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- 次世代の太陽電池「ペロブスカイト」とは
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2025年07月08日
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1―ペロブスカイト太陽電池とは
2―山がちで平地が限られた日本
日本では太陽光発電の普及が政策として推進されているが、近年では拡大が鈍化している。資源エネルギー庁によれば太陽光発電(非住宅)のFIT/FIP導入量は2014年の836.8万kWをピークに減少し、直近ではピーク時の半分以下まで落ち込んでいる[図表2]。
これは(1)固定価格買取制度(FIT)での電力買取価格の低下や(2)太陽光パネルを設置可能な土地や屋根の減少などが背景となっている。(1)について、2012年の制度導入以降、政府は買取価格の段階的な引き下げを実施した結果、採算性が低下し、新規参入の魅力が薄れた。
(2)について、利用可能な屋根スペースや土地が既に多く活用されており、新たな適地の確保が難しくなっている。
元々、日本は国土の大部分を山地が占めており、太陽光発電パネルを設置できる場所が限られている。従来のシリコン太陽電池の設置には平らで広い場所が必要となる。しかし、ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽く、建物の壁面や窓、さらには曲面にも取り付け可能なため、都市部や限られたスペースでも活用できる。このことから、ペロブスカイト太陽電池は地理的制約のある日本での太陽光発電の普及拡大への鍵となっている。
これは(1)固定価格買取制度(FIT)での電力買取価格の低下や(2)太陽光パネルを設置可能な土地や屋根の減少などが背景となっている。(1)について、2012年の制度導入以降、政府は買取価格の段階的な引き下げを実施した結果、採算性が低下し、新規参入の魅力が薄れた。
(2)について、利用可能な屋根スペースや土地が既に多く活用されており、新たな適地の確保が難しくなっている。
元々、日本は国土の大部分を山地が占めており、太陽光発電パネルを設置できる場所が限られている。従来のシリコン太陽電池の設置には平らで広い場所が必要となる。しかし、ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽く、建物の壁面や窓、さらには曲面にも取り付け可能なため、都市部や限られたスペースでも活用できる。このことから、ペロブスカイト太陽電池は地理的制約のある日本での太陽光発電の普及拡大への鍵となっている。
3―従来のシリコン太陽電池での日本の失敗と課題
ペロブスカイト太陽電池の研究・開発においては、諸外国との競争も重要な課題となる。2023年時点、ペロブスカイト太陽電池に関する日本の特許の累計出願数は世界首位であった*1。しかし、近年では中国や韓国の出願が増えており、日本の優位性が揺らいでいる。
従来のシリコン太陽電池では、当初は1973年のオイルショックをきっかけに化石燃料に依存しないエネルギー源として技術開発が進められた。これにより2000年頃には世界での日本の太陽光パネルのシェアは50%を占めるに至った。しかし、その後日本のシェアは低下し続け2022年には1%未満まで低下した*1。
2000年代半ばに世界市場が急拡大する中、日本は競争力を強化するための生産体制の整備に向けた投資の規模とスピードが不十分であった。こうした中、中国をはじめ海外でも先端の製造装置を導入すれば技術開発を行わなくともパネルを大量生産できる状況となったことで、日本の太陽光パネル生産の優位が失われていった。
日本の優位性が失われる一方、中国企業は政府の強力な支援のもと大規模な設備投資と量産体制を整え、コスト競争力の高い製品を市場に大量投入した。
さらに、固定価格買取制度での電力買取価格の低下など日本国内の再生可能エネルギー政策が停滞したことも、企業の意欲低下や事業縮小を招き、グローバル市場での存在感を次第に失った。
ペロブスカイト太陽電池の市場競争においては、こうしたシリコン太陽電池での失敗を繰り返してはならない。日本の太陽電池産業が再び国際競争力を取り戻すためには、政策支援の強化や企業間の連携、技術と生産の両面での戦略的な再構築が不可欠である。早期から将来的な海外市場への展開を見据えて、十分な規模とスピードで次世代型太陽電池の設備投資を政策支援することが必要だ。
*1 日本経済新聞、「曲がる太陽電池、中国猛追 特許出願はパナソニック首位」、2023年11月28日
*2 経済産業省、「次世代型太陽電池戦略」、2024年11月
従来のシリコン太陽電池では、当初は1973年のオイルショックをきっかけに化石燃料に依存しないエネルギー源として技術開発が進められた。これにより2000年頃には世界での日本の太陽光パネルのシェアは50%を占めるに至った。しかし、その後日本のシェアは低下し続け2022年には1%未満まで低下した*1。
2000年代半ばに世界市場が急拡大する中、日本は競争力を強化するための生産体制の整備に向けた投資の規模とスピードが不十分であった。こうした中、中国をはじめ海外でも先端の製造装置を導入すれば技術開発を行わなくともパネルを大量生産できる状況となったことで、日本の太陽光パネル生産の優位が失われていった。
日本の優位性が失われる一方、中国企業は政府の強力な支援のもと大規模な設備投資と量産体制を整え、コスト競争力の高い製品を市場に大量投入した。
さらに、固定価格買取制度での電力買取価格の低下など日本国内の再生可能エネルギー政策が停滞したことも、企業の意欲低下や事業縮小を招き、グローバル市場での存在感を次第に失った。
ペロブスカイト太陽電池の市場競争においては、こうしたシリコン太陽電池での失敗を繰り返してはならない。日本の太陽電池産業が再び国際競争力を取り戻すためには、政策支援の強化や企業間の連携、技術と生産の両面での戦略的な再構築が不可欠である。早期から将来的な海外市場への展開を見据えて、十分な規模とスピードで次世代型太陽電池の設備投資を政策支援することが必要だ。
*1 日本経済新聞、「曲がる太陽電池、中国猛追 特許出願はパナソニック首位」、2023年11月28日
*2 経済産業省、「次世代型太陽電池戦略」、2024年11月
(2025年07月08日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1860
経歴
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
原田 哲志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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