2023年11月15日

QE速報:7-9月期の実質GDPは前期比▲0.5%(年率▲2.1%)-内外需ともに低調で3四半期ぶりのマイナス成長

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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● 7-9月期は前期比年率▲2.1%と3四半期ぶりのマイナス成長

本日(11/15)発表された2023年7-9月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲0.5%(前期比年率▲2.1%)と3四半期ぶりのマイナス成長となった(当研究所予測10月31日:前期比▲0.2%、年率▲0.9%)。

民間消費が、物価高の悪影響などから前期比▲0.0%と2四半期連続で減少したほか、設備投資(前期比▲0.6%)、住宅投資(同▲0.1%)も減少し、国内民間需要が揃って減少した。

輸出は前期比0.5%と2四半期連続で増加したが、輸入が同1.0%と3四半期ぶりに増加し、輸出の伸びを上回ったことから、外需寄与度が前期比▲0.1%(年率▲0.5%)と成長率を押し下げた。
 
名目GDPは前期比▲0.0%(前期比年率▲0.2%)と4四半期ぶりの減少となったが、実質の伸びは上回った。GDPデフレーターは前期比0.5%(4-6月期:同1.4%)、前年比5.1%(4-6月期:同3.5%)となった。輸入物価の上昇を国内に価格転嫁する動きが続き、国内需要デフレーターが前期比0.3%の上昇(4-6月期:同0.7%)となったことに加え、輸出デフレーターが前期比2.8%の上昇となり、輸入デフレーターの伸び(前期比1.9%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
<需要項目別結果>
名目GDPと実質GDPの推移 2023年7-9月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。実質GDP成長率は、2023年4-6月期が前期比年率4.8%から同4.5%へ下方修正されたほか、2022年10-12月が同0.2%のプラス成長から同▲0.2%のマイナス成長へと下方修正された。

実質GDPの水準は2023年4-6月期にコロナ禍前のピーク(2019年7-9月期)を0.1%上回ったが、7-9月期がマイナス成長となったことで再びコロナ禍前のピークを下回った(▲0.4%)。一方、名目GDPは2023年7-9月期には小幅なマイナスとなったものの、それまで高い伸びが続いてきたことから、コロナ禍前のピークを4.8%上回っている。
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比▲0.0%と2四半期連続の減少となった。社会経済活動の正常化が進む中で、外食、宿泊等の対面型サービス消費は堅調だったが、物価高による実質購買力の低下が財消費を押し下げた。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、交通、外食、旅行、宿泊などのサービスは前期比0.2%と3四半期連続で増加したが、自動車、家電などの耐久財(同▲3.3%)、被服・履物、家具などの半耐久財(同▲0.5%)食料品などの非耐久財(同▲0.1%)が減少した。

雇用者報酬は、名目・前年比1.7%となり、4-6月期の同2.6%から伸びが低下した。春闘賃上げ率が30年ぶりの高さとなったことを反映し、所定内給与の伸びは高まっているが、相対的に賃金水準の低いパートタイム労働者比率の上昇が一人当たり賃金の伸びを押し下げている。また、実質雇用者報酬は、家計消費デフレーターの高い伸びが続いたことから、前年比▲2.0%(4-6月期:同▲0.9%)と8四半期連続で減少した。
 
住宅投資は前期比▲0.1%と5四半期連続ぶりに減少した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2023年1-3月期の87.6万戸から4-6月期が81.5万戸、7-9月期が79.7万戸と水準を切り下げているため、工事の進捗ベースで計上されるGDP統計の住宅投資は10-12月期には減少幅が拡大する可能性が高い。
 
設備投資は前期比▲0.6%と2四半期連続で減少した。高水準の企業収益を背景として、人手不足対応やテレワーク関連投資、デジタル化に向けたソフトウェア投資を中心に、設備投資は基調としては底堅さを維持していると判断されるが、生産活動の停滞等を反映し、2023年度入り後は弱めの動きとなっている。
 
公的固定資本形成は、国土強靭化関連工事や補正予算の執行一巡などから、前期比▲0.5%と6四半期連続ぶりに減少した。
 
外需寄与度は前期比▲0.1%(前期比年率▲0.5%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。輸出は前期比0.5%と2四半期連続で増加したが、輸入が同1.0%と3四半期ぶりに増加し、輸出の伸びを上回ったことから、外需は成長率の押し下げ要因となった。国内需要の低迷を反映し財輸入は低調だったが、海外旅行の回復を受けてサービス輸入が高い伸びとなったことが輸入全体を押し上げた。
202310-12月期はマイナス成長を予想)
2023年7-9月期は内外需ともに低調で、3四半期ぶりのマイナス成長となった。マイナス成長自体は4-6月期の高成長の反動という側面もあり、悲観する必要はないが、懸念されるのは社会経済活動の正常化が進む中でも消費、設備などの国内民間需要が停滞していることである。

先行きについては、輸出が景気の牽引役となることが期待できない一方、消費、設備などの国内需要が底堅く推移することから、景気の回復基調は維持されると予想しているが、当面は内外需ともに下振れリスクの高い状態が続くだろう。

2023年10-12月期は、海外経済の減速を背景に輸出が伸び悩む一方、民間消費、設備投資などの国内民間需要が増加に転じることから、現時点では年率1%台のプラス成長を予想している。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年11月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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