2023年11月13日

ロシアの物価状況(23年10月)-インフレ率の加速が継続

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比で6.69%まで上昇

11月13日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(23年10月)】
前年同月比は6.69%、市場予想1(6.70%)より下振れ、前月(6.00%)から上昇(図表1)
前月比は0.83%、市場予想(0.87%)より下振れ、前月(0.87%)から減速

【コア指数2(23年10月)】
前年同月比は5.50%、前月(4.59%)から上昇した(図表2)
前月比は0.89%、前月(0.89%)から減速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前月比も高い伸び率が継続

10月のロシアのインフレ率は前年比で6.69%となり、9月の6.00%から上昇した。6か月連続で上昇し、ロシア中銀のインフレ目標(4%)は4か月連続で上回ったことになる。

なお、ルーブル下落やインフレ圧力の高まりを受けて、ロシア中銀が利上げを継続しているほか(7月以降に政策金利を7.5%ポイント引き上げ、7.5%→15.0%)、政府もルーブル安定のために大手輸出企業に対する外貨のルーブル両替の義務付け3、西側の撤退企業に対する資産売却の制限4といった資本規制を強めている。

インフレ率を大分類別に見ると、10月の前年比伸び率は食料品が6.00%、財(非食料品)が5.08%、サービスが9.92%となっている。食料品および財の上昇が続いており、サービス物価は引き続き10%前後の高い伸び率を維持している。前年比寄与度ではサービスが2.7%ポイント程度、食料品が2.3%ポイント程度、財(非食料品)が1.8%ポイント程度となっている。足もとのインフレ率上昇は主に食料品と財が主導してきたが、10月は特に食料インフレが押し上げている(図表1)。

10月の前月比伸び率は、総合指数で0.83%、コア指数で0.89%となった。前月(総合指数0.87%、コア指数0.92%)より若干減速したが、総合指数・コア指数ともにコロナ禍前の標準的な上昇率を大幅に上回っている(2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%、図表3)。前月比伸び率を大分類で見ると食料品が1.35%、財(非食料品)が0.55%、サービスが0.48%となり、食料品伸び率の高さが目立つ。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では最新の11月7日時点の前週比で0.42%となっており、11月初旬のインフレ圧力が強まっていることが分かる(図表4)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、10月で11.2%となりやや低下した。インフレ率は上昇する一方で、期待インフレ率が低下した形になったが、概ね期待インフレ率と実際のインフレ率との関係は過去とほぼ同様の状況と言える(期待インフレ率≒前年比インフレ率+6%、図表5)。
品目別の上昇率を見ると5(図表6)、10月は前年比で海外旅行サービス(31.00%)、青果物(23.99%)、卵(23.88%)、その他サービス(23.49%)の伸び率が高い。一方、テレビ(▲11.83%)は下落率が大きい。

前月比では、卵(13.12%)、旅客サービス(3.74%)の上昇率が相対的に大きく、海外旅行サービス(▲7.74%)、ガソリン(▲1.57%)が相対的に大きく下落した。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は青果物(1.00%ポイント)、住居・公益サービス(0.90%ポイント)、肉(0.64%ポイント)、ガソリン(0.36%ポイント)、家庭サービス(0.35%ポイント)、その他サービス(0.35%ポイント)、旅客サービス(0.35%ポイント)だった。また、前年比のマイナス寄与が大きい品目は、穀物・豆(▲0.05%ポイント)となったが、マイナス幅は小幅にとどまる。

前月比上昇率の寄与では肉(約0.11%ポイント)、青果物(約0.08%ポイント)、旅客サービス(約0.08%ポイント)、卵(約0.07%ポイント)の押し上げ寄与が大きく、ガソリン(約▲0.07%ポイント)、海外旅行サービス(約▲0.05%ポイント)は押し下げに貢献している。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む9月の前年比上昇率寄与を見ると、乗用車なども物価を押し上げていることが分かる(図表9)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年11月13日「経済・金融フラッシュ」)

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