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マンションと大規模修繕(5)~住民の高齢化と2回目大規模修繕時の年齢構成

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子
マンションには「経年劣化による建物の老い」と、「区分所有者の高齢化」の2つの老いがある。新築マンションの入居者は多くのケースで長期間住む予定で購入している。年月が流れ、住民が高齢になり、高齢者がそのマンションに永住するつもりであると、費用をかけてまで建物を改善する動機に乏しくなる。そうすると、現状維持で良いと考える人が多くなり、建物が老朽化しやすい。高齢化は全てのマンションに共通する問題である。
しかしながら、新築マンションを買ったばかりの人は、マンションの高齢化についてイメージを持ちにくいかもしれない。では、外壁の修繕やエレベーターの取り換え等、費用支出が大きく重要な意思決定が必要となる2回目の大規模修繕時の住民の年齢はどうなるだろうか、全国平均的な年齢構成を概算した。
すると、マンション所有者の年齢の平均は約61歳、また2回目の大規模修繕時には60代以上の人が半分程度という試算になる。つまり、所有者の高齢化は築年の経過よりも少し遅れて進み、同じ築年のマンションでも将来時点の計測では高齢化が進むと推定される。一般的にマンションの立地は、各都市・エリアの中でも人口が集中して住宅需要が強く、地域の特性が類似している。この結果に当てはまるマンションは多いのではないだろうか。
24年目の大規模修繕2回目の時期になればなんとかなると考えて議論を先送りすると、実際の工事時期には実施そのものが現状維持を希望する一部の高齢の所有者によって、大規模修繕計画等が反対されてしまうかもしれない。そうなる前、マンションの築年が浅い時期から、住民間の合意形成を容易にする環境を作り、大規模修繕実施への意識を高めことは重要である。可能であれば、事前に大規模修繕工事の発注・業者選定のルールを決めておくと、よりスムーズに合意形成が進むのではないだろうか。
■目次
1.マンションには2つの老いがある
2.現在、新築のマンションはどの程度高齢化していくのか
3.所有者の高齢化が進む前に、大規模修繕実施の合意形成を
(2024年01月19日「基礎研レター」)

03-3512-1853
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
渡邊 布味子のレポート
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