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2024年02月07日
※ 本レポートは2023年12月25日発行の研究員の眼「揚げもみじ×ナッジ-消費の交差点(2)」を
要約したものです。
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1―食べ終わった後の竹串を奉納
2― ゴミの行方まで検討することも企業が果たすべき責任
宮島観光協会によれば、宮島には約500頭のニホンジカが生息しており、そのうち約200頭が街中に生息しているとのことだ。日本では、奈良県の春日大社や大阪府の枚岡神社など鹿にゆかりのある神社も多く、特に春日大社では、神の使い神鹿として大切にされてきた。宮島においても鹿は神聖な生き物として扱われている訳だが、紅葉堂には、竹串回収の守「平のあげもみ公」と呼ばれる公家を彷彿させるような平安の雅の装いをした鹿のキャラクターがあり、その神聖な鹿をモチーフとしたキャラクターが竹串回収箱の上に設置され、竹串回収の守が店頭前に置かれているわけである。
揚げもみじの包みには、「美こそは島の命だ」と大書されていた。宮島は観光地として知られており、食べ歩きの楽しみも多いが、厳島神社への道中では心無い観光客によって様々な食べ残しの皿や割り箸、串などがポイ捨てされている光景が見受けられる。「紅葉堂」は、自社の商品から出るゴミの処理も、企業が負うべき責任の一環と捉え、本文で紹介した神聖な鹿をモチーフにした「平のあげもみ公」を掲げ、捨てる行為を奉納とすることで、能動的にゴミ箱に串を「奉納する」という工夫を施している。
揚げもみじの包みには、「美こそは島の命だ」と大書されていた。宮島は観光地として知られており、食べ歩きの楽しみも多いが、厳島神社への道中では心無い観光客によって様々な食べ残しの皿や割り箸、串などがポイ捨てされている光景が見受けられる。「紅葉堂」は、自社の商品から出るゴミの処理も、企業が負うべき責任の一環と捉え、本文で紹介した神聖な鹿をモチーフにした「平のあげもみ公」を掲げ、捨てる行為を奉納とすることで、能動的にゴミ箱に串を「奉納する」という工夫を施している。
3―捨てるという行為が祈祷に代わる
我々は、絵馬やおみくじ、神社仏閣での賽銭を伴う参拝や初穂料や玉串料を伴う祈祷など、支出が伴うものだけでなく、流れ星への願い事、七夕の短冊など、支出を伴わないものに対しても、案外ポジティブに評価している。本当にご利益があるかは不明だが、どうせ捨てるなら縁起がいいかもしれない方に捨てたくなる(奉納したくなる)だろうし、良いことがあるかもと言われたら悪い気はしないだろう。このようにただ捨てるという行為では、消費者側には全くメリットが生まれないが、「平のあげもみ公」の存在によって、「ご利益があるかも」というエンターテイメント性や期待感が生まれ、ゴミを捨てるというネガティブな行為(手間のかかる行為)がポジティブな経験に変化し、能動的に正しい場所にごみを捨てるという結果を生んでいるのだ。
4―ナッジとは
このような、消費者が当人にとって、もしくは社会にとって望ましい行動をとれるよう後押しするアプローチを行動経済学ではナッジ(nudge)という。ナッジの例として良く知られているのが、男子用トイレの小便器の話である。オランダの空港で小便器に「ハエ」の絵を描いたところ、清掃費が80%も減ったという話がある。利用者がハエに狙いを定めたため、トイレの床を汚す人が激減した訳だ。このように「トイレをきれいに使ってください」といった言葉や説明書きで人に行動させるのではなく、能動的に人が行いたくなる仕組みを導入して、「勝手に」思惑通りの行動に促す手法ともいえる。本コラムで紹介したケースで言えば、「ゴミを正しいところに捨てましょう」とアナウンスするよりも、ゴミ(串)を奉納物としての意味を持たせることで、ごみ箱(奉納箱)に捨てることがご利益に繋がるかもしれない、という気持ちのよい体験に繋げ、且つポイ捨てをすることが罰当たりな行為という根拠のない心理的な不安を生み、ポイ捨てもしにくくなるのである。
メリット(ご利益)だけではなく、デメリット(罰が当たるかもしれないという文脈)が無意識に頭によぎることが、消費者に正しくゴミを捨てさせるという行動を促しており、紅葉堂の目的である「美こそは島の命です」という使命の実現に繋がっているわけである。
メリット(ご利益)だけではなく、デメリット(罰が当たるかもしれないという文脈)が無意識に頭によぎることが、消費者に正しくゴミを捨てさせるという行動を促しており、紅葉堂の目的である「美こそは島の命です」という使命の実現に繋がっているわけである。
03-3512-1776
経歴
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
(2024年02月07日「基礎研マンスリー」)
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