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- 英国金融政策(11月MPC)-2会合連続で政策金利据え置きを決定
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1.結果の概要:2会合連続で政策金利据え置きを決定
【金融政策決定内容】
・政策金利を5.25%で据え置き(6対3で3名は0.25%ポイント引き上げを支持)
【議事要旨等(趣旨)】
・GDP成長率見通しは、23年0.50%、24年0%、25年0.25%、26年0.75%(下方修正)
・CPI上昇率は、23年4.75%、24年3.25%、25年2%、26年1.5%(10-12月期の前年比、将来について上方修正)
・インフレ見通しに対するリスクは、上方に傾いている
・賃金上昇率の継続的な強さを受け、「中期的な均衡失業率」をやや引き上げた
・政策金利は十分な期間、十分な高さを維持するつもりであり、利下げは時期尚早である
2.金融政策の評価:インフレ見通しを上方修正
今回は会合に合わせて金融政策報告書(MPR)が公表され、経済見通しが更新されている。8月の見通しと比較すると、成長率は下方修正されインフレ率は上方修正となった1。見通しについて特筆すべきこととして、賃金上昇率が高止まりしていることを受けて「中期的な均衡失業率」の評価をやや引き上げたことが挙げられる。「中期的な均衡失業率」の上昇は、MPCの中でもタカ派の委員が主張していた見解である。供給力が減少しているため、需要が変わらなくても物価が上昇しやすくなっており、したがって金融引き締めを強化して需要を押し下げる必要があることを意味している。
今回は、25年末までに2%の物価目標を達成できるとの見通しを示した上で政策金利の維持が決定された。市場でも政策金利はピークに達したと予想されている。しかし、イングランド銀行は見遠しの上方リスクを警戒しており、今後、賃金上昇率やサービスインフレが予想よりも高止まりした際には、追加利上げが実施される可能性が残っていると考えられる。
1 ただし、前提となる政策金利の経路が8月時点より引き下げられているため、単純に比較はできない点には留意する必要がある。一般的には政策金利の引き下げは成長率・インフレ率への押し上げ材料となるため、見通しとしては、成長率は下方修正と言えるが、インフレ率については政策金利経路の引き下げによる上振れ効果も生じていると見られる。
3.金融政策の方針
- MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、持続的な経済成長と雇用を支援する
- 委員会は政策金利(バンクレート)を据え置き、5.25%とする(6対3で決定2)、3名は0.25%ポイント引き上げ5.50%とすることを主張した
- 委員会は経済活動とインフレ率に関する見通しを11月の金融政策報告書(MPR)として公表した
- そこでは、市場観測の政策金利経路として、24年10-12月期まで現在の5.25%程度の政策金利が維持され、26年末にかけて4.25%程度まで緩やかに低下すると想定されており、8月の見通し時点の前提よりも低下している
- MPCの前回会合以降、長期金利は先進国経済で上昇した
- GDP成長率は米国で予想よりも強かった
- 先進経済の基調的なインフレ圧力は引き続き強い
- 中東での出来事の後、石油の先物曲線はやや上昇したがガスの先物曲線はほぼ変化がなかった
- 英国のGDPは23年7-9月期に横ばいと予想され、8月報告書の見通しよりも弱い
- いくつかの企業調査では10-12月期の生産が若干減少することを示しているが、他のデータはそれほど悲観的ではない
- GDP成長率は10-12月期に0.1%となると予想され、これも前回の見通しよりも弱い
- MPCは労働市場の動向を確認するために、引き続き単一の指標ではなく広範なデータを評価する
- 労働力調査を取り巻く不確実性は上昇しているため、この方針の重要性が強調される
- 経済活動の鈍化のため、雇用伸び率は23年下半期に軟化するが、8月報告書の見通しよりも強いと見られる
- 求人数の減少や採用活動の困難さが緩和するとの調査結果もまた、労働市場の軟化を示している
- 中銀エージェントも同様に採用制約の緩和を報告しているが、いくつかの部門においては熟練者不足が根強い
- CPIインフレ率の前年比は9月および7-9月期では6.7%まで低下しており、これは8月報告書の見通しよりも低い
- この下振れは主にコア財インフレ率が予想よりも低かったことが反映されている
- サービスインフレは7%付近で8月報告書の予想よりもやや低い
- CPIインフレ率は2%目標を大きく上回っているが、急激な低下を続け、23年10-12月期には4.75%、24年1-3月期には4.5%、24年4-6月期には3.75%となると見られる
- この低下はエネルギー、コア財、食料品インフレの低下で説明されるが、1月以降はサービスインフレもやや低下する
- MPCの最新の市場観測政策金利を前提にした最も起こりそうな、最頻値見通しではCPIインフレ率は25年末までに2%目標に低下する
- その後は、経済活動の弛み(slack)度合いが高まり国内のインフレ圧力を軽減させるにつれ目標を下回る
- MPCは引き続きこの最頻値見通しについて、リスクが上方に傾いていると評価している
- 国内の2次的効果(second round effect)と賃金は、その発生よりも解消に時間を要すると見られる
- また、中東の出来事がエネルギー価格のインフレ率のリスクを上振れさせている
- この偏りを考慮したCPIインフレの平均見通しは2年後に2.2%、3年後に1.9%となる
- 政策金利を5.25%に維持した24年下半期以降の曲線が高めとなる代替前提では、平均インフレ率は2年後に目標に到達し、3年後に1.6%まで低下する
- MPCの責務が、英国の金融政策枠組みにおける物価安定の優位(primacy)を反映して、常にインフレ目標の達成であることは明らかである
- この枠組みでは、ショックや混乱の結果、物価が目標から乖離する場合があることを認識する
- 金融政策により、CPIインフレ率が中期的に2%目標に安定して戻るようにする
- 前回のMPCの決定以降、英国のインフレ率の持続性に関する主要な指標から得られる情報は少ない
- 金融引き締めが労働市場や、一般に実体経済の勢いにいくらかの影響を及ぼしているとの兆しは引き続き見られる
- 引き締めサイクルを開始して以降の政策金利の大幅な引き上げにより、現在の金融政策姿勢は制限的である
- 今回の会合で委員会は政策金利を5.25%に維持することを決定した
- MPCは引き続き、基調的な労働市場のひっ迫感を示す一連の指標、賃金上昇率、サービス物価インフレの動向といった、経済全体におけるインフレ圧力の持続性と回復力について、引き続き注視する
- 金融政策は、委員会の責務にもとづき、インフレ率を中期的な2%目標に安定的に戻すため、十分な期間にわたり十分に制限的にされる必要がある
- MPCの最新の見通しは金融政策を長期にわたって制限的にする必要があることを示している
- 仮により永続的なインフレ圧力があるのであれば、より引き締め的な金融政策が必要となる
2 今回反対票を投じたのは、グリーン委員、ハスケル委員、マン委員で0.25%の利上げを主張した(前回はグリーン委員、ハスケル委員、マン委員に加えてカンリフ委員(副総裁)が0.25%の利上げを主張した。なお、カンリフ委員は10月で委員を退任しており、11月からは新たにブリーデン氏が副総裁として委員に就任している。また、ブリーデン氏は今回の決定で据え置きを主張した)。
4.議事要旨の概要
- GDP成長率見通しは、2023年0.50%、24年0%、25年0.25%、26年0.75%
(8月時点では023年0.50%、24年0.50%、25年0.25%)- CPI上昇率は、2023年4.75%、24年3.25%、25年2%、26年1.5%(10-12月期の前年比)
(8月時点では、23年5%、24年2.5%、25年1.5%) - 失業率は、2023年4.25%、24年4.75%、25年5%、26年5%(10-12月期)
(8月時点では、23年4.00%、24年4.5%、25年4.75%)
- CPI上昇率は、2023年4.75%、24年3.25%、25年2%、26年1.5%(10-12月期の前年比)
(本日の政策決定)
- 自己満足に浸る余地はないことを明らかにしておきたい
- インフレ率を2%目標に戻すために、我々は十分な期間、十分に高い金利を維持するつもりである
- 更なる利上げが必要かを注意深く見ていくつもりである
- 利上げしないとしても、利下げを考えるのは時期尚早である
(中期的な見通し)
- 労働市場の軟化にもかかわらず、名目賃金上昇率は、仮にこの上昇率が継続するのであれば、インフレ目標と整合的な水準と比べて著しく高い
- ONSの民間部門の週当たり定期賃金上昇率は8月に8.0%上昇し、予想以上に高い
- 賃金上昇率の継続的な強さを受けて、MPCは「中期的な均衡失業率」の評価をやや引き上げ、賃金と物価の上昇がより継続すると見積もった
- この効果により、MPCは労働市場の弱さが需要要因だけでなく、供給力の低下からも生じていると判断している
- これは雇用伸び率が鈍化するなかでも賃金伸び率が継続的に強いことを説明する助けになるだろう
(供給・費用・価格)
- 委員会は賃金と国内物価について議論した
- 最近、民間部門の週当たり定期賃金が前年比で上昇していることは、他の賃金指標では見られていないが、賃金上昇率が7%付近の高さで維持されていることは共通していた
- 同時にCPIの前年比では、総合指数がエネルギー、食料、コア財インフレ率の低下を受けて減速しているものの、サービスインフレは有意には減速していない
- CPIインフレ率の直近の持続性は、一部には企業の価格設定行動を含む2次的効果を反映している
- 11月のMPR見通しでは、MPCは最近の予想外の賃金上昇は、労働市場の摩擦がより持続的であることや過去の実質所得の減少に抵抗することによって生じる、中期的な失業率の上昇に関連していると判断した
- 失業率の上昇がこうした供給要因に関係していれば、労働市場の緩和はより限定的で賃金の押し下げ圧力もより小さくなる
(政策金利決定)
- 6人の委員が、今回の会合で政策金利を5.25%に維持することが妥当であると判断した
- 前回会合以降に、英国経済のデータから得られた情報は限定的である
- GDP成長率は弱まっており、労働市場は引き続き軟化している
- CPIインフレ率は今後数四半期にわたって、大幅に低下し、週当たり賃金にみられる加速は注目には値するものの、より広範な賃金指標には見られない
- このグループの大部分の委員にとって、MPCの最新の見通しは、2%目標への到達のためには、この制限的な金融政策が長期間続くことが正当化されることを示していた
- 更なる政策金利の引き上げの可能性は残されている
- 1人の委員にとっては引き締めすぎるリスクが引き続き積みあがっていた
- 金融政策効果のラグにより、過去や最近の利上げの影響が依然として顕在化していないと見られた
- 3人の委員が今回の会合で、政策金利を0.25%引き上げ5.5%にすることを望んだ
- 経済活動には鈍化の兆しがあるが、家計の実質所得は上昇しており、生産の先行指標は引き続きプラスを維持している
- 労働市場は引き続き相対的にひっ迫し、中期的な均衡失業率の上昇や労働需要の強さと整合的であり、緩和速度は鈍化している
- これらの委員は、引き続きより持続的なインフレ圧力の証拠があると判断している
- この会合における政策金利の0.25%ポイントの引き上げが、より深くインフレの持続性が定着するリスクに対処し、中期的な2%目標の持続に向かうために必要である
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年11月06日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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