1%) 、日本(+2.9%)となった。

イスラエルは武装組織ハマスとの戦闘を背景に株価が下落していたが、経済回復の兆しなどから株式市場は反発している。中国は過去1年では下落傾向となっていたが、景気刺激策への期待などから2月は上昇した。
図表5 各国の株式市場のリターン
業種別に見ると、半導体・半導体製造装置(+15.6%)、自動車・自動車部品(+10.2%)、小売(+9.6%)がリターンが高かった。一方で、食品・飲料・タバコ(▲1.3%)、公益事業(▲0.4%)、家庭用品・パーソナル用品(▲0.2%) がリターンが低かった(図表6)。

地政学リスクの高まりや生成AIブームを背景として半導体・半導体製造装置が大きく上昇する一方で、食品・飲料・タバコなど景気の影響を受けにくいディフェンシブセクターは変動が小さかった。
図表6 業種別リターン

3――世界の主要企業の株価動向

3――世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価について見ると幅広い銘柄で株価が上昇した(図表7)。時価総額上位30位の企業では、エヌビディア(+26.7%)、メタ(+22.4%)、トヨタ自動車(+19.5%)のリターンが高かった。一方で、アルファベット(▲9.8%)、アップル(▲5.6%)、ユナイテッドヘルスグループ(▲2.2%) のリターンが低かった。エヌビディアは生成AI向けGPUの需要増加などを背景に好調な決算を発表したことから上昇した。一方で、アルファベット(Google)は同社のAIサービスGeminiで問題が発見されたことなどから下落した。
図表7 世界の主要企業の株価動向

4――今後の見通しと注目されるテーマ

4――今後の見通しと注目されるテーマ

グローバル株式市場は上昇が続いているが、今後の見通しについていくつかのリスク要因が存在する。国際通貨基金が公表する世界経済見通しによれば世界経済を押し上げる要因として、(1)インフレの収束、(2)財政支援の継続、(3)中国経済の回復、(4)人工知能による生産性向上が指摘されている2。一方で、下振れリスクとして、(1)地政学ショックや気象ショックによる一次産品の急騰、(2)金融引き締め、(3)中国の成長鈍化、(4)各国政府の債務比率上昇による緊縮財政が挙げられている。インフレは鈍化傾向にあるが、先行きは不透明な状況が続いている。ウクライナやイスラエルなどでの紛争は長期化しており、いまだに収束の兆しは見えていない。また、AIは大幅な生産性向上をもたらす可能性があるものの現時点では期待が先行している面もあり、その動向は半導体関連企業の業績に影響を与える。こうした要因がグローバル株式市場に与える影響に引き続き注視していきたい。
 
2 国際通貨基金, 「世界経済見通し改訂版2024年1月」, 2024年 1月
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   准主任研究員・ESG推進室兼任

原田 哲志 (はらだ さとし)

研究・専門分野
資産運用、オルタナティブ投資

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
         大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
    2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)

    【加入団体等】
     ・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・修士(工学)

(2024年03月07日「基礎研レター」)

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