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フリーランス保護新法の概要と影響

金融研究部 准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任 原田 哲志
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1――フリーランス保護新法成立の背景
フリーランス保護新法が成立した背景には、(1)働き方の多様化によってフリーランスが増加、安心して働ける環境が必要となっていることや、(2)企業などとフリーランスの取引でトラブルが多数発生していることがある。
公正取引委員会などの調査によれば、フリーランスの39.2%が依頼者から納得できない行為を受けた経験があると回答している(図表1)。また、フリーランスとの取引について、取引条件や業務内容が、「示されていない」もしくは「不十分」と回答した割合が44.4%にのぼることが示されている(図表2)。
集団で事業を行う会社組織に対してフリーランスは個人で事業や取引を行うことが多く、情報収集力、交渉力や法律に関する知識などの格差から弱い立場に置かれやすいことが背景となっている。また、フリーランスは自身で事業を営んでいることから、原則として労働基準法の「労働者」とは認められず、労働基準法による保護を受けることはできない。
こうした中、働き方が多様化しフリーランスが増加する現在では、フリーランスが適正な取引を行い、働きやすい環境を構築していくことが求められている。
2――フリーランス保護新法の内容と求められる対応
フリーランス保護新法の目的のうち、フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化については公正取引委員会、フリーランスの就業環境の整備は厚生労働省の所管であり、所管省庁が2つあるということもフリーランス保護新法の特徴である。
従来はフリーランスの企業の取引は下請法により保護されてきたが、フリーランス保護新法と下請法は、保護範囲と規制範囲に違いがある。下請法は、資本金1,000万円超の事業者のみを規制対象としているのに対して、フリーランス保護新法では資本金の金額によらず企業は規制の対象となる。このため、資本金1,000万円以下の企業は下請法による規制は必要とならなかったが、フリーランス保護新法では対応を求められることとなる。
フリーランス保護新法では法律の対象となるフリーランスを「特定受託事業者」と呼称している。特定受託事業者とは業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものを指す。
また、下請法では、書面交付や報酬支払期限といった取引に関することが規制対象であるのに対して、フリーランス保護新法では、ハラスメント対策に係る体制整備、育児介護等と業務の両立に対する配慮といった労働者類似の保護が盛り込まれており、企業はこれらの対応を行う必要がある。
3――フリーランス保護の今後の課題
こうした問題を解決し、フリーランスを適切に保護することが今回の新法制定等により進められているが、課題点も残されている。フリーランス保護新法により、労働者類似の保護が整備された。
しかし、フリーランスは厚生年金に加入できないなど、フリーランスのセーフティネットにはいまだに課題が残されている。その一方で、厳しすぎる規制は企業がフリーランスを使うことを難しくしかねない。今後のフリーランス保護に関する制度整備の進展と実態の改善状況が注目される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年02月29日「基礎研レター」)

03-3512-1860
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
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