2024年02月01日

日本の母子保健 低出生低体重児(2)-出生体重2,500g未満の低出生体重児は、男児よりも女児、単産よりも複産、母親の年齢45歳以上で高い割合-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

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1――はじめに

日本では、出生体重2,500g未満で出生する低出生体重児の割合が1980年代頃から増加傾向にあることが指摘されている。また、低出生体重は成人後期の生活習慣病との関連性が指摘され1、妊娠前の母体の体格(BMI等)が低出生体重児の出現頻度に関与する研究結果も報告されており2、母体となりうる成人期の健康管理の重要性が伺える状況である。

前稿では3、低出生体重児の現状を整理し、2019年の低出生体重児は81,462人と、出生総数865,239人うち9.4%を占め、1975年の5.1%からおよそ4.3%ptも上昇していることが明らかとなった。

続いて、本稿では、厚生労働省の人口動態統計のデータを用いて、低出生体重児における子どもの性別、出生児数(単産・複産)による差異、母親の年齢による属性別の特徴を整理した結果を示す。
 
1 国立成育医療研究センター(2023)“Association between birthweight and prevalence of
cardiovascular disease and other lifestyle-related diseases among Japanese population: JPHC-NEXT Study” Journal of Epidemiology,  
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20230045/_pdf/-char/en
2 エコチル調査北海道ユニットセンター(2022)“Severity of low pre-pregnancy body mass index
and perinatal outcomes: the Japan Environment and Children’s Study” BMC Pregnancy and
Childbirth volume 22, Article number: 121 (2022).
3 乾愛,基礎研レター「日本の母子保健低出生低体重児(1)-2019年の低出生体重児が占める割合は9.4%、1975年から4.3%ptも上昇-」(2024年1月30日)
 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77379?site=nli

2――低出生体重児における属性別の特徴

2――低出生体重児における属性別の特徴

2-1子どもの性別
子どもの性別(男児・女児)による出生時の平均体重について図表1-1へ示した。2019年時点における男児の平均体重は、3.05㎏、女児は2.96㎏であり、どの年次においても女児よりも男児の平均体重の方が上回る結果となっている。また、1975年時点と比較すると、男児は、0.19㎏の減少、女児も0.19㎏の減少傾向が認められている。
図表1-1.男児及び女児における出生時の平均体重(kg)の年次推移
次に、男児の出生総数及び低出生体重児総数の年次推移を図表1-2へ示した。2019年時点において2,500g未満で出生した男児は、36,828人と、1975年の46,039人と比較すると数自体は減少しているものの、2019年時点における男児の出生総数443,430人のうち8.3%を占める割合であることが分かる。1975年の4.7%と比較すると、3.6%ptも上昇していることが明らかとなっている。
図表1-2.男児の出生総数及び低出生体重児総数(人)の年次推移
続いて、女児の出生総数及び低出生体重児総数の年次推移を図表1-3へ示した。2019年時点において2,500g未満で出生した女児は、44,634人と、1975年の50,928人と比較すると数自体は減少しているものの、2019年時点における女児の出生総421,809人のうち10.6%を占める割合であることが分かる。1975年の5.5%と比較すると、5.1%ptも上昇していることが明らかとなっている。
図表1-3.女児の出生総数及び低出生体重児総数(人)の年次推移
これらのデータから、低出生体重児の割合が男児より女児の方が若干高いものの、いずれの年次においても出生児の平均体重について女児の方が下回ることから、男女の性差による体格の違いが影響しているものと判断ができる。
2-2単産・複産
次に、出生児数の違い(単産か複産か)による低出生体重児の割合の差異を図表2-1へ示す。尚、単産とは単胎で生まれた出生であり、死産は含まない。また、複産とは双子・三つ子等多胎で生まれた出生数であり、死産は含まない。

単産・複産における出生平均体重の推移を図表2-1へ示した。2019年では、単産の出生平均体重が3.02㎏に対し、複産の出生平均体重は2.22㎏と0.8㎏の差が認められた。また、1975年から比較すると、単産の出生平均体重は、0.18㎏の減少、複産においても0.21㎏の減少傾向が認められている。
図表2-1.単産・複産における出生平均体重の推移
次に、単産及び複産における出生総数と低出生体重児数の年次推移を図表2-2、図表2-3へ示した。

2019年における単産の低出生体重児数は、69,040人と単産の出生総数847,837人のうち8.1%を占めていることが明らかとなった。一方で、2019年における複産の低出生体重児数は、12,422人と、複産の出生総数17,402人のうち71.4%を占めることが明らかとなった。

また、1975年から比較すると、単産の低出生体重児の割合は、4.6%から8.1%と3.5%ptも上昇し、複産における低出生体重児の割合も、52.5%から71.4%と18.9%も上昇していることが明らかとなった。

一般的に、双胎以上の多胎妊娠では、限られた子宮内で母体とつながる胎盤領域の大きさに差が生じる場合に、体重の差が生じることが知られており、子宮内である程度の胎盤の大きさを確保できる単産よりも、複産、つまり双胎以上の多胎児の方が低出生体重児の割合が高くなりやすい。本データの出生児数の差異による低出生体重児の出現割合についても、多胎児特有の成育環境が影響している結果であると考えられる。
図表2-2.単産の出生総数及び低出生体重児数(人)の年次推移
図表2-3.複産の出生総数及び低出生体重児数(人)の年次推移

(2024年02月01日「基礎研レター」)

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生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・不妊治療・月経随伴症状・プレコンセプションケア等

経歴
  • 【職歴】
     2012年 東大阪市 入庁(保健師)
     2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了
         (看護学修士)
     2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
     2019年~大阪市立大学大学院 看護学研究科 研究員(現:大阪公立大学 研究員)

    【資格】
    看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

    【加入団体等】
    日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

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