2023年12月20日

米住宅着工・許可件数(23年11月)-着工件数は前月比で減少予想に反し、戸建て中心に大幅増加

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:住宅着工は市場予想を上回った一方、許可件数は予想を下回る

12月19日、米国センサス局は11月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は156.0万件(前月改定値:135.9万件)と137.2万件から下方修正された前月を上回ったほか、前月からの減少を見込んだ市場予想の136.0万件(Bloomberg集計の中央値)を大幅に上回った(図表1、図表3)。

着工許可件数(季節調整済、年率)は146.0万件(前月改定値:149.8万件)と148.7万件から小幅上方修正された前月、市場予想の146.5万件を下回った(図表2、図表5)。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:戸建てが着工、許可件数ともに前月から増加

住宅着工件数の伸びは前月比+14.8%(前月:+0.2%)と3ヵ月連続のプラスとなったほか、21年3月以来の大幅な伸びとなった(図表3)。戸建てが+18.0%(前月:+0.3%)となったほか、集合住宅が+6.9%(前月:横這い)といずれも3ヵ月連続のプラスとなった(図表4)。

前年同月比は+9.3%(前月:▲5.1%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じた。内訳をみると、集合住宅が▲33.1%(前月:▲32.1%)と大幅なマイナスとなった一方、戸建てが+42.2%(前月:+12.9%)と4ヵ月連続でプラスを維持したほか、前月から大幅に伸びが加速して全体を押し上げた。

地域別寄与度(前月比)は、北東部が+5.3%ポイント(前月:▲0.9%ポイント)、南部が+8.8%ポイント(前月:▲4.0%ポイント)と前月からプラスに転じた。また、中西部が+0.2%ポイント(前月:+1.8%ポイント)、西部が+0.5%ポイント(前月:+3.2%ポイント)といずれも3ヵ月連続のプラスとなるなど、11月はすべての地域でプラスとなった。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が▲2.5%(前月:+1.8%)と前月からマイナスに転じた(図表5)。戸建てが+0.7%(前月:+0.6%)と11ヵ月連続のプラスとなった一方、集合住宅が▲8.5%(前月:+4.1%)と前月からマイナスに転じて全体を押し下げた(図表6)。

前年同月比は+4.1%(前月:▲3.7%)と16ヵ月ぶりにプラスに転じた。集合住宅が▲20.3%(前月:▲25.0%)と9ヵ月連続で2桁のマイナスとなった一方、戸建てが+22.8%(前月:+14.0%)と5ヵ月連続でプラスとなったほか、前月から大幅に伸びが加速して全体を押し上げた。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅市場指数(項目別) 一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、12月が37(前月:34)と5ヵ月連続ぶりに改善し、市場予想(37)に一致した(図表7)。

内訳は販売現況が40(前月:40)と前月から横這いとなった一方、販売見込みが45(前月:39)、客足が24(前月:21)と前月から改善した。

NAHBのチーフエコノミストのロバート・ディーツ氏は販売見込みが前月から6ポイント改善した要因として、「住宅市場は今サイクルの住宅ローン金利のピークを超えたようで、これが今後数ヵ月間の住宅購入需要の刺激につながるだろう。」としている。もっとも、NAHBは住宅ローン金利が11月を通じて7%を超えており、多くの建設業者は売上を伸ばすために住宅価格の値下げを続けているとしており、12月には建設業者の36%が住宅販売を引き下げたことを示した。これは10月に続いて23年で最も高い水準となっており、住宅販売価格の値下げなしに住宅販売が難しくなっている状況を示した。このため、住宅市場指数が好不調の境となる50を依然下回っていることと併せ、住宅市場の本格的な回復にはほど遠い状況とみられる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年12月20日「経済・金融フラッシュ」)

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