- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 欧米保険事情 >
- 米国生保の契約者配当-米国では各社の配当利率の比較が行われている
米国生保の契約者配当-米国では各社の配当利率の比較が行われている

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
4――配当と他の非保証要素の相違
しかし、配当と他の非保証要素には、一つ大きな相違がある。非保証要素は、ほとんどの場合、将来経験する事柄に関する“予測”に基づいて決定されている。例えば、諸積立利率は、将来の金利見通しや資産運用環境を念頭に置きつつ、保守的な水準として設定されることが一般的だ。
これに対して、配当の主な決定要因は、“過去の経験、実績”である。原則として、剰余の発生状況を分析し、それをもとに配当として契約者に還元する金額が決められる。
募集文書上の配当表示の場合は、そうした実績にもとづく配当率を、将来の配当見通しとして示すことに関して、さまざまな問題が生じかねず、それに対応する規制が必要となったものと言えるだろう。配当には、独自の概念基盤や、保険数理上の展開があり、規制体系が設けられてきたものと見ることができる。8
7 諸積立利率、契約者貸付利率、ユニバーサル保険の保険費用(cost of insurance)など、さまざまなものが非保証要素として挙げられる。
8 “Overview of Nonguaranteed Elements (NGEs)” David Cook, Kristen Koon, Zohair Motiwalla, Karen Rudolph (the Society of Actuaries Research Institute, Nov. 2022) の内容を参考に、筆者がまとめた。
5――おわりに (私見)
米国では、各保険会社が2024年に伝統的保険の配当利率を引き上げる展開となっている。一方、日本では、生保配当に対する一般社会の関心はそれほど高くないものとみられる。日本を含めて、各国の保険会社の配当政策、顧客への示し方等について、引き続き、ウォッチしていくこととしたい。
(参考文献)
“Mechanics of Dividends” Dale Hagstrom (the Society of Actuaries Research Institute, Mar. 2022)
“Life Insurance Illustrations Model Regulation” (NAIC, Apr. 2001)
「諸外国における保険募集規制を中心とした保険監督行政・規制について[第Ⅰ編 米国]」(財団法人損害保険事業総合研究所研究部, 2004年3月)
「生命保険用語 英和・和英辞典」(公益財団法人 生命保険文化センター オンライン辞典)
“Overview of Nonguaranteed Elements (NGEs)” David Cook, Kristen Koon, Zohair Motiwalla, Karen Rudolph (the Society of Actuaries Research Institute, Nov. 2022)
「保険2(生命保険) 第3章 契約者配当」(公益社団法人日本アクチュアリー会, 平成元年4月作成)
(2024年03月05日「保険・年金フォーカス」)
このレポートの関連カテゴリ

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/15 | 患者数:入院は減少、外来は増加-2023年の「患者調査」にコロナ禍の影響はどうあらわれたか? | 篠原 拓也 | 基礎研レター |
2025/04/08 | センチネル効果の活用-監視されていると行動が改善する? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/01 | 1, 2, 4, 8, 16, ○, …-思い込みには要注意! | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/03/25 | 産業クラスターを通じた脱炭素化-クラスターは温室効果ガス排出削減の潜在力を有している | 篠原 拓也 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年04月22日
生命保険の基礎知識はなぜ定着しないのか -
2025年04月22日
家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年2月)-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 -
2025年04月22日
プレコンセプションケア 性と健康の相談事業とは?-令和5年4月時点で全国574か所で展開、最も多い相談内容は「妊娠・避妊に関する相談」- -
2025年04月22日
今週のレポート・コラムまとめ【4/15-4/21発行分】 -
2025年04月21日
日本国債市場は市場機能を回復したか-金融正常化における価格発見機能の構造変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【米国生保の契約者配当-米国では各社の配当利率の比較が行われている】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
米国生保の契約者配当-米国では各社の配当利率の比較が行われているのレポート Topへ