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少子化でも堅調、ランドセル市場-「ラン活」浸透で購入時期の前倒し、平均価格の上昇

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- 少子化が進行しているが、ランドセルの平均価格(2022年で5.64万円)が上昇しているため、ランドセル市場は堅調に拡大し、2022年で563億円にのぼる。一方で少子化が加速するため、ランドセル平均価格の上昇が鈍化するとすれば(仮に5年後に6万円)、市場規模は2022年頃をピークに減少に転じる可能性がある。
- 平均価格の上昇は少子化で1人の子どもに充てられる金額が増えたことがあげられる。調査によれば、2022年度の小学1年生の過半数は祖父母による購入であり、帰省時に祖父母と一緒にランドセルを選ぶ家庭が増えたために、ランドセルの購入時期は早まり、15年ほど前は入学直前の冬、5年ほど前は夏、最近は5月と8月がピークである。また、「ラン活」の浸透でこれらの動向は助長されているようだ。
- ランドセルの色も変容している。以前は男児は黒、女児は赤が一般的だったが、2022年では男児の4割は紺や青、緑など、女児では最多が紫/薄紫(24.1%)、僅差で桃(21.0%)、赤(17.0%)と続き、多様化している。また、ランドセルのサブスクリプションサービスが登場し 、購入時期の前倒しで入学時には好みが変わってしまうケースや小学生生活の途中で切り替えたいという需要にも柔軟に対応できる。
- ランドセルの支払者の過半数が祖父母である背景には親世代の経済状況の厳しさがある。非正規雇用率が上昇し、正規雇用者でも30・40歳代え賃金カーブが平坦化し、40歳前後の10年間で大学卒の男性で約▲730万円、女性で約▲820万円も収入が減っている。物価高進行下で政府は家計の負担軽減策を実施しているが、安心して働き続けられる就業環境の整備は究極の家計支援策と言える。将来を担う世代の経済基盤が安定化することで、ランドセル市場の縮小も後ろ倒しされるのかもしれない。
■目次
1――ランドセル市場の動向
~小学1年生人口は減少するも平均価格が上昇、2022年をピークに縮小か?
2――ランドセル市場拡大の背景
~祖父母の購入で価格上昇と購入時期の前倒し、「ラン活」が助長
3――変貌するランドセルの色
~男児は黒が6割、女児は多様化、薄紫が人気、サブスクサービスも登場
4――小学生の親世代の経済状況の厳しさ
~非正規雇用率の上昇、正規雇用者の賃金カーブ平坦化
(2023年03月07日「基礎研レター」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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