2024年01月15日

ロシアの物価状況(23年12月)-前年比上昇率はやや低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比では7.42%にやや低下

1月12日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(23年12月)】
前年同月比は7.42%、市場予想1(7.60%)より下振れ、前月(7.48%)から低下(図表1)
前月比は0.73%、市場予想(0.90%)より下振れ、前月(1.11%)から減速

【コア指数2(23年12月)】
前年同月比は6.83%、前月(6.36%)から上昇した(図表2)
前月比は0.41%、前月(1.01%)から減速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:ベース効果でサービス物価上昇率が低下

12月のロシアのインフレ率は前年比で7.42%となった。11月までは7か月連続で上昇していたが、12月は11月の7.48%から小幅に低下した。なお、ロシア中銀のインフレ目標(4%)は6か月連続で上回っている。

インフレ率を大分類別に見ると、12月の前年比伸び率は食料品が8.16%、財(非食料品)が5.96%、サービスが8.33%となり、食料品と財(非食料品)は上昇したが、サービスは低下した。特にサービスは10%前後の上昇率が続いていたが、12月は大幅に低下し、22年2月(6.10%)以来の上昇率となった。22年12月には光熱費の引き上げがサービス物価の押し上げており、ベース効果による伸び率の抑制が生じたと見られる。

前年比寄与度ではサービスが2.3%ポイント程度、食料品が3.1%ポイント程度、財(非食料品)が2.1%ポイント程度となっている(図表1)。

12月の前月比伸び率は、総合指数で0.73%、コア指数で0.41%となった。前月(総合指数1.11%、コア指数1.01%)と比較して特にコア指数で減速した。ただし、総合指数・コア指数ともにコロナ禍前の標準的な上昇率を上回った状態にある(2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%、図表3)。前月比伸び率を大分類で見ると食料品が1.49%、財(非食料品)が0.42%、サービスが0.10%となり、食料品伸び率の高さが目立つ。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では最新の1月9日時点の前週比で0.26%となっており、インフレ圧力はやや高めである(図表4)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、12月で14.2%と大幅に上昇し、22年3月(18.3%)以来の高さを記録した。過去の傾向と比較すると、期待インフレ率は実際のインフレ率と比較して上昇の勢いが強いと言える(過去の傾向は、期待インフレ率≒前年比インフレ率+6%、図表5)。
品目別の上昇率を見ると3(図表6)、12月は前年比で卵(61.35%)、その他サービス(41.90%)、海外旅行サービス(24.77%)、青果物(24.19%)の伸び率が高い。一方、テレビ(▲6.22%)は相対的に下落率が大きい。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
前月比では、卵(18.17%)、青果物(6.08%)の上昇率が相対的に大きく、海外旅行サービス(▲8.42)、グラニュー糖(▲2.93%)の下落率が相対的に大きい。

各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は青果物(1.01%ポイント)、肉(0.72%ポイント)、その他サービス(0.62%ポイント)、家庭サービス(0.40%ポイント)、旅客サービス(0.32%ポイント)、ガソリン(0.32%ポイント)、卵(0.31%ポイント)だった。また、前年比のマイナス寄与が大きい品目は、テレビ(▲0.02%ポイント)、穀物・豆(▲0.02%ポイント)となったが、マイナス幅は小幅にとどまる。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
前月比上昇率の寄与では青果物(約0.25%ポイント)、卵(約0.09%ポイント)の押し上げ寄与が大きく、海外旅行サービス(約▲0.06%ポイント)は押し下げに貢献している。

なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む11月の上昇率寄与を見ると、乗用車なども前年比および前月比の物価を押し上げていることが分かる(図表9・10)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年01月15日「経済・金融フラッシュ」)

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