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少子化でも拡大、ランドセル市場-平均価格の上昇で市場規模は563億円へ
 
                                                生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――少子化でもランドセル市場は拡大~2023年は563億円へ
なお、2023年度の小学1年生(2016年4~12月と2017年1~3月生まれ)からは、年間出生数が100万人を下回り、その後はコロナ禍の影響で少子化が加速していくため、例えば、5年後のランドセル平均価格が7万円程度へと上昇したとしても、ランドセル市場規模は2024年頃をピークに減少に転じる見通しである。
2――ランドセル市場拡大の背景~祖父母の購入で価格上昇と購入時期の前倒し、「ラン活」が助長
 先の調査によると、2023年度の小学1年生の購入したランドセルの支払者は祖父母が54.8%を占める。なお、祖父母が支払う割合は、コロナ禍前は6割を超えていたが(2019年度61.3%)、コロナ禍において5割台へと低下している。帰省の自粛やネットショッピングの進展などが影響しているのだろう。
                                                        先の調査によると、2023年度の小学1年生の購入したランドセルの支払者は祖父母が54.8%を占める。なお、祖父母が支払う割合は、コロナ禍前は6割を超えていたが(2019年度61.3%)、コロナ禍において5割台へと低下している。帰省の自粛やネットショッピングの進展などが影響しているのだろう。また、近年、ランドセルの購入時期が早まっている。
総務省「家計調査」によると、二人以上世帯の通学用かばん(ランドセルを含む)の支出額は、15年ほど前は入学直前の冬がピークだったが(2005~2007年平均では1~3月がピーク)、5年ほど前は前年の夏(2015~2017年平均では7・8月)がピークに、直近の2021・2022年平均1では5月と8月に2つのピークへと変化している。つまり、GWや夏休みの帰省時に祖父母と一緒にランドセルを選ぶ家庭が増えたということなのだろう。
なお、先の調査では、2023年度の小学1年生のランドセル購入の検討開始時期は2022年4月(入学1年前)と2021年12月にピークがあり、購入する数か月前から検討が開始されているようだ。
このような中で、近年、子育て世帯では「ラン活」という言葉が浸透しつつある。これは「就活」や「保活」などと同様に、ランドセル購入に向けた一連の活動を略したもので、人気メーカーなどのランドセルを購入するためには早期から獲得に向けた活動(展示会に足を運ぶ、早期に予約をするなど)が必要であることを意味する。
なお、「ラン活」という言葉は、記事検索によれば2016年頃から新聞記事などで登場するようになっており、図1を見ると、ランドセルの平均価格が5万円に、市場規模は500億円に近づき、ランドセル市場の成長が目立ってきた頃だ。ランドセル市場は、「ラン活」という言葉が登場する前から拡大傾向にあったが、この言葉が登場したことで、ランドセル獲得競争が一層過熱し、平均価格の上昇や購入時期の前倒しを助長させたと見られる。
1 2020年は新型コロナ禍で緊急事態宣言が発出され、特に4・5月は物流などに多大な影響が生じたため除いている。
3――ランドセルの色の多様化~男児は黒が過半数、女児は薄紫など多様化、サブスクサービスも登場
2023年度の小学1年生の男児のランドセルは圧倒的に黒(56.9%)が多いものの、減少傾向にあり、紺(6.9%)や青(9.6%)、緑(4.9%)、こげ茶(1.9%)などの他の色が約4割を占めるようになっている(図3)。一方、女児では男児ほど圧倒的に選好される色はなく、最多は紫/薄紫(29.6%)であり、次いで桃(17.0%)が続き、以下、水色(16.5%)、赤(12.4%)と続く。なお、女児では2020年までは赤が最多で約2割を占めていたが、2021年に紫/薄紫が上回るようになり、女児のランドセルは赤という常識は過去のものとなっている。
ところで、大半の児童は小学校の6年間、同じランドセルを使用しているが、最近ではランドセルのサブスクリプションサービスが登場している2。ランドセル購入時期が前倒しされる中で、入学時には好みが変わってしまうケースや小学生生活の途中で切り替えたいという需要にも柔軟に対応できる。
2 「ランドセルも「サブスク」 好み変わっても、定額で交換」(朝日新聞夕刊7面、2023/2/25)
4――小学生の親世代の経済状況の厳しさ~人手不足・賃上げでも正規雇用者の賃金カーブは平坦化
今後のランドセル市場を考えると、子育て世帯の経済基盤の更なる安定化が図られることによって、市場縮小の後ろ倒しも期待できるのかもしれない。
(2024年02月28日「基礎研レポート」)
 
                                        03-3512-1878
- プロフィール
 【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職
 ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
 ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
 ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
 ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
 ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
 ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
 ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
 【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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