コラム
2023年10月06日

ヘッジ付外国債券ってどうなの?~2023年9月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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ファンド全体への流入額が今年初の1兆円越え

2023年9月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、8月は外国株式、外国債券や国内株式を投資対象とするファンドを中心に資金流入があった【図表1】。ファンド全体でみると1兆1,300億円の資金流入があり、8月の9,500億円から1,900億円増加した。1兆円を超えたのは2022年12月以来のことである。
【図表1】 2023年9月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
9月も投信販売を牽引したのは、やはり外国株式ファンドであった。外国株式ファンドには6,300億円の資金流入があり、8月の4,900億円から1,500億円増加した。2022年以降、つまり米国の金融引締めに伴って世界的に株価が軟調になって以降で最大となった【図表2】。8月からの増加分1,500億円のうち1,000億円はSMA専用ファンド(紺棒)の影響であるが、それでも一般販売されている外国株式ファンドでも8月から500億円ほど流入額が増加した。
【図表2】 外国株式ファンドの資金流出入
一般販売されている外国株式ファンドは、タイプによらず資金流入が8月から増加した。特にインデックス型(黄棒)には3,900億円の資金流入があった。8月の3,500億円から400億円増え、2022年12月の3,700億円を超え、過去最大となった。9月は下旬に世界的に株安になったことを受けて基準価額が下落した外国株式ファンドが多かったが、インデックス型は6月から4カ月連続の流入増加となった。
 
つみたてNISAの口座数は2023年6月末時点で834万口座とこの上半期で110万口座増えた。2022年上半期が120万口座増えたことを踏まえると、新NISAを前に口座開設が急増しているわけではなさそうである。それでも着実に口座が増えており、積立投資を始める人が日に日に増えている様子である。インデックス型の外国株式ファンドの販売が6月以降、好調なのはそのことも背景にありそうである。

売却も膨らんでいるヘッジ付外国債券ファンド

9月は、さらに外国債券ファンドにも2,200億円の資金流入があった。2,200億円のうち700億円はSMA専用ファンドであったが、一般販売されているものにも1,600億円の資金流入があり、8月の300億円から約1,200億円増加した。9月の資金流入の増加は、【図表3】の太字の限定追加型の2本を含む9月に新設された外国債券ファンドに1,400億円も資金流入があったことが大きかった。
【図表3】 2023年9月の推計純流入ランキング
2020年頃から限定追加型の外国債券ファンドが人気を集め、たびたび大型の新規設定があった。それらのファンドの大半が為替ヘッジをしているものであり、この9月も限定追加型のもの(【図表3】青太字)を中心に為替ヘッジしている新設ファンド(青棒)に1,000億円の資金流入があった【図表4】。ただ、その一方で為替ヘッジしている外国債券ファンドでも既設のもの(緑棒)に限ると5月以降、流出超過が続いている。特に9月は流出額が200億円とやや膨らんだ。
【図表4】 外国債券ファンドの資金流出入
この背景には米ドルのヘッジ・コスト(【図表5】青線)が9月に年率で6%を超えるなど、内外金利差の拡大に伴ってヘッジ・コストが2022年以降、急上昇していることがあるだろう。為替ヘッジしている外国債券ファンドは、少なくとも当面はヘッジ・コストが高いため収益が上がりにくくなっており、売却も増えているものと思われる。
【図表5】 米ドルのヘッジ・コストと米長期金利

為替ヘッジしてない外国債券ファンドの販売は堅調

その一方で為替ヘッジしていない外国債券ファンドは長い間、売却超過が続いていたが、2022年10月以降は流入超過が続いている。さらにこの9月は為替ヘッジしていないものでも限定追加型のもの(【図表3】赤太字)を中心に新設ファンド(【図表4】赤棒)に400億円の資金流入があった。それもあって為替ヘッジしていない外国債券ファンド全体の流入額は800億円にも膨らんだ。
 
最近は米国の長期金利(【図表5】黄線)が4%を超えるなど、日本以外の先進国では債券の利回りがリーマン・ショック前の2008年以前とはいかないまでも復活してきている。それもあって為替変動リスクを許容してでも外国債券に投資する投資家が増えているのかもしれない。SMA専用ファンド(【図表4】紺棒)をみても、7月、8月、9月と外国債券ファンドへの資金流入が顕著であり、ラップ口座でも外国債券の組入を増やす動きがみられる。

その他の資産クラスでは前月からあまり変わらず

その他に9月は国内株式ファンドとバランス型ファンドにも、8月と同規模の資金流入があった。国内株式ファンドは8月にSMA専用ファンドにまとまった資金流入があったため、一般販売されているものに限ると8月から400億円も資金流入が増加した。8月からの増加分400億円の増加のうち300億円はアクティブ型であり、アクティブ型への資金流入が特に増えた。一般販売されているアクティブ型の国内株式ファンドへの9月の流入額は1,100億円と中小型株ファンド人気が一服した2018年5月以降で最大となった。
 
また、外国REITファンドと国内REITファンドはSMA専用ファンドを除外すると、流入額はともに100億円以下と少額ではあるが3カ月連続の流出超過となった。内外REITは世界的に金利が上昇する中で投資家から敬遠されているのかもしれない。

資源関連ファンドが好調

9月は原油などの資源高の恩恵を受けて資源関連ファンド(赤太字)が好調であった【図表6】。また、高い収益をあげている国内株式ファンド(青太字)もあった。
【図表6】 2023年9月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2023年10月06日「研究員の眼」)

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