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わが国のサードプレイスオフィス市場の現況 -2023年-(2)~全都道府県の約3分の1、首都圏および京阪神の約6割の市区町村で、拠点開設の余地あり~

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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サードプレイスオフィスは、テレワークやBCP対応等を目的とした大企業の利用のほか、スタートアップ企業やフリーランスの活動拠点としても利用されている6。
国土交通省中部地方整備局「ベンチャー企業の立地環境等に関するアンケート調査」によれば、ベンチャー企業に対し「将来、オフィス移転する場合に重視すること」を質問したところ、「オフィス賃料が安い(スペースが確保できる)(50%)」との回答が最も多く、次いで「顧客・取引先に近い(41%)」、「立地のステータス性がある(29%)」、「住環境がよい(28%)」、「国内他地域へのアクセスが容易(27%)」の順に多かった(図表-10)。ベンチャー企業は、オフィスの選定において、不動産コストや取引先等へのアクセスとともに、人材確保や従業員満足度等の観点から「立地(ステータスや住環境等)」の良さを重視している模様だ。
また、内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査(2020年5月)」によれば、「フリーランスという働き方を選択した理由」として、「自分の仕事のスタイルで働きたいため(58%)」との回答が最も多く、次いで、「働く時間や場所を自由にするため(40%)」との回答が多かった(図表-11)。フリーランスは働く場所の自由度を重視しているようだ。
一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターによれば、国内ベンチャーへの投資額はコロナ禍への影響を受けて、2019年から2020年にかけて大きく減少したが、その後は回復基調で推移しており、2023年上期は1097億円(前期比+5.2%)となった(図表-12)。
また、ランサーズ「フリーランス実態調査」によれば、日本のフリーランス人口は、2015 年の937 万人から2021年には1,577 万人に達するなど着実に増加している。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2023」によれば、フリーランスに「今の働き方に対する満足度」を質問したところ、「満足(73%)」との回答が「不満(10%)」を大幅に上回った。フリーランスと企業などの発注事業者の取引の適正化等を図ることを目的として、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が2023年5月に公布され、フリーランスの就業環境についても一定の整備が進んでいる。
今後、スタートアップ企業への投資やフリーランス人口が拡大することで、サードプレイスオフィス利用が一層進むことが想定される。
6 ビジネスメディアUtilly 「コワーキングスペースおよびワ―ケーション利用に関する調査」(2023年9月)によれば、フリーランス・自営業の22%がコワーキングスペースを利用と回答。
3.サードプレイスオフィスの拠点分布とテレワーク人口
「人口当たりサードプレイス拠点数」は「沖縄県(7.7拠点/万人)」が最も多く、次いで「東京都(6.9拠点/万人)」、「徳島県(5.0拠点/万人)」の順に多い。一方、全国平均(3.0拠点/万人)を大きく下回る2.0(拠点/万人)未満の都道府県は「17(占率36%)」となり、このうち「埼玉県(0.9拠点/万人)」が最も少なかった。これらの都道府県は、テレワーク人口を勘案した場合、サードプレイスオフィスの開設余地が残されていると言えよう。
7 「テレワーカー人口(居住地基準)」の推計方法は、以下のレポートを参照にされたい。
吉田資『市区町村別「テレワーカー率」の推計(2023 年)』ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2023 年6月12日
4.おわりに
また、コロナ禍の落ち込みから回復傾向にあるスタートアップ企業やフリーランスは、オフィスの選定に際して、移転自由度の確保や立地のステータスを求めている。
以上の状況を鑑みると、今後、サードプレイスオフィスの利用ニーズは更に高まることが予想される。
潜在的な顧客数を示す「テレワーク人口」の分布とサードプレイスオフィスの拠点展開を比較分析したところ、全都道府県の約3分の1、首都圏および京阪神の約6割の市区町村で、サードプレイスオフィスの開設余地は残されている。今後、サードプレイスオフィスは、都市部、地方を問わず、オフィス市場に及ぼす影響が高まる可能性があり、その動向を注視していきたい。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年12月19日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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