コラム
2024年02月20日

曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その4)-クロソイド曲線-

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クロソイド曲線の応用-鉄道-

鉄道の線路において、直線部分から曲線部分の間を滑らかに移行させるために、一般的には「三次放物線」(JR在来線等で使用)又は「サイン半波長逓減曲線」(新幹線等で使用)と呼ばれているものが使われている。曲線半径が小さい場合には「クロソイド曲線」が使われているケースもあり、実際に地下鉄や民営鉄道で使われているそうだ。

因みに、三次放物線は、クロソイド曲線に比べて、式が簡単なため、曲線の設定は容易になっている(ただし、起動敷設と保守は大変となるようだ)。

クロソイド曲線の応用-ローラーコースター(ジェットコースター)-

クロソイド曲線は、ローラーコースター(日本ではジェットコースターと呼ばれることが多い)の垂直ループでも利用されている。

もし、直線軌道からクロソイド曲線を経ずに円軌道に推移すると、その瞬間に乗客の首に強い負荷がかかって、むち打ち症やブラックアウト(一時的記憶喪失)が発生しやすくなってしまう。実際に、1895年に米国のコニーアイランドの遊園地で世界最初の垂直ループが導入された時は円型のループが使用されていたため、乗客にむち打ち症になる人が続出したとのことである。

クロソイド曲線を利用することで、乗客の体にかかる負担が軽減され、より安全なものとなっている。
ローラーコースター(ジェットコースター)

クロソイド曲線のその他の応用

クロソイド曲線は、見た目の美しさや機械的に安定して作成でき、拡張性や局所性を有していること等の理由から、例えばCAD(Computer Aided Design:コンピューター支援設計)5において幅広く利用されている。

クロソイド曲線は、書体におけるグリフ(字体)の美的デザインや、異なるグリース(文字の線の太さ)やイタリック体の効果を持つ派生グリフの制作に有用で、例えば、必ずしも円形ではない鉛筆ヘッドやブラシによって描かれたグリフの輪郭を、その方向や描画方向に応じて、輪郭に沿って変化するグリースを生成する等のモデル化するために使用することができる。
 
5 もともと設計現場で手書きしていた図面等をデジタル化し、コンピューター上で効率的に設計作業を行うことができる支援ツール

最後に

今回は、「クロソイド曲線」について、その性質やそれらが社会において現れてくる場面等について報告してきた。なお、その発見の経緯から明らかなように、クロソイド曲線は光の回析パターンを記述する際等にも使用されているが、話がやや複雑になるので、今回の報告ではこれについての具体的な紹介は行っていない。

カテナリー曲線は、日常生活の中で、(それとは認識せずに)極めて多くの機会で見かけるものになっていたが、クロソイド曲線は、道路のジャンクションやローラーコースターの垂直ループのような特殊な場所で利用されているものだけに、日常生活の中で観察する機会はあまりないものと思われる。ただし、それが例えば、安全性という観点において極めて有用なもので、幅広く利用されていることをご認識いただいて、数学が本当に役に立っているということをご理解いただければと思っている。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2024年02月20日「研究員の眼」)

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