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- 新NISA前にラップ口座が売れた?~2023年10月の投信動向~
コラム
2023年11月08日
SMA専用ファンドに過去最大の資金流入
2023年10月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、10月は外国株式と国内株式を投資対象とするファンドに大規模な資金流入があった【図表1】。ファンド全体でみると1兆1,800億円の資金流入があり、9月の1兆1,300億円から約500億円増加した。
ただし、10月は国内債券ものを中心にSMA専用ファンド(紺棒)全体に2,800億円の資金流入があり、9月の1,000億円から約3倍に増えたことが大きかった。SMA専用ファンドへの資金流入は、あくまでも10月分は推計値ではあるが2015年6月をわずかに超え過去最大となった。つまり10月は投資判断や管理を証券会社等の金融機関に一任するラップ口座がよく売れ、それに伴って投信の資金流入が膨らんだ様子である。
ただし、10月は国内債券ものを中心にSMA専用ファンド(紺棒)全体に2,800億円の資金流入があり、9月の1,000億円から約3倍に増えたことが大きかった。SMA専用ファンドへの資金流入は、あくまでも10月分は推計値ではあるが2015年6月をわずかに超え過去最大となった。つまり10月は投資判断や管理を証券会社等の金融機関に一任するラップ口座がよく売れ、それに伴って投信の資金流入が膨らんだ様子である。
そもそもラップ口座は2013年あたりから急激に契約件数、残高ともに増えてきた。契約件数が足元、やや鈍化してきているとはいえ右肩上がりで増加し、2023年6月時点で契約件数(線グラフ)が154万件を超え、残高(面グラフ)は16兆円に迫っている【図表2】。それに伴ってSMA専用ファンド(紺面グラフ)の残高も増えてきており、この10月末には12兆円とファンド全体の98兆円の1割強がSMA専用ファンドとなっている。
なお、2014年、2015年ごろからラップ口座とSMA専用ファンドの残高に乖離(青面グラフ)がみられ、ラップ口座ほどSMA専用ファンドの残高が増えていない状況である。これはラップ口座に2014年あたりから出てきた投資一任型のロボ・アドバイザー、いわゆるロボアドが含まれているためである。ロボアドの中には、SMA専用ファンドではなく海外ETFなどで運用しているものも多い。実際に業界最大手で残高が9,000億円近くあるウェルスナビは海外ETFで運用している。そのようなロボアドが普及したこともあり、ラップ口座とSMA専用ファンドとの残高の乖離が大きくなってきている。
なお、2014年、2015年ごろからラップ口座とSMA専用ファンドの残高に乖離(青面グラフ)がみられ、ラップ口座ほどSMA専用ファンドの残高が増えていない状況である。これはラップ口座に2014年あたりから出てきた投資一任型のロボ・アドバイザー、いわゆるロボアドが含まれているためである。ロボアドの中には、SMA専用ファンドではなく海外ETFなどで運用しているものも多い。実際に業界最大手で残高が9,000億円近くあるウェルスナビは海外ETFで運用している。そのようなロボアドが普及したこともあり、ラップ口座とSMA専用ファンドとの残高の乖離が大きくなってきている。
いずれにしてもラップ口座は、ロボアドを含めて個人投資家に広く浸透してきている。しかし、その一方で来年から始まる新NISAを含めて税制優遇制度を活用しにくく、また手数料や管理費などのコストが高すぎるものがあるなどの指摘もある。SMA専用ファンドの資金動向を見る限りではラップ口座の販売が10月に好調だったと推察されるが、今後も残高拡大が続くのか注目される。
国内株式ファンドには2018年4月以降で最大の資金流入
SMA専用ファンドを除いた一般販売されているファンドを見てみると、10月は9,000億円と9月の1兆400億円から1,400億円減少した。それでも3カ月連続でファンド全体へ流入額が8,000億円を超えるなど、投信の販売は引き続き好調であったといえよう。特に、一般販売している国内株式ファンドには3,000億円の資金流入と9月の1,900億円から1,100億円増加し、2018年4月以降で最大となった。
一般販売されている国内株式ファンドをタイプ別にみると、10月はインデックス型(黄棒)に1,600億円の資金流入があり、9月の800億円から倍増し、2023年に入って最大となった【図表3】。また、アクティブ型にも1,400億円の資金流入があり9月の1,100億円から小幅ながら増加し、2018年4月以降で最大となった。10月は日経平均株価の月間の下落幅が998円となるなど2023年に入ってから最も大きく下落した。そのような中でインデックス型を中心に国内株式ファンドには逆張り投資の買いが膨らんだ。
一般販売されている国内株式ファンドをタイプ別にみると、10月はインデックス型(黄棒)に1,600億円の資金流入があり、9月の800億円から倍増し、2023年に入って最大となった【図表3】。また、アクティブ型にも1,400億円の資金流入があり9月の1,100億円から小幅ながら増加し、2018年4月以降で最大となった。10月は日経平均株価の月間の下落幅が998円となるなど2023年に入ってから最も大きく下落した。そのような中でインデックス型を中心に国内株式ファンドには逆張り投資の買いが膨らんだ。
外国株式もインデックス型の販売は堅調
その一方で、外国株式ファンドはSMA専用のものを除外しても10月に5,500億円の資金流入と相変わらず大規模な資金流入があったが、9月の6,100億円からやや鈍化した。特にアクティブ型は、10月に400億円以上も資金を集めた新規設定ファンド(青太字)があったにも関わらず、1,500億円と9月の2,300億円から減少した【図表4】。
ただし、一般販売されているインデックス型の外国株式ファンドには3,900億円と過去最大であった9月をわずかに上回る資金流入があった。売れ筋のインデックス型の外国株式ファンド(赤太字)をみても9月と同規模、もしくはやや上回る資金流入があった【図表4】。10月は外国株式が下落したため、インデックス型の外国株式ファンドにも逆張り投資によって買いが膨らんでいた可能性もあるが、インデックス型の外国株式ファンドの販売は堅調であった様子である。
ただし、一般販売されているインデックス型の外国株式ファンドには3,900億円と過去最大であった9月をわずかに上回る資金流入があった。売れ筋のインデックス型の外国株式ファンド(赤太字)をみても9月と同規模、もしくはやや上回る資金流入があった【図表4】。10月は外国株式が下落したため、インデックス型の外国株式ファンドにも逆張り投資によって買いが膨らんでいた可能性もあるが、インデックス型の外国株式ファンドの販売は堅調であった様子である。
このように10月はSMA専用ファンドに加えて、内外株式ファンド、特に内外株式ともにインデックス型ファンドの販売が好調だったことに支えられ、その他のファンドの販売がふるわない中でもファンド全体に2カ月連続で1兆円を超える資金流入があった。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2023年11月08日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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